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週刊ポストの「嫌韓ヘイト」はどこが問題なのか

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「僕は今後小学館の仕事はしないことにしました」

「韓国なんて要らない」

『週刊ポスト』(9/13号)が、こうタイトルを付けた巻頭特集が激しい批判を浴びている。

武田砂鉄は、<「週刊ポスト」広告。これでいいのか、と疑問視する人は、編集部にいないのだろうか>とツイート。

柳美里も<日本で暮らす韓国・朝鮮籍の子どもたち、日本国籍を有しているが朝鮮半島にルーツを持つ人たちが、この新聞広告を目にして何を感じるか、想像してみなかったのだろうか? 想像出来ても、少数だから売れ行きには響かないと考えたのか? 売れれば、いいのか、何をしても。>と書いた。

内田樹は小学館に対して断筆宣言した。

<この雑誌に自分の名前を掲げて文章を寄せた人は、この雑誌が目指す未来の実現に賛同しているとみなされることを覚悟した方がいいです。というわけで僕は今後小学館の仕事はしないことにしました。幻冬舎に続いて二つ目。こんな日本では、これから先「仕事をしない出版社」がどんどん増えると思いますけど、いいんです。俗情に阿らないと財政的に立ち行かないという出版社なんかとは縁が切れても。>

東京新聞と毎日新聞は9月4日付の社説で批判した。

「この特集を受け、ネット上に韓国への過激な書き込みが広がっている。ポスト誌は謝罪談話を出したが、真の謝罪とするためには、当該号の回収も検討すべきだ」(東京新聞)

「日韓対立の時流に乗れば、何を書いても許されると考えたのだろうか」(毎日新聞)

「謝罪になってない」「回収しろ」という声も

昨秋、自民党の杉田水脈(みお)衆院議員が同性カップルを念頭に「生産性がない」などと主張した文章を掲載して激しい批判を浴び、廃刊に追い込まれた『新潮45』(新潮社)の二の舞かと思われるほどの騒ぎに、恐れをなしたのだろう。ポストは早速、こういう文書を出した。

<週刊ポスト9月13日号掲載の特集『韓国なんて要らない!』は、混迷する日韓関係について様々な観点からシミュレーションしたものですが、多くのご意見、ご批判をいただきました。なかでも、『怒りを抑えられない「韓国人という病理」』記事に関しては、韓国で発表・報道された論文を基にしたものとはいえ、誤解を広めかねず、配慮に欠けておりました。お詫びするとともに、他のご意見と合わせ、真摯に受け止めて参ります。(『週刊ポスト』編集部)>

これに対しても、「謝罪になってない」「回収しろ」という声が上がっている。

テレビでも『モーニングショー』(テレビ朝日系)などが、この問題を取り上げていたから、騒ぎを知っている人は多いと思うが、記事を読んでいない人に向けて簡単にポストの特集内容を紹介したい。

日本の優越性をいたずらに強調するだけのお粗末さ


『週刊ポスト』2019年9月13日号の表紙

特集は2つに分かれている。第1特集の1本目は、「軍事:GSOMIA破棄でソウルが占領される」。たしかに北朝鮮との軍事境界線からソウルまでの距離は、最短距離だと30km前後しかない。だが、ここに出されている例は1950年の朝鮮戦争の時のものである。こんな古い事例を出してきてソウルが危ないとやるのは、担当編集者のお頭の構造が単純すぎるからだ。

2本目は「経済:貿易規制でサムスン、LGは大打撃」。次は、お互いが輸出規制をやっているが、損するのは韓国で、日本の工場を潤すというのだが、現在のようなグローバル経済では、二国間だけで有利不利が決まるわけではない。

3本目は「スポーツ」で、韓国が東京五輪をボイコットすれば、日本のメダルが増えるというものだが、論評以前の内容である。4本目は「観光」で、韓国人旅行者が減っているが、中国の観光客が増えるし、元々韓国人はカネを落とさないから日本は困らないと、子どもが虚勢を張っているとしか思えないもの。このような幼稚な論法で、日本の優越性をいたずらに強調するだけのお粗末な特集である。

第2特集が<怒りを抑えられない「韓国人という病理」>で、韓国人の10人に1人は「憤怒調節障害」で、治療が必要という内容。要はすぐカッとなる民族だから気をつけろ、これが「韓国人という病理」だとしているのである。

一応、「韓国人の誰もがそうした言動を表に出すわけではないことは断っておくが」としながらも、「歪な社会構造に苦しめられる韓国国民の不幸があり、結果として抑えられない怒りの矛先が日本に向けられている可能性がある」と、現在の反日は韓国が抱えている社会構造にあり、そのはけ口として、日本へ怒りが向けられているとしている。

ポストは『月刊Hanada』の記事をパクっているだけ

たしかに、このタイトルと内容は、嫌韓ヘイトに近いものがある。だが、この根拠となっているデータは、15年に韓国の「大韓神経精神医学会」が発表したレポートだとあるから、ポストが捏造したものではない。

さらにいえば、『月刊Hanada』(4月号)に、ポストでもコメントを出している嫌韓ライター・室谷克実が「韓国成人の半分は憤怒調節障害」だと既に書いている。何のことはない、この記事の丸写しなのである。

売らんがために、本家より過激にいこうと、杉田議員の差別的な一文を掲載した『新潮45』と動機は同じだろう。ただし、ポストは本家の記事をそのままパクっているだけで、編集者としていうなら、ポストの編集力は最低である。

「小学館がこんなヘイト特集をやる雑誌を出すのはおかしい」という批判もあるようだ。しかし、小学館はつい最近まで『SAPIO』という雑誌を出し、「日本人よ、気をつけろ北朝鮮と韓国はグルだ!」などという、『月刊Hanada』や『月刊WiLL』と似た論調の記事をやっていたことを忘れてはいけない。小学館は岩波書店ではないのだ。

それなら講談社に対しても執筆拒否すべきだ

40万部を超えるベストセラーになったケント・ギルバート『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(+α新書)を出した講談社も、「講談社ともあろうものがなぜ」と批判された。

だが、かつて私も在籍していた講談社という出版社は、戦時中、陸軍や海軍と組んで膨大な戦争協力雑誌を出して大儲けした出版社である。

付け加えれば、「我が大君(おほきみ)に召されたる 命榮(は)えある朝ぼらけ」で始まる軍歌「出征兵士を送る歌」は、大日本雄辯會講談社(だいにっぽんゆうべんかいこうだんしゃ)(当時の社名)が陸軍省と提携していた九大雑誌で読者から公募したものである。

小学館に執筆拒否するという筆者たちは、戦時中の反省も十分にしていない講談社に対しても執筆拒否すべきだと、私は思うのだが。

今一つ、ポスト批判の中で気になることがある。9月5日付の朝日新聞が、ポストの問題で広告を載せた新聞の責任を問う声も上がったとして、朝日の広報部が、「出版物の広告については、表現の自由を最大限尊重しながら審査・掲載しています」と答え、広告のあり方を今後考えていくとしている。

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