記事

サッチャー首相の思い出

 ギリシャ危機で、今、世界は揺れている。ひょっとしたらEU(欧州連合)離脱かとさえ言われているが、日本にとっても対岸の火事ではなく大変な悪影響を受けること必定である。

 通貨下落、金融危機は直ちに日本に深刻な影響を与える。現に、31日の動きを見ても、円高は一段と進み、株価は下落している。

 改めてEUについては書くつもりだが、元々、この欧州連合には無理があったように思えてならなかった。

 かつて、いわゆる冷戦時代、ソ連を中心とする社会主義陣営と強大なアメリカが対立し、その狭間にヨーロパがあった。そこである種の合衆国構想と言うべき発想を持ったのがかのチャーチルで、時代の変遷を経て、やがて欧州連合発足となった。

 27の主権国家が加盟しているが、国によって格差が違い過ぎるのが問題なのである。

 特にギリシャの場合、財政赤字は巨大で、債券残高は国内総生産(GDP)の113%になっている。(日本も大変だが中身が異なっている)。

 危機打開の為にEU連合内で融資や債務削減の協力をし、一方で、当然のことだがギリシャに緊縮財政など再建策を求めた。ところが国民は聞く耳を持たないといった風情で、デモやストで大騒ぎである。

 大体、この国は身の丈に合わない年金制度を持っていたり、やたら公務員を増やし続けたり、汚職が多かったり、何しろ脱税文化と言われるほどの国民性で、ろくに税金など払わなくていいというのが普通なのだ。

 巨額の借金で破産寸前というのに、痛みの伴う緊縮政策などとんでもないと「NO」を突き付けるのだから始末が悪い。

 EU連合では 、同じような問題を抱えるスペイン、ポルトガルなども控えているから、今後も容易ではない。

 そこで思い出すのが、サッチャー首相の発言である。

 実は1988年、私は中曽根元総理とヨーロッパを回ったことがあり、その時、サッチャー首相と直接会談しているのだ。

 その時のことは、家内との共著「ちょっとアメリカ、急ぎヨーロッパ」(朝日出版社)で詳細書いている。

 当時、仏や西ドイツを中心に、EU全体を統合しようという動きが活発で、目標を1992年と掲げていた。

 サッチャー首相は、なんと「欧州連合は空虚なおとぎ話で、私が生きているうちは絶対に実現することは無い」ときっぱり発言したのである。共通貨幣など考えられないとも言っていた。

 今日の混乱をすでに察知していたかのような発言で、なんと先見性に富んだ政治家かと、改めて感嘆するのである。

 サッチャー首相の祖父は靴屋さんであった。靴屋さんの子には結構成功した偉人が多く、アンデルセンもスターリンもそうである。

 私の父も戦後満州から引き揚げて来てから、にわかづくりの靴屋さんだあった。だから、なんだという訳ではないのだが・・・。

 サッチャー首相の父親は食糧雑貨店を苦労して起こし、やがて市会議員、市長に出世する。彼女はここで見よう見まねで政治家の修業を積んだのかもしれない。オックスフオード大学を卒業して、やがて選挙に出て、1度は落選するも1959年下院議員に当選する。

 凄いのは、この浪人中に結婚、出産、なんと弁護士の資格まで獲得するのである。

 ヒース内閣の時教育相になるが、やがて対立、ヒース氏を破って保守党党首になり、1979年にイギリスの首相になった。

 当時の病めるイギリスを、国民の反対を断固押し切って改革した。財政の健全化の為、歳出を抑えインフレを鎮圧し、ストの横行を阻止する為に労働法を改正したり、国営企業の民営化など次々と進めた。

 従来の惰性を排除し、はねつけて進むのだから敵も多かったが意に介さなかった。まさに「鉄の女」であった。

 彼女の求めたものは「国民に愛されなくてもいい、信頼されれば」ということではなかったか。

 語ればきりがないが、会った印象はとても優しい色白の美人で、鉄の女には見えなかった。

 中曽根元首相とサッチャー首相の横で、「ああ、これが本当の為政者の姿だ」とほれぼれと見つめたことを鮮烈に思い出している。

 今の日本には、そんな政治家は皆無だ。そう考えると何とも悲しい。

あわせて読みたい

「ギリシャ」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    逮捕されても臆することなく、取材を続けよう〜田原総一朗インタビュー

    田原総一朗

    07月28日 08:07

  2. 2

    コロナ対策は菅内閣にも直結 東京の新規感染者数が5000人超えなら菅内閣はもたない

    田原総一朗

    07月28日 14:43

  3. 3

    東京3000人は五輪強行開催によるモラル崩壊の証。もう誰も自粛しない

    かさこ

    07月28日 08:46

  4. 4

    ロッキンは中止する必要があったのか?〜7 /8の議院運営委員会で西村大臣に質疑を行いました〜

    山田太郎

    07月28日 09:58

  5. 5

    「きれいごとだけでは稼げない」週刊文春が不倫報道をやめない本当の理由

    PRESIDENT Online

    07月28日 12:30

  6. 6

    酷暑下の札幌五輪マラソン 市民の冷ややかな声も少なくない

    NEWSポストセブン

    07月27日 09:36

  7. 7

    中国、ロシア製ワクチンと立憲民主と共産党 まあ少し可哀想ではあるけど、ブレインが悪いのとセンスがないというだけ

    中村ゆきつぐ

    07月27日 08:26

  8. 8

    上司も部下も知っておきたい 「1on1」を機能させるためのコツ

    ミナベトモミ

    07月28日 12:00

  9. 9

    立憲民主党・本多平直議員は「詰腹」を切らされたのか?近代政党のガバナンスにおける危機感

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    07月28日 09:53

  10. 10

    森喜朗元首相の「名誉最高顧問」就任案 五輪組織委員会の異常な優遇に疑問

    マガジン9

    07月28日 14:35

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。