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焦点:社外取動く、日産・西川社長の外堀埋めた退任劇


[東京 11日 ロイター] - 日産自動車<7201.T>の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)の辞任劇の背景には、取締役会のガバナンス(企業統治)不全に対する、社外取締役らの強い警戒感があった。今後の焦点は後任選びへと移るが、短期間で相次いだトップ交代劇に、市場の見方は一段と厳しくなっている。

<西川社長、即時辞任に抵抗>

9日の取締役会は午後3時、日産本社で始まった。複数の関係者によると、午後6時ごろには議題がカルロス・ゴーン被告らの不正に関する最終調査報告から、株価に連動した報酬制度(SAR)における報酬水増し問題を踏まえた「西川社長の進退」に移った。当事者である西川氏はいったん退席させられ、議論が続けられた。

西川氏のSARを通じた行為は社内規定違反ではあるものの、法律違反でなく不正の意図もなかったことから、即時辞任には当初、複数の社外取締役が否定的だった。

ところが、「ガバナンスの観点」から、一部の社外取締役が即時辞任を提案すると、これに山内康裕最高執行責任者(COO)、外国人の社外取締役、仏ルノー<RENA.PA>のジャンドミニク・スナール会長らが賛同した。ガバナンス改革を進める上で問題をうやむやにすべきではないとの意見が強まり、最終的には取締役会として辞任を要請することでまとまった。

再び入室を許され、即時の辞任を求められた西川社長は当初、抵抗した。昨年11月に逮捕されたカルロス・ゴーン前会長の不正を防げなかった責任から、いずれ辞任するとの意向を周囲に伝えてはいたものの、後継者選びを見届けて「日産を元の軌道に戻す」との意向が強く、不正報酬問題を議論した今回の取締役会のタイミングでの辞任は想定していなかったためだ。

それでも取締役会から、不正報酬の問題だけでなく、ゴーン被告らの不正を見逃した責任を含めた辞任であることなどの説明を受け、最終的に辞任の要請を受け入れた。

西川社長の辞任劇は、いわば社外取締役の主導で進んだ。日本企業のコーポレートガバナンス強化を進める政府は、こうした動きを前向きに受け止めた。

世耕弘成経済産業相は10日、西川社長の辞任について「コーポレートガバナンスがしっかりと機能している証左だ」と評価した。日産のコーポレートガバナンス整備に経産省も関与してきたと説明。ガバナンスを整備するという路線により、「少数株主の権利を守る議論になり、ルノーによる経営統合も現時点で成り立っていない」と述べた。 

<報道合戦が埋めた外堀>

今回の西川氏の引責辞任は、監査委員会では当初想定していなかった。SARによる報酬問題は法律に違反しておらず、不正の意図がないと社内調査で判明したためだ。ところが、西川社長の辞任を巡る関係者の間での「機運」は、取締役会を前にした週末にかけて「空気が変わり、西川社長の早期辞任の流れが強まった」(日産幹部)。

相次いだ関連報道も背景の一つだ。取締役会の前週末6日までに、監査委員会が西川氏の引責辞任を求めない方向で調整しているとロイターを含む複数のメディアが伝えた。一方、取締役会前日の8日深夜、日本経済新聞電子版が、西川社長が退任する意向を一部の幹部に伝えたと報じた。取締役会当日の9日にかけては複数の報道機関がこれに続いた。

西川社長自身は9日朝、詰めかけた報道陣に対し、今回のタイミングでの辞意を改めて否定したものの「世間の批判の声が強まれば、さらなる求心力低下も懸念された」(別の日産関係者)。西川氏は外堀を埋められた形となった。

<急がれる後任選び>

今後の焦点は西川社長兼CEOの後任に移る。日産は当面、山内COOがCEO代行を務め、10月末をめどに正式な後継者を選ぶ方針だ。指名委員会委員長の豊田正和社外取締役は9日の会見で、現在100人から10人程度に候補者が絞られており、その中には日産在籍者だけでなく、日産での勤務経験者、ルノー出身者、外国人、女性も含まれていることを明かした。

関係者によると、候補者リストには山内COOのほか、日産では業績の立て直しを担う専任役員を務める関潤専務、中国マネジメントコミッティ議長を務める内田誠専務などが含まれている。今後、専門家による第三者の評価を仰ぎながら絞り込みを急ぐ。

西川社長は会見で、日産の業績に回復の兆しが見えてきたことも、辞任を決めた背景の一つと説明したが、市場の見る目は厳しい。

S&Pグローバル・レーティングは10日付のレポートで、短期間に経営陣の交代が続いたことで、新モデルの投入や生産能力の削減など事業基盤の強化に向けた取り組みの実行に、当初計画より時間がかかる可能性が高まったと指摘。同社の中井勝之主席アナリストは「7―9月期以降の業績を慎重に見極めていく必要性が高まった」としている。

(白木真紀 取材協力:清水律子 編集:平田紀之)

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