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「民主の女神」拘束が裏目に 香港デモ隊に翻弄される中国共産党 - 「週刊文春」編集部

 長期化する香港のデモは、新たな段階に入った。8月30日、2014年の民主化デモ「雨傘運動」を率いた黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏(22)や周庭(アグネス・チョウ)氏(22)らがデモを扇動した罪などで拘束されたのだ。国際社会へのイメージを考慮し、著名人の拘束を控えてきた香港警察の方針転換だった。

過激化する一方の抗議デモ ©共同通信社

「黄氏らが拘束された翌日は、中国の全国人民代表大会の常務委員会が香港行政長官選挙に親中派しか出られないとした“改悪案”が決定してから、ちょうど5年目でした。この制度変更を機に雨傘運動が急拡大しましたが、今年も同日に大規模デモが予定されていました。香港当局は、象徴的な人物を捕らえてデモを封じようと考えたのでしょう」(香港メディア記者)

 拘束から数時間後、デモ主催団体が中止を発表。警察側の目的は達成されたかに見え、当局は夜間外出や海外渡航の禁止を条件に黄氏らを保釈。だがこの対応がまずかった。

 裁判所から出てきた黄氏と周氏は、集まった世界中のメディアの前で広東語のほか英語、日本語も駆使して、デモ弾圧の不当さを訴えた。特に黄氏の「中国から部隊を送り込んだり集会を規制したりしても解決に至らないことを、習近平国家主席に伝えてほしい」とのメッセージは、中国側が最も避けたいものだった。

宣伝戦では当局が完全に劣勢に

「黄氏は、かつて米タイム誌の表紙を飾ったほどの有名人。日本語が堪能で、15歳からデモ活動に参加する周氏も、『民主の女神』として知られた人物。彼らの発信力を侮っていたとしか思えません。9月2日、周氏は選挙管理委員会との裁判で勝訴し、香港の議会選挙に出馬できる可能性も出てきました」(同前)

 結局、31日も許可のない状態でデモが自然発生すると、共産党機関紙・環球時報が「黄氏、再拘束される」と大誤報。黄氏に「共産党からカネをもらっていたとしても、フェイクニュースはだめだよ」とツイートされたうえ