記事

なぜNetflixは解約しても再開したくなるのか

1/2

ネット経由のコンテンツ配信から生鮮食料品の配送まで、あらゆる業界でサブスクリプションといわれる定額制のサービスが導入されている。成否を握るのは「購入後」の顧客との関係構築だ。そこで注目されているのが「ネット・プロモーター・スコア®(NPS)」という顧客ロイヤルティ指標である。NPSを開発したベイン・アンド・カンパニーが、サブスクビジネスを対象に行った新たなサーベイから「客が客を呼ぶ」仕組みの築き方が見えてきた。サブスク導入済の会社にも、検討中の会社にも参考にしてほしい。

※本稿は、2019年7月2日に行われた「サブスクリプション時代のNPS本格活用セミナー」の講演を基にしています。

※写真はイメージです 写真=iStock.com/Chinnapong

「いかに解約されないか」が勝負

いま、日本の消費者の購買行動や嗜好は大きく変化しつつあり、購入・所有する以外の選択肢が受け入れられる土壌が醸成されてきています。ミレニアル世代以降の若い層はシェアリングに対する抵抗感も少なく、長生きリスクを抱えるシニア層は価格や利便性にシビアになり、そもそも消費を控える傾向もあります。そんななか、売り切りモデルからいわゆるサブスクリプションといわれる定額制モデルが注目されています。

企業にとって、サブスクリプションとは、「継続的な関係性への投資」と言い換えることができます。売り切りモデルの場合は、広告を打って商品について知ってもらい、そこから購入してもらえばよかったわけですが、サブスクリプションモデルにおいては、「利用開始後」がより重要になってきます。いかに継続的にサービスを利用してもらえるか、言い換えれば、いかに解約をしないでもらえるかがビジネスの成否を握るといってもいいでしょう。

今回、ベイン・アンド・カンパニーでは、当社が開発したネット・プロモーター・スコア(NPS)という指標を使って、サブスクリプションビジネスを利用している消費者の関心や行動が従来ビジネスの消費者とどのように違うのか、明らかにしました。

ご存じの方もおられると思いますが、NPSとは顧客ロイヤルティの最も信頼できる指標としてグローバルに使われているものです。「当社のことをご家族やご友人に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問に対して、「10点:(推奨する)可能性が非常に高い」から「0点:非常に低い」までのスケールで答えていただきます。10点、9点を「推奨者」、0点~6点以下を「批判者」とし、全回答者における推奨者の割合から、批判者の割合を引いたものがNPSのスコアです。ちなみに、7点、8点は「中立者」と呼ばれます。

従来の顧客満足度調査では「あなたは満足しましたか」というかたちで、消費者自身の経験を聞きますが、NPSでは「家族や知人に薦めますか」と聞きます。つまり、自分の経験はどうだったか、ということからもう一歩踏み込んで「親しいあの人に薦めても大丈夫だろうか」と考えていただくことになります。これはまた、「自分が満足したか」という過去の経験ではなく「薦める可能性」という未来のことを考えてもらうことでもあります。こうしたことから、NPSは単純な顧客満足度調査よりも、消費者の将来の行動をより高い精度で予測することが可能なのです。

実際、批判者と推奨者の生涯価値は1.5倍から3倍もの開きが出ることがわかっています。いかに批判者を減らして推奨者を増やせるかということは、サブスクリプションビジネスにおいても重要な課題になってくるでしょう。


離反率や口コミにどれだけ差があるか

今回の調査で対象としたのは、Netflixやhuluのようなコンテンツ配信、マネーフォワードやZaimのようなウェブ経由で機能を提供するサービス、そして、オイシックスやパルシステムなどの生鮮配送サービスです。これらのユーザーをNPSのサーベイで推奨者と批判者に分け、離反率や口コミにどれだけ差があるかというのを見たものが次の図です。


従来型売り切りビジネスよりも、より鮮明に批判者が離反していることがわかります(継続購入していない)。また、0点~4点をつけた「強い批判者」は、口コミをしないだけでなく、むしろ積極的に不買を薦める傾向があるのも特徴的です。推奨者の方を見てみると、従来型のビジネスでは、推奨者の継続購入指数は、中立者を1とした場合に1.2くらいでしたが、サブスクリプションビジネスの場合は2倍近くになりました。つまり、サブスクリプションビジネスにおいては推奨者をいかに作るか、また逆にこういった強い批判者を作らないかということが、非常に重要になるということが明らかになりました。


