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【読書感想】ノモンハン 責任なき戦い

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ノモンハン 責任なき戦い (講談社現代新書)
作者: 田中雄一
出版社/メーカー: 講談社
発売日: 2019/08/21
メディア: 新書
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Kindle版もあります。

ノモンハン 責任なき戦い (講談社現代新書)
作者: 田中雄一
出版社/メーカー: 講談社
発売日: 2019/08/21
メディア: Kindle版
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内容紹介
真珠湾攻撃、太平洋戦争開戦の2年前の1939年、満州国とソビエト連邦の国境地帯で発生した「ノモンハン事件」。

見渡す限りの草原地帯で、関東軍とソビエト軍が大規模な軍事衝突に発展、双方あわせて4万5000人以上の犠牲を出した。

関東軍を率いたのは、弱冠37歳の青年参謀・辻政信と、その上司・服部卓四郎。

大本営や昭和天皇が無謀な挑発を厳しく戒めるのをよそに、「寄らば斬る」と大見得を切った辻によって、日本軍は想定外の「戦争」へと突入していった――。

事件から80年、いまも装甲車や塹壕が放置され、人骨が散在するノモンハンの現場を徹底調査、さらにアメリカに残る旧軍人らのインタビューテープを発掘して、事件の深層を立体的に浮かび上がらせた同名番組を書籍化。

内容(「BOOK」データベースより)
第二次大戦日本軍大敗北の「序曲」が、ここにある。村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』のモチーフになった満州北辺の戦争。「作戦の神様」「陸軍きっての秀才」と謳われた参謀・辻政信に率いられた関東軍は、なぜソ連・モンゴル軍に大敗を喫したのか。この悲惨な敗戦から、なぜ何も学ばなかったのか。NHKスペシャル放送時から話題沸騰の名作!辻政信が書き残した「遺書」の内容とは。

 司馬遼太郎と村上春樹。

 太平洋戦争後の日本を代表する人気作家ふたりが、この「ノモンハン事件」について強い興味を示しているのです。

 司馬さんは、10年くらい調べていたけれど、「嫌気がさして、資料も埃をかぶってしまった」そうで、作品として世に出すことはありませんでした。

 一方の村上春樹の小説には、『ねじまき鳥クロニクル』など、たびたびノモンハン事件を想起させる登場人物が現れる。小学生のときに手にした本でノモンハンの白黒写真を目にした村上は、「どういうわけか」その情景が頭の中に焼き付いていたという。

 僕らは日本という平和な「民主国家」の中で、人間としての基本的な権利を保証されて生きているのだと信じている。でもそうなのだろうか? 表面を一皮むけば、そこにはやはり以前と同じような密閉された国家組織なり理念なりが脈々と息づいているのではあるまいか。僕がノモンハン戦争に関する多くの書物を読みながらずっと感じ続けていたのは、そのような恐怖であったかもしれない。この五十五年前の小さな戦争から、我々はそれほど遠ざかってはいないんじゃないか。
             (村上春樹『辺境・近境』)

 NHKスペシャルとして放送された内容を書籍化した本なのですが、これを読んでいると、「ノモンハン事件」というのは、のちに、太平洋戦争で無謀な戦いを続け、戦後も、偉い人たちは責任を取らず、現場で板挟みになりながら葛藤していた人たちに責任を押し付けるという「責任のすり替え」の原点になっているように思われるのです。

 このとき、「きちんと大敗の原因を分析し、責任の所在を明らかにする」ことができていれば、その後の日本は、大きく変わっていたのかもしれません。

 ノモンハン事件は、わずか4ヵ月の戦いで日本側およそ2万、ソ連側2万5000の膨大な死傷者を出した。「事件」と名付けられてはいるが、実質的に「戦争」そのものだった。

 歩兵中心の軽装備で戦いに臨んだ日本に対し、ソ連は最新鋭の戦車や装甲車など近代兵器を大量に投入し、日本を圧倒していった。単純に死傷者数だけを比較すると、日本が優位になったように見えるが、日本軍は自らが主張する国境線を守れないままに後退、作戦目的を達成することはできなかった。

 この手痛い”敗北”は陸軍内部でも「国軍未曾有の不祥事」(参謀次長・沢田茂中将)と認識されていた。しかし、日本はこの事実をひた隠しにする。陸軍中央は新聞各社に報道の自粛を要請、戦況が有利な時でさえも報道は制限され、関東軍の憲兵隊は一兵卒の手紙に至るまで検閲し、戦争の実態が本土に伝わらないよう細心の注意を払った。「敗北」の事実が国民に広く知らされることはなかった。

 ノモンハン事件、と言われるけれど、敵味方あわせて4万5000人もの犠牲者が出れば、それは「戦争」と呼ばれてしかるべきでしょう。

 日本とソ連の国境をめぐる紛争を拡大したのは、関東軍の作戦参謀だった、辻政信という人でした。

 辻さんは、太平洋戦争中は「作戦の神様」「陸軍きっての秀才」と呼ばれていたそうです。

 太平洋戦争中は、初期のシンガポール攻略で名をはせたものの、ガダルカナル島では補給を軽視し、兵力の逐次投入もあって、餓死者、病死者を含む多くの犠牲者を出しています。

 戦後は、戦犯として裁かれるのをおそれて国外に潜伏し、ほとぼりがさめてから帰国、日本で国会議員をつとめました。

 なんて無責任で卑劣な人なんだ、なにが「作戦の神様」だよ……と憤りを感じるのですが、それは、あくまでも「2019年の僕からみた、辻政信という人」でもあるのです。

 この取材では、膨大な当時の関係者の肉声や一次資料にあたっているのですが、そこには、参謀でありながら、前線に出てその状況をしっかり見て、部隊の指揮官としては、激しい戦闘中に傷病兵を自ら背負って自陣に帰る、人望の厚い軍人として彼を語る人が少なからずいたのです。

 「ノモンハン」当時は「少佐」で、年齢も若かったにもかかわらず、優秀で現地の状況にも明るく、自分が正しいと思ったことは相手が上官でも曲げない、スタンドプレイが目立つけれど、周りが言うことを聞かずにはいられないような威圧感をまとった人でもあったそうです。

 取材班は、辻政信が生まれ育った集落を訪れています。

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