記事

売り上げはあきらめた。辞めるかもしれない社員への投資も惜しまない──すべては企業文化を守るため

2/2

チームの団結力を強めるのは、信頼、人間関係、レジリエンス


次はチームワークについて教えてください。チームの団結力を強いものにするためにはなにが必要でしょうか?


信頼と良好な人間関係、そしてレジリエンス(回復力)だと思います。
信頼はフィードバックを通して築くことができます。
そして、良好な人間関係は、絶対に欠かせない要素です。人は、自分のことを考えてくれる人と働きたいものです。職場での人間関係はうわべだけのものではいけません。多くの時間を一緒に過ごすわけですから。


人間関係を良好にするためにはどうしたらいいでしょうか?


周囲とお互いの生活のことを話せることが大事だと思います。
それもメールではなく、顔を合わせてコミュニケーションするのがポイントですね。メンバーをコーヒーやランチに誘って、時間をかけて人間関係をつくりましょう。

スチューデント・メイドのスタッフは、現役の大学生。ここで得た経験を生かして就職に成功する学生が多いという


たんに今週末の予定や天気の話をするのではなく、お互いのことを知れる会話ができるといいですね。


レジリエンス(回復力)とはなんでしょう?


レジリエンスとは、失敗や困難に対するチームの心構えのことです。
私の会社では、「そこから何かを学べるのであれば、それは失敗でない」という話をしています。


失敗や間違いから何かを学ぶために、ハディードさんの会社では、具体的にどのようなことをしているのでしょうか?


何か間違いやミスをしたときは、話をするようにしています。
ミーティングを開き、「何が起こったのか」「どうしてこのミスが起こったのか?」「つぎに同じことが起こったらどうするのか?」ということを話し合います。
このようにチームみんなで学べるのなら、そのあと困難にぶつかっても、それを乗り越えられるはずです。厳しい状況でも、恐れることはありません。すでに困難を乗り越えた経験があるのですから。今度も同じようにすればいいのです。

会議の席が静まり返っていたら、それはよくないことが起こっていることの証拠


ここまでチームの結束力を高める方法や失敗から学ぶ方法についてお聞きしました。
今度は、会社の中で何かがうまくいかなくなった場合の対処法を教えてください。会社やチームで問題が起きているかどうかを気づくための方法はありますか?


はい、私の場合は会議でのメンバーの様子を、うまくいっているかどうかのひとつの指標にしています。
もし、みんなが自由にアイデアやフィードバックを話していたら、それはすべてが健全であるというサインです。



一方心配なのは、会議の席が静まり返っているときですね。何か問題を感じた場合は、会議を止めて、「何かよくないことが起こっているみたい。一体どうしたのでしょう?」と問いかけます。
それから、みんなで話し合います。みんなが黙ってしまった理由、避けようとしていた話題が明らかになるはずです。


徹底して、みんなで話し合うようにしてるんですね。
ただ、中にはあまり話すのが得意でない人もいると思います。その場合はどうするのでしょうか?


私の場合、話すのが得意でない人については、ボディーランゲージや表情から、心の中でどのようなことが起こっているかを推測できます。
もし、その人が賛成しかねることがあるのに、発言できないようなら、いったん会議を止めます。そして、「確認しましょう。ここまでのみなさんの考えを聞かせてください」と、言ってみるのです。
このように、各メンバーに考えを聞く役割をconflict miner(対立探しをする人)と呼んでいます。反対意見があるが、口に出して言えない人を会議中に掘り起こす役目をする人のことですね。


それは、リーダーの仕事になるのでしょうか?


必ずしもそうとは限りません。会議によって指名することもあります。ただし、会議のファシリテーターとは別の人が担当するようになりますね。一度に両方するのは難しいので。


人前で話すのが苦手で、みんなの前で話すのが嫌だという人に意見を求めても大丈夫でしょうか?


相手を不快にさせたくない気持ちはわかります。でも、何かを推し進めるには、みんなの意見を聞く必要があります。
時間に余裕があるのなら、「考える時間が必要で、ひとりになったほうが考えやすいのなら、1週間後に答えを聞かせてほしい」 と伝えるのも有効です。
要するに、各メンバーが自分に最適な方法でアイデアを出せるようにすることが重要なのです。

たとえメンバーが転職するとしても、彼らへの投資は惜しまない


最後に、新人研修について教えてください。
冒頭で、規模の拡大よりも企業文化を守りたいとおっしゃっていましたよね。
それほど、企業文化の維持と従業員への浸透を重視しているのだと思いますが、新しく入った社員が会社のカルチャーに馴染めるようにどのような対応をとっていますか?


時間をかけることが大事です。
新しく入ってきた人がずっと前からつくり上げられてきたものに、一瞬で同化できるような方法はありませんから。
ただ研修は、入社面接に訪れたまさにその日から始まるとわたしは考えています。


入社する前から、ということでしょうか?


そうです。
候補者の人には、私たち社員を家族みたいに感じてもらえるよう心がけています。
いちばん最初の面接は、厳密に言うと、いわゆる面接ではありません。オフィスツアーを行い、その後、わたしたちの会社の成り立ちと目標についてお話しします。
それからこうお伝えします。「わたしたちの会社があなたにとって、わくわくできるようなものなら、喜んで面接を設定させてもらいます。でも、まずはお会いしたいと思っていたんですよ」と。
つまり、ファーストコンタクトの時点で、人間関係を構築しているのです。


なるほど。


私たちの会社では新人向けに1か月間の研修プログラムを組んでいます。フィードバックのためのFBIメソッドや、自己評価、さらに自己発見や人間関係の構築について学んでもらいます。
良き人、良きリーダー となってもらうために、たくさんの時間をかけて、スキルを教えます。
ここで学ぶことは、今後の彼らの人生のあらゆる場面で、役に立つはずです。
彼らがいつか転職するかもしれないことはわかっています。それでも、この研修は必ず行います。大切なことを教えようという気持ちが私たちにあることを伝えたいからです。


いつか会社を離れていってしまうかもしれない従業員に対して、初めからかなりの投資をすることを無駄だとは思わないのでしょうか?


経営者が社員に投資し、その目的が社員の自己改善のサポートならば、社員は突然辞めたりしないでしょう。
だれの文章かは忘れましたが、「人に投資して、彼らが去ったらどうなるか?」そして、その次にこう続いています。「人に投資せず、そのまま彼らが居座ったらどうなるか?」(*)
従業員の定着率によって、企業文化がいいかどうかがわかると、私は考えています。
私たちのケースでは皮肉にも、離職率を下げることに必死になるのをやめて、メンバーに投資することに力を入れるようになったところ、定着率が過去最高になりました。
それは、メンバーが「私のことを気づかってくれている。だから、転職したいとは思わない」と考えてくれているからだと思っています。


(*)さまざまな人が発言しているが、いちばん初めに言ったのはヘンリ・フォードだと思われる。

Vulnerability Made My Company Stronger—Interview with Kristen Hadeed (Part 2) - Kintopia

執筆:Alex Steullet/編集:鈴木統子

あわせて読みたい

「経営」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。