- 2019年09月12日 11:15
婚活サイトの「年収1000万円」本物は4分の1だけ
2/2自己申告のマッチングサイトはウソだらけ?
アメリカなどに見られるマッチングサイトでは、利用者は年齢、人種、学歴、結婚歴、収入、身長、体重などを登録し、自分の写真もアップロードします。
ただし、利用者のプロフィールはすべて自己申告で、真偽は定かではありません。ということは、みんな自分のことをよく見せようと身長や年齢はサバを読み、写真も「奇跡の一枚」を使うのではといった疑問がわいてきます。
研究によると、会ってすぐにバレるような極端な嘘をつくことはないようです。よくある小さな嘘は、体重を2~3キロ過少申告するとか、身長を1~2センチ高くするとか、年齢を1~2歳サバ読みするというものです。
では、見ただけではすぐにわからないこと、たとえば「年収」はどうでしょうか。マッチングサイト「OKキューピッド」の運営ブログ(2010年7月6日)によると、年収10万ドル(約1000万円)を自称する人の数は、実際の人数の4倍にも上るそうです。
外見に関する嘘は、会えばわかります。年収に関する嘘も、身につけているものや行きつけのレストランなどから大体のところは見抜けるかもしれません。そもそも、相手が多少サバを読んでいることを理解してマッチングサイトを使っているのであれば、利用者は必ずしも嘘に振りまわされているというわけではないのでしょう。
「美人とイケメン」の経済学
好ましいことであるかは別として、恋愛のパートナー選びにおいては「容姿」も大きな要因となります。データ分析では、容姿も数値化しています。ある研究では、100人の学生に写真を一つ一つ見せ、最低1点、最高10点で採点してもらい、その平均点を利用者の容姿の点数として分析に利用します。
なかなか残酷なやり方に見えますが、写真以外の利用者情報は明かされません。容姿を採点する学生は、利用者とは別の町に住んでいるので、利用者のプライバシー保護については配慮されています。
ちょっと話は脱線しますが、容姿の良し悪しが実社会でどのようなインパクトを持つのかという研究は、経済学分野ではしばしば行われています。ここで述べたものと同様の方法で容姿を点数化し、美男美女ほど収入が高くなる傾向を明らかにした研究がその始まりです。
この話をさらに推し進めて、美容整形によって美男美女になれば、高収入を得られるか検証した分析まであります。それによると、美容整形をして高収入を得るというのはどうやらかなり難しいようです。高収入を得られるほどの美男美女というのはほんの一握りなのですが、美容整形によってその域まで達するのは難しいというのが理由だそうです。
すべてがデータ化されるマッチングサイト
マッチングサイトでは、利用者のサイト上での行動がすべてデータ化されています。具体的には、誰が誰のプロフィールを見たのか、プロフィールを見たあとに「いいね!」やメッセージを送ったのか、メッセージを送った場合には、実際にデートに至ったと思われるかどうかなどを知ることができます。
どんなプロフィールを見た上で、誰に「いいね!」やメッセージを送ったのかがわかれば、そのデータを分析することで、この利用者はどういう人が好みで、自分の将来のパートナーに何を望んでいるのかを知ることができるというわけです。
データが明らかにしたモテ要素
データ分析の結果、利用者は以下のような好みを持っていることがわかりました。
やはり、容姿は重要な要素で、見た目のいい人ほど多くの人に好まれます。背の高い男性は女性に好まれる一方、背の高い女性は男性からは不人気なようです。また、太っている男性は女性からやや好まれているのに対して、太った女性は男性から好まれていないようです。
収入は、男女とも高いほうが人気を集めますが、女性のほうが相手の収入を重視する傾向が強いようです。学歴については、男女とも自分と近い人を好むのが一般的であるものの、女性は男性により学歴を求め、男性は学歴のある女性を避けるような傾向も見られます。

山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』(光文社新書)
恋人に対する好みは人によってさまざま
万人受けする、いわゆるモテるタイプがわかった一方で、恋人に対する好みは人によって大きく異なる部分があることも明らかになりました。蓼食う虫も好き好きという言葉がありますが、モテるタイプでなかったとしても、広い世の中には自分を好んでくれる相手がいるのだという、なんだか希望のわく話です。
こうした結果を見て、あなたはどんな感想を持ちましたか? 意外な結果だったでしょうか? おそらく、ほとんどの人にとって「当たり前」だと感じるような結果だと思います。でも、「当たり前」をデータできちんと確認しておくことはとても重要です。「当たり前」だと思っていたことがデータで確認できない、つまり、実は「当たり前」ではなかったというのは、社会科学の研究者ならば何度も体験しています。事実関係を正しく踏まえるのが、私たちの社会の正しい理解への第一歩につながるのです。
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山口 慎太郎(やまぐち・しんたろう)
東京大学経済学部・政策評価研究教育センター准教授
1999年慶應義塾大学商学部卒業。2001年同大学大学院商学研究科修士課程修了。2006年アメリカ・ウィスコンシン大学経済学博士(Ph.D)取得。カナダ・マクマスター大学助教授、准教授を経て、2017年より現職。専門は、結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で研究する「家族の経済学」と、労働市場を分析する「労働経済学」。
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(東京大学経済学部・政策評価研究教育センター准教授 山口 慎太郎)
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