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この気象が、いつかライフスタイルを変えてくれるのか?

台風15号が、関東を直撃した。

ここ数年、この季節には、全国あちこちで「異常」という形容詞の付く雨風絡みの災害が発生しているし、首都圏も決してその例外ではなかったはずだけど、いきなり「千葉県に上陸」となると、やはりただ事ではないわけで、予報で想定されていたとおりの進路、想定されていたとおりの規模だったにもかかわらず、ほとんど成す術なく、様々な生活の基幹インフラが、見事にまでの混乱に陥ることになってしまった。

自分の場合、今も昔も、「いざという時は這ってでも行ける」ことを条件に、職場に合わせて住処を & 住処に合わせて仕事場を決めているので、通勤する立場でこういう場面での本当の大変さを味わったことはほとんどない*1

ただ、いつも思っていたのは、こういう時に「ほとんどの人々が平時と同じように動こうとする」ことが、果たして良いことなのだろうか?ということ。

この点に関しては、自分も他人のことは言いにくいところがあって、台風接近とか豪雨・豪雪の「おそれがある」というだけで大事な打ち合わせを延期したり、会議を中止にしたり、ということに対しては非常に抵抗があったし、”早めに退社せよ”という勧告にすらイライラしていたタチではあったので*2、金曜日の時点で「月曜日は休みにしよう」と言われたら、たぶん一言二言、文句を言った可能性はある。

だが、さすがに昨晩から今朝にかけての状況を見たら、即座の判断で、不要不急の用事がない限りは「これはもう今日は(午前中or終日)予定キャンセル」とするのが本来の姿だと思うし、それだけに、駅に入ることすら制限されるような人だかりができているのを見ると複雑な思いに駆られるわけで・・・。

巷では、「午前8時」という中途半端な時間に運行開始を予告していた鉄道各社が悪い*3、という声がある一方で、「こんな時に会社に行こうと押し寄せる方が悪い」という声もあって、むしろ後者の方が悪者になっている感すらあるのだけど、今の日本の会社の就業スタイルは、「特別な事情がなければ職場に行く」というのがデフォルトになっているから、その日に大事な予定が入っていようがいまいが、台風が去り、交通機関も(一応遅めの時間からだけど)動く、と予告されてしまっている以上、職場に行く姿勢だけは示さざるを得ない。

また、仮に「場合によっては休んでもいいよ。」という優しい言葉を上司からかけてもらっていたとしても、その選択が「個々人の状況判断」に委ねられている限り(会社全体で「休日」を振り替える等の荒技を使わない限り)、「貴重な有給休暇が一日失われる」結果になるし、加えて「根性で出社してきた同僚・後輩に裏で何か言われるかも・・・」といった「集団の中の善良な日本人の心理」にも悩まされることになるから、素直にお言葉に甘えることは難しい、という人が多いのではなかろうか。

だから、今の世の中の感覚を前提とするなら、今日も必死で職場に向かった人たちをDisる気分には到底なれないし、むしろ「それでこそ日本人スピリッツ!」と讃えないといけないのだけど、それがこの先もずっと求められることなのか?といえば、それは全く別の話。

8月の終わり頃のエントリーでも書いたとおり、世界中で生じている気候変動は、日本をも容赦なく襲っているわけで、今回のような激烈な風雨が首都圏に訪れることも、そう遠くないうちに日常茶飯事になるだろう、というのが自分の見立て。台風や爆弾低気圧に起因する雨風だけでなく、高温、竜巻、豪雪等々、この先天がもたらす可能性のある突発的事象は他にも山ほどある。

だとしたら・・・


いっそのこと、原則と例外を逆にしてしまったらよいのではないだろうか。

職場に行くことが義務付けられるのは、「どうしても職場にいないと(全員で顔を突き合わせていないと)できない」ことがある日だけ、そうでない時は、自宅でも家の近所でもどこで仕事をしていてもかまわない。もちろんリモートワークにはそれ相応の不便さもあるので、「職場に出て仕事をしたい」という人がいればそれは自由だけど・・・という感じで。

工場や諸々の現場で作業をする人から、各種サービス業、店舗等での接客業に至るまで、世の中には「必ずそこにいないといけない」というカテゴリーで仕事をしている人が一定割合存在するし、そういった人々は、平時はもちろん今日みたいな日でも職場に駆け付けることが求められる。

だが、これだけITインフラ、通信インフラが発展した現代において、日頃自分たちのオフィスの中で仕事をしている人々の「常に職場に行く」「常に職場にいる」ニーズはそこまで高くないはずだし、それでいて、そういった層の人々が、慢性的な混雑で限界に達しつつある首都圏公共交通インフラとか、オフィス街のカフェや飲食店の数少ない座席だとか、その他諸々のリソースを食ってしまっているのだとしたら、それは決して歓迎されるべきことではないはず。

そして少なくとも、今日のような時だけでも、オフィスワーカーの人々が「誰にも気兼ねせず」職場に行くことを自重できるような環境が整っていたら、あの不毛な人だかり、不毛な混乱は生じなかったはずである。

もちろん、「皆が毎日職場に行く」というのは、この国に長年染みついた文化だから、誰かが旗を振ったところで、そう簡単に頭を切り替えることができる話ではないと思っているし、それこそ「異常」気象が「日常」になる、という事態でも生じない限り、雨が降ろうが風が吹こうが、職場に向かう人波を止めることは難しいのかもしれない*4

ただ、広がりそうで広がり切っていなかった「クールビズ」が、東日本大震災後、節電に迫られる中で一気に世の中の「スタンダード」となったように、ちょっとしたきっかけで「毎日リモートワーク」になる可能性だってある、と自分は思っている。

そして、できることならそのきっかけが、悲惨な災害ではなく、来年の「平和の祭典」*6、と、ひそかに願っているのである。

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*1:学生の時も「通学1分」とか、「雨が降っただけで休む」ような生活をしていたものだから、下手すると高校生の頃まで遡る話になってしまうかも・・・。もちろん、出張の際に混乱に巻き込まれた、といった話は結構あるのだけど。

*2:「明日何が起きるか分からないから、今日できることは今日のうちにやってしまいたい」というのが非常に強い性分なのである・・・。

*3:しかも、被害が想定以上に大きかった、ということなのか、一部の線区ではそれに合わせた運転再開もままならず、より混乱を増幅させる結果となってしまった。

*4:自分も仕事の環境が変わるまでは、何となく慣性と惰性で「職場に行くことが大事」と思っていたところはあったのだけど、変わってしまうと逆に「どこででも仕事ができる」快適さから抜け出せない・・・。

*5:これも巻き込まれる首都圏民としては、ある意味「災禍」なのかもしれないが・・・。

*6:実際、期間中は、首都圏にオフィスを持つ会社の社員には在宅勤務を「させる」方向で関係機関も動いている(どこまで実効性があるかはともかく)ようだから、その間の1週間、2週間が新たな気づきの機会になればいいんじゃないか、と思うところである。

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