記事

【読書感想】なぜ女はメルカリに、男はヤフオクに惹かれるのか?

2/2

 今回、メルカリの取締役社長兼COO・小泉文明さんにも、直接お話を伺うことができました。「我々のマーケットプレイスのキーワードは、『”捨てる”をなくす』です」と小泉社長。すなわち出品者本人にとっては、今はさほど価値がない。でもそれまえでに育んできた何らかの愛着や「ただ捨ててしまうのは惜しい」といった思い入れがある。だからこそ、「もしこれをフリマアプリに出品したら、誰かが価値を感じて買ってくれるかもしれない」と、ドキドキワクワク、胸躍らせながら出品するのでしょう。

 ただ、この部分だけなら、ヤフオクや他のフリマアプリも同じかもしれません。

 ところが小泉社長は、別のことを口にしました。それが「メルカリの楽しさの半分は、誰かに認めてほしい、あるいは認めてくれるといった『承認欲求』にあるのではないか」との視点。先のどんぐりのケースや、「ベビーカーが必要とされて嬉しかった」と話していたB子さんの事例も、まさにそうですよね。メルカリのサービス立ち上げ当初から事業に関わった小泉社長も、「当時ヤフオクとの差別化は、当然意識した」とも言います。

 実際にメルカリユーザーに聞いた「メルカリを使う理由ランキング」(2018年)を見ても、1位こそ「賢くお小遣い稼ぎができる」(34.2%)ですが、僅差の2位(33.2%)は「捨てようと思っていたものが売れて得した気分になる」、そして5位が「あらゆるモノに価値がつく」(22.0%)。その根底には、「こんなモノが売れるんだ!」といった驚き、あるいは自身の承認欲求が満たされたことへの満足感が見え隠れしていますよね。

 まずこの点が、他のフリマアプリとの大きな違いだと感じる方も多いようです。今回の取材でも、「メルカリは、少しデザインが古くなった服や靴も『レトロで可愛い!』と褒めてくれるユーザーさんが多くて嬉しい」(30代女性)など、やはり承認欲求が満たされた喜びを口にする女性が、複数見受けられました。

 また小泉社長いわく、最近はいわゆる「終活(人生の終わりに向けた活動)」の一環として、メルカリを利用する、シニア層も増えているそうです。長年、趣味で集めてきた切手を「価値がわかるコレクターに引き継いでほしい」と出品するシニア男性もいる、とのこと。

   メルカリは、商品のやりとりを通じて、自分が買ったものやセンスを褒めてもらえたり、「自分にとっては大事なもの」の価値がわかる人と繋がれたりする場所でもあるのです。

 いろんな煩わしい手続きを簡略化して、不要なものを売ることができるのがメリットだと思っていたけれど、そこに、人々はさまざまな付加価値を見いだすようになってきています。

 自分の住所や本名を教えずに品物のやりとりをするシステムが開発される一方で、商品のやりとり+αを求める人もいる。

 便利なだけでは、差別化できない時代なのです。

 この新書では、この「メルカリとヤフオク」のエピソードのように、利用者に時間をかけてインタビューした「生の声」を紹介している部分と、それを専門家が分析し、理論家したものが交互に出てくるのです。

 だから、「ある人の主観だけが大声で語られている」わけではないし、「専門用語が延々と並んでいて、読んでいて眠くなる」こともない。

 400ページ近くある、新書としてはかなり厚い本なのですが、あまり長さを感じずに読み進められます。

 著者のひとりの田中道昭さんは、シアトルで無人コンビニ「アマゾン・ゴー」を訪れています。

 1号店で私が目にしたものは、驚くべき光景でした。通り沿いから店内を覗くと、右側にはガラス張りのオープンキッチンが、そこでは何人ものスタッフがサラダやサンドイッチを作っているのが見えます。清潔感を象徴するかのような白いユニフォームの上から、アマゾン・ゴーのロゴが入った緑色のエプロンを身につけ、手際よく作業を進めていくスタッフたち。

 アマゾン・ゴーといえば「無人レジコンビニ」が代名詞だったはずです。入店後に自動ゲートにスマホをかざし、あとは商品を手にしてそのまま出ていくだけ。それを実現させている最先端テクノロジーは、店内の至るところにあるセンサーやカメラの数から推測することができます。店頭には「ジャストウォークアウトショッピング(ただ歩いて立ち去るだけで買い物ができる)」というコンセプトが掲げられていました。

 しかし私は、アマゾン・ゴーの真価は「無人」とは別のところにあるのではないかと分析したのです。

(中略)

 一点めは、「超有人店舗」だったということです。「無人レジコンビニ」というキーワードばかりが注目されがちなアマゾン・ゴーですが、実際には、多くのスタッフがオープンキッチンで働いていました。むしろ「ここで売っているサンドイッチは我々人間が作っている」と、有人店舗であることをあえて見せ、誇示しているかのようでした。ガラス張りの明るいオープンキッチンでの調理は、食材がフレッシュであること、調理に手間暇をかけていることを顧客に訴求する効果が確実にあります。

 せっかく「無人コンビニ」をつくったのに、わざわざ「オープンキッチンにして、人が働いていることをアピールする」というのは、なんだか矛盾しているのではないか、と僕は思うのです。

 しかしながら、顔がみえる人がつくっていると、なんだか安心できる、美味しそうに感じる、というのも事実なんですよね。

 今の技術であれば、機械のほうが、美味しくて衛生的な商品つくれるのではないか、と頭では考えていても。

 マーケティングの最大の難しさは、相手が「理屈」だけでは動いてくれない「人間」である、ということなのでしょう。

学びを結果に変えるアウトプット大全
作者: 樺沢紫苑
出版社/メーカー: サンクチュアリ出版
発売日: 2018/08/03
メディア: Kindle版
この商品を含むブログを見る

苦しかったときの話をしようか
作者: 森岡毅
出版社/メーカー: ダイヤモンド社
発売日: 2019/04/11
メディア: Kindle版
この商品を含むブログを見る

「ホットケーキの神さまたち」に学ぶビジネスで成功する10のヒント
作者: 遠藤功
出版社/メーカー: 東洋経済新報社
発売日: 2019/04/19
メディア: Kindle版
この商品を含むブログを見る

あわせて読みたい

「フリマアプリ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    埼玉県でマスク30万枚が野ざらし

    SmartFLASH

  2. 2

    中韓が日本産盗む?対立煽る報道

    松岡久蔵

  3. 3

    安倍首相の暴走許す自民党は末期

    田原総一朗

  4. 4

    ひろゆき氏 五輪の開催は難しい

    西村博之/ひろゆき

  5. 5

    新型コロナで公共工事中止は愚策

    近藤駿介

  6. 6

    権限ない休校要請 保護者は困惑

    BLOGOS しらべる部

  7. 7

    在宅勤務に賛成して休校否定の謎

    やまもといちろう

  8. 8

    政府の無策が招く東京五輪中止

    渡邉裕二

  9. 9

    石破氏 船内対応巡る発言を反省

    石破茂

  10. 10

    マラソン決行 主催の説明に呆れ

    WEDGE Infinity

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。