サブスクリプションビジネスの口コミ

もう一つ興味深い傾向として、売り切りビジネスでは、ほとんどの口コミは購入して半年以内の人によるものですが、サブスクリプションビジネスの場合は、利用期間が1年~3年、つまり長く使っている人の方がより口コミをする傾向があります。口コミの受け手側で見てみると、サブスクリプションビジネスは、生命保険、モバイルキャリアといった長期契約のビジネス以上に口コミを参考にする人の割合が大きいという結果が出ました。スーパーやコンビニなどの小売りにおいては、口コミは影響が小さいこともわかっています。まとめると、サブスクリプションビジネスでは、発信側と受容側、両方合わせての口コミ効果が非常に大きくなる、ということが言えます。

ここで実際に、各会社の評価を見て見ましょう。図表4の黄色の部分が推奨者、赤い部分が批判者です。動画配信ですとNetflix、家計簿アプリではマネーフォワードの推奨者比率が突出しています。NPSのスコアはそれぞれ28%と24%です。プラスに大きく振れる数字は日本の他業界と比べても、非常に高い水準です。


「エピソード」から見えてくる顧客の真実

図表5を見てください。左側がある白物家電のNPSです。住宅も含めた耐久消費財はほとんど例外なく買ったあとNPSが徐々に下がっていきます。企業にとっては、一度買ってもらったら故障でもしない限り、買い替え時まで顧客との接点はありません。一方でサブスクリプションサービスの場合は時間が経ってもほぼ横ばい、もしくは逆に上がっていくようなかたちになります。特に、NPSが突出して高い「ロイヤルティリーダー」企業と呼んでいる高いNPSスコアを維持している企業は、ユーザーが利用体験を積み重ねるにしたがってNPSが上がっていっています。サブスクリプションの場合は、いつでも解約できるので、批判者の方は自然と抜けていきますが、NPSを非常に高く維持するためにはそのぶん推奨者を増やさなくてはなりません。



では、どうやったら推奨者を増やすことができるのか。ここでキーワードになるのが、「顧客エピソード」です。NPSを取るとき、ほとんどの場合は、ブランドやサービスを総合的に評価してもらうか、コールセンターなどの顧客との最終的な接点での評価になります。それに対して「エピソード」は、顧客ニーズが生じてから充足されるまでの一連の顧客体験のことです。具体的に見ていきましょう。

タッチポイント単位のNPSからは見えてこない評価

図表7は、あるインターネットのサービスに契約し、接続機器を受け取り、設置し、実際に利用開始するまでの顧客エピソードです。それぞれの段階でコールセンターやメール、実際の営業スタッフやウェブサイトなど、さまざまなタッチポイントがあります。そのタッチポイントごとにNPSを取るということは、実際に多くの企業がやっていることです。しかし、個別の接点だけを見てしまうと重要なことを見落とす可能性あります。

たとえば、問い合わせ時はよい対応で評価もよかったというところだけを見てしまうと、顧客の総合体験としてはサービス開始までに時間・手間が結構かかったので全体としては不満が残ったという評価が、タッチポイント単位のNPSからは見えてこないのです。エピソードというものをもう一段深掘りすると契約前の情報収集や、契約後の料金プランの変更、故障・紛失時のサポートといったレベル感のものまであり、適切なレベル感で顧客体験を調査・把握することが重要です。



そうしたところまで掘り下げてみていくと、個別のタッチポイントからは見えてこない顧客の真実が見えてきます。図表9は、サブスクリプションサービスにおいて、批判者を生み出しやすい確率を縦軸で、推奨者を生み出しやすい確率を横軸であらわしたものです。この座標軸にエピソードNPSをマッピングしてみると、「利用再開」「トラブル対応」は、推奨にも批判にも大きく振れるポイントであることがわかります。

エピソードごとにNPSを取って、それぞれどういう水準にいるかという分析をすると、何に優先的に取り組むべきかが浮かび上がってきます。例えばNetflixは、どのエピソードでも非常に高いNPSの水準を保っていますが、サービスのダウングレード(アップグレードに対して)への対応については改善の余地あり、というようなことが今回のサーベイからはわかります。



あわせて読みたい

「Netflix」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    小島慶子氏の旭日旗批判は筋違い

    和田政宗

  2. 2

    舛添氏 小泉環境相の発言に懸念

    舛添要一

  3. 3

    iPhone8~11 今買うべきはどれか

    S-MAX

  4. 4

    真実知らされぬ韓国国民を心配

    小林よしのり

  5. 5

    日本車が変えたスリランカ象文化

    にしゃんた

  6. 6

    元イクメン議員が進次郎氏に苦言

    AbemaTIMES

  7. 7

    菅長官 国民の「当たり前」重視

    菅義偉

  8. 8

    大田区の海外視察費が1800万円超

    大田区議会議員奈須りえ

  9. 9

    韓国でK-POPファンに売春を強要

    文春オンライン

  10. 10

    北の日本製レーダー 韓国に疑念

    NEWSポストセブン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。