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米社会の分断や米中対立は、誰が大統領になっても変わらない構造的な現象-ピュー・リサーチ・センター前ディレクターのストークス氏

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 米国の世界的な世論調査機関ピュー・リサーチ・センターでディレクターを務めていたブルース・ストークス氏は9月9日(月)、言論NPOの公開フォーラム「アメリカ大統領選挙の行方と民主主義の現状」に参加し、現在、米国で起こっている社会の分断や、自由と民主主義の牽引役という立場からの米国の撤退、また米中対立に伴う世界の分断は構造的な現象であり、大統領選でトランプ氏と民主党候補者のどちらが勝利しても大きく変わらない、との見方を示しました。

 フォーラムにはこのほか、米国通商代表補代理や在日米国商工会議所の会頭などを歴任し、現在は米国の先端政策研究所で上席研究員を務めるグレン・S・フクシマ氏、そして国際政治学者、文化人類学者として米国社会の状況に詳しい渡辺靖・慶應義塾大学教授が参加しました。

支持政党により大きく影響を受けている個別政策への態度

 ストークス氏は、同センターが実施した米国の世論調査結果を紹介しながら、トランプ政権下における米国社会の構造を説明。同氏はまず「米国人は今、非常にストレスを感じている」と指摘しました。そして、過去50年間で、非白人や海外生まれの人が人口に占める割合がそれぞれ3倍になった、と紹介しました。そして、移民の割合が今と同程度まで増えた1920年代にも、中国人や日本人を排斥する現象があったとし、今起こっている反移民の動きは、米国の歴史に見られるパターンの再来だ、との解釈を示しました。

 続いて、自身の地元、ペンシルベニア州バトラー郡における2016年の大統領選結果に触れ、「同郡は失業率や平均所得が全米平均より良く、海外生まれの割合も低いが、トランプ氏が67%の票を獲得した」と紹介。同時に、「他国の影響からアメリカ的な国民生活を守る必要がある」と考える人が、民主党支持者では4割なのに共和党支持者では7割を超えることに触れ、トランプ氏への支持が根強い背景には、経済状況よりも、米国人の文化的な誇りが脅かされているという感情にあるのではないか、との見方を示しました。

 さらにストークス氏は、米経済の現状への評価や自由貿易への賛否などで、共和党支持者と民主党支持者が正反対の傾向を示していることを指摘し、「これは純粋に経済のことを言っているのか、それとも、共和党員だから全てが素晴らしく見え、民主党員だから全てが酷い状況に見える、ということかもしれない」と、個別政策への態度が支持政党によって大きく影響を受けている米国社会の分断の状況を明らかにしました。

トランプは分断の原因でなく結果であり、それは民主主義国に共通する現象

 これを受け、司会を務めた言論NPO代表の工藤泰志は、「こうした米国社会の分断は、大統領選を経てさらに加速するのか」と問いました。

 ストークス氏は、2年半前のトランプ政権発足以降、その支持率が共和党では8割を超え、民主党では1割に満たないという結果が継続していることを挙げ、こうした固定化の傾向は選挙戦を経ても続くという見通しを示しました。

 渡辺靖氏も、「これだけの分断が回復したケースは世界史の中でもない」と悲観的な見方を提示。トランプ氏の出現は分断の原因ではなく、経済格差や人口構成の変化、情報環境の変化が複合して起きた「結果」であるとし、こうした民意の「タコツボ化」や、それに伴う自国第一主義、強権的指導者の台頭は民主主義国全体に共通する現象だとしました。

 一方、フクシマ氏はこうした見方に基本的には賛成だとした上で、中長期的には異なる方向に向かうだろうとの意見を披露しました。同氏は、2044年には白人の人口が米全体の過半数を割る見通しであることや、非白人や若者は自由貿易や移民、気候変動対策に肯定的な傾向があることに触れ、今後は政策動向が変化する可能性を指摘。人口動態の面で米国全体の変化に先行しているカリフォルニア州の知事がトランプ氏と真逆の政策をとっていることからも、「中長期的にはこれが米国の将来像だ」と語りました。

対立、分断を煽ることが選挙の勝敗を左右するという構図に

 また工藤は、「トランプ政権の行動により、世界の自由貿易や多国間主義に摩擦が生じている。にもかかわらずトランプ氏は、既成の政治や移民などの敵をつくって社会を分断するという手法で、今度の選挙戦にも挑もうとしている。こうしたやり方がいまだに米国では通用するのか」と疑問を投げかけました。

 これに対し渡辺氏は、選挙戦の勝敗のポイントは「両党のどちらかが、支持者を投票所に向かわせようという熱気を醸し出すことができるか」だと発言。過去の大統領選では、既存の政治と距離があるアウトサイダーが勝つ傾向が強いとし、トランプ陣営は「バイデンは40年近く政治家だったのに、何も変えられなかった。自分の改革がうまくいかなかったのも民主党が邪魔したからだ」と支持者を鼓舞できる、と語りました。一方、民主党については「米国の民主主義の今後を考えたときに、トランプのままでいいのか」という世論を、党派を超えてどこまで高められるかにかかっている、としました。

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