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働かないことを「悪」とするのは、就労支援者だ

■中世ヨーロッパの人々はいかに『働かなかったか」

Twitterで鶴見済氏が、中世ヨーロッパの人々がいかに「働かなかったか」ということについてしみじみと語っていたことが印象的だった。

鶴見氏といえば、人々はもう忘れたのかもしれないが、あのベストセラー『完全自殺マニュアル』の鶴見氏だ。

虚無主義の極みだった同書の著者もどうやら大人になり、それなりのポジティヴィティを模索しているようだ。

農家とのつきあい、労働感の検証等、「あの本」の著者とは見えないくらい、フツーの迷いの中ツィートする。

その一環だろう。産業革命以前の欧州を例にとりながら、現代社会がいかに働き過ぎであるかを間接的に提示する。

そう、中世ヨーロッパの人々は、現在の先進資本主義国の人々より半分も働いていない。鶴見氏の言うように、「働きすぎは資本主義以降」のようだ。

まあ、こんな事例を出さずとも、現代がいかに働きすぎかを考えるには、たとえば国民の2人に1人が癌になるという事実を考えてもいい。

そう、平均寿命が長くなったということは、それは、「(癌を含む)病とどうやって長くつきあっていくか」を人生の基本命題として据えることでもある。

食べる、死ぬ、遊ぶ、働く、祝祭する、学ぶ、渡航する。

数え上げたらキリがないが、長く生きるとは、人生の中の様々な局面に臨むということだ。そんな局面の一つに「働く」は属してはいるものの、自分が死ぬことを考えたとき、「働く」なんて実にちっぽけな出来事だ。

■日常生活の水準はささやかなものとなる

社会が安定しており、戦争も飢餓も近親者の殺し合い(虐待含む)もどちらかというとレアな時、「働く」ということは人生の中心テーマに据えてもそれほどおかしくはなかった。

が、戦争(紛争)は間近におそらく迫り、最貧困層には飢餓は珍しくはなく、虐待による死亡事件も日常的な今、「働く」は相対的にたいした問題ではなくなった。

また前回(もう「就労」はやめて、「専業主フ」かボランテイアでいいだろう?)も書いたとおり、「ブラック職場」が珍しくなくなった今、無理して働くことは自分の生命が脅かされる事態でもある。

だから、だ。

やはり無理して働く必要はない。

その対価として、日常生活の水準はささやかなものとなる。親の死後の数年後は生活保護になる。

働かないことでやってくるそんな対価は、たとえばひきこもりのように長年ほとんど経済活動を行なわない身からするとたいしたことではない。月々10万ちょっとで生きることなどフツーだ。

いまさら、バブル世代のように華やかな消費はできないし、そんな消費をすることは自分を裏切ることでもある。

長年のひきこもり生活のなかで体得した「ささやかに消費しひきこもる」その生活が、無理して働かないことを支える。

■批判的なのは、一部の支援者と元ひきこもり

働かないことは、そんなふうに悔しく語ることではない。

また、働かないことは「悪」でもない。

働かないことはダメなことでもない。

現代日本で、それ(働かないこと)をダメなものとしているのは、一義的には、

就労支援者

だと僕には思える。その次に、働かないことを「悪」とするのは、

元「ひきこもり」の人々

なのかもしれない。

その証拠に、働かないことを肯定する僕のブログに最も批判的なのは、一部の支援者と元ひきこもりだったりする。彼女ら彼らに染み込んだ規範性を批判するつもりはないにしろ、古臭くなった「働くことを善とする社会システム」を支えるのは、就労支援の最前線にいる支援者と元当事者というのは、皮肉だ。

※Yahoo!ニュースからの転載

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