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【米中デカップリングで鉄のカーテン】

米中貿易摩擦に株式市場も企業も振り回されっぱなしですが、アメリカがサプライチェインで中国をデカップリングしようとしているという報道が相次いでいます。

貿易摩擦の本質は覇権を巡る米中の対立だという方向性は一致していますが、リベラルなメディアは「対中関税の上乗せはアメリカ経済の重しになる」と批判的な一方で、保守系メディアは「短期の経済問題ではなく安全保障問題として考えればトランプ大統領の対応は当然」というトーンです。

CNBCはTariffs are no longer China’s biggest problem in the trade war(中国とって対米易摩擦最大の問題は関税ではない)の中で来月、米中の貿易交渉が再開されるという発表により、金融市場に楽観的な空気が広がったものの、特に事情は変わっておらず、あえて言えば米グーグルがスマホの生産を中国からベトナムに、AIスピーカーを中国からタイに移転すると報じられたことだと伝えています。

一方、こうした中国とのデカップリングが進んだとしても決してアメリカ経済に得ではなく雇用がアメリカに回帰するわけではないと釘を刺しています。

New York Timesは、9月1日に米中が互いに報復関税をかけたことを踏まえて多くのアメリカ企業が慌てて中国から生産拠点を移転させていると報じています。

トランプ大統領は中国との貿易戦争に踏み切った当初、目的について「中国でビジネスを展開するアメリカ企業を取り巻く環境を改善し、対中貿易赤字を縮小させ、中国企業のライバルとなっているアメリカ企業に公平な競争環境を整えることだ」と述べました。

さらに「歴史的な貿易交渉を妥結できればアメリカの農産品を巨大な中国市場に輸出し、アメリカ企業の技術を盗まれないようになる」と話していました。

しかし交渉が進まず、この20年で相互依存を強めて来た米中の企業のデカップリングを主張するようになったと指摘。この対立の解消には中国が譲歩するか、大統領選挙の前に景気後退が明らかになる以外にない。けれども、それは現段階では考えにくいということです。

Foreign Policyは、中国通で知られるポールソン元財務長官(ブッシュ共和党政権時)の見方としてトランプ大統領が中国に対して「経済的な鉄のカーテン(economic iron curtain)」を設けようとしていると伝えています。

アメリカにとって、中国は安全保障上の敵国であり、ファーウェイの5G技術の受け入れを拒否するなど冷戦時代さながらの議論がトランプ政権内でされていることが背景です。

しかしながら、ファーウェイの技術を使いたいという同盟国が相次いでいるように多くの国が鉄のカーテンの中国側も大事だと思っていて、トランプ大統領もいずれそのことに気づかざるを得ないだろうと解説しています。

保守系のNational Review対中関税の上乗せはアメリカの消費者にとって短期の痛みを伴うかもしれないが、アメリカの脅威に対峙するには代償は小さいと報じています。

トランプ大統領が就任した当初、関税は3.1%だったが、このままでは30%まで引き上げられ、アメリカの消費者の負担が増えると指摘されているが、「中国の成長戦略はアメリカに直接の脅威になる」として貿易戦争の本来の目的はアメリカ企業による中国の台頭の後押しを阻止することだといいます。

中国の台頭は不可避かもしれないが、その危険性を考えればアメリカはリスク縮小を選択することもできる」と指摘。

さらに関税の対象を衣類ではなく、AIや通信、エネルギーなど「中国製造2025(Made in China 2025)」の対象品目にするべきだと主張。トランプ大統領の最大の失敗は、「貿易戦争地政学の問題として説明せずに、貿易赤字の縮小に矮小化させたことだ」としています。

WSJは、トランプ大統領の対中強硬姿勢に対して与党共和党のみならず野党民主党も拍手喝采を送っていて、技術の強制移転など中国の強硬姿勢が背景にあるということです。

「過去に中国を受け入れる方向に振り子が極端に振れたとすれば、今回は対立方向に振れ過ぎているかもしれない」と総括しています。

中国に詳しい米ポールソン元財務長官は「(アメリカには)中国に対する偉そうな態度はあるが、政策はない(We have a China attitude, not a China policy)」と話していたということで、バランスを取るために風に逆らう人がいないことを不安視しています。

多くの中国専門家は中国が経済や政治の自由化が後退したことは認めつつ、だからと言って中国のシステムが西側諸国と根本的に相容れないわけではないと見ているということです。

ポールソン元財務長官が「中国を敵国として扱えば実際にそうなるかも」と述べているとして、アメリカが中国との衝突が不可避で、ゆえにデカップリングが必要だと判断すれば、衝突の可能性が高まるという見方を紹介しています。

かつての政権の中国受け入れ政策でも、現政権がやろうとしている中国デカップリング政策でない適切な中国との付き合い方は何か?アメリカの専門家は共通の目標のために同盟国の協力を得ることだと指摘していると言います。

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