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非モテのための婚活必勝法14「お前に払う生活費はねぇ!」

「お前に食わせるタンメンはねぇ!」、「そうは酢豚の天津丼だ!!」のニ大(?)ネタでお馴染みの次長課長、河本準一が今、世の中を騒がせている。彼の母親の生活保護の件について、改めてここで経緯を説明する必要はないだろうが、今回は趣向を変えて、「河本問題」と婚活、その問題点について考えてみたい。

今回の件で明らかになったのは、例え子供がどれだけ大金持ちであろうと有名だろうと「扶養できない」といいはりさえすれば、一度支給された生活保護を打ち切られる事はない、という事実である。息子が有名人でどれだけ稼いでいようが福祉事務所は河本の母親に「お前に払う生活保護費はねぇ!」とは言えない(のか言わないのかはしらないが)のである。本稿では、そうした制度の是非についてこれ以上論じることはしない。ただ、今回の一件で明らかになったのは、親族の稼ぎを捕捉するなどして給付が適正かどうか調べる気も能力も、福祉事務所にはない、という事になので(※1)、「僕たちにはその気がない(ついでに人手も、能力もない)わけだから、どうか嘘をついて生活保護費をちょろまかさないでね!」と厚生労働省はお願いするしかない、というのが現状なのだろう。

ではなぜ、河本準一がこうしてメディアで取り上げられているのだろうか。それは道徳観であり、価値観の問題である。

つまり、今回問題になっているのは「子供は大きくなったら親を世話するもの」という価値観である。親を養う、ということは単純に言って生活費が倍になる事である。それができる生活の余裕なり、環境を整備するというのは非常に大変である事は論を待たないだろう。それでもなお、子供が親を扶養する事が当然だと思う人間は河本の事を許すことはできないだろうし、そう思わない人間にとっては、何を問題にしているのか全くわからない。

こうした価値観の背景には、「自分が親を世話し、自分は子供に世話してもらう事が続いていく」という家族の再生産への素朴な信頼がある。
親→自分→子供→子孫、と自分の血縁が続いていくこと、そしてそれに伴って多少なりとも自分たちの生活水準が上がっていくことに期待する事、それが家族の再生産だが、こうした家族の再生産に対して多少なりともポジティブな印象を持っていることは結婚する上でもかなり重要な条件である。

結婚において重要となるのがなのが(特に男の)収入である事は最近とみに言われている事である。だが、それ以前に家族を作りたい(作ってもいいかな)と思わなければいくら収入があったとしても、個人同士の繋がりである恋愛関係を組み替えて結婚という形式に移行しようという気はなくなるだろう。ましてや子供をつくろうなんて夢のまた夢である。つまり、簡単にいえば子供のことが嫌いなのに子供を作りたいなんて言う人はごく少数だろう(ましてや子供から何のリターンも期待できないならなおさらである)。

こうした家族の再生産への素朴な信頼は個人が「結婚」を社会的から要請される大きな理由の一つである。社会にとっては各個人がネコ耳メイドが好きだろうが、黒髪以外は女として認めなかろうが、そんなこと飛影はいわなかろうがそんなことはどうでもよく、「結婚によって家族を再生産する」事、要するにとっとと結婚して子供を産んでくれ、ということなのだ。

未婚の人が増えているという事は、恐らく「家族の再生産」に対する期待値が下がってきているという事になるだろう。婚活界隈で良く聞かれる「妥協してこの人と結婚するぐらいなら一生独身でいい」という発想もつまりは一人でいる事の方が家族を再生産することよりも期待値が高くなっているという事なのではないか。だが、家族の再生産に期待するというのは実質我々が目にできる唯一の「家」つまり、自分が生まれ育った家庭であり、親に依存しているのではないか。つまり、親がそれなりに尊敬できる存在でなければ、積極的に家族を再生産することに期待する事は難しいだろう。だが、この変化の激しい時代に、そうした尊敬できる親を演じきれる可能性はこれまでに比べて少なくなっているように思われる。

もう一つ、より大きな問題はそうした「家族の再生産」を是とする価値観が隅々まで浸透した社会、というのは果たして住みよい社会なのだろうか。という問題がある。
この問いに対してYESと答えられる人は多分、幸せだ。暴力とまではいかないが、様々な理由によって、にわかには親を世話したくない感情にとらわれる人も世の中にはいる。そういう人にまで親の世話を強要する社会というのは実は、結構嫌な社会なのではないだろうか。

それにそもそも、我々(というかその前の世代から)こうした家や家族が大嫌いだからこそ、これからは核家族で個人の時代だ、とこれまで散々やってきたはずだったのではないだろうか。つまり、我々が家族の再生産を否定する(これには、最低限だれもが一人で生活していけるだろうという考え方がベースにある)のは戦後社会の成果の一つだったはずだ。それをいきなり否定して再生産しろ、というのは勝手だが、そう簡単に上手くいくものだのだろうか。
恐らく、政府や世間で活躍する「婚活ライター」によって、我々は非婚化が物凄い大問題であるかのように錯覚している。皆がこぞって結婚したがる社会というのは、実は大して住みよい社会ではないという事になりはしないだろうか。我々はそうまでして結婚する必要が本当にあるのだろうか。

※1 河本の会見によると、福祉事務所とやり取りをして支給額を減らしてはいたらしい。

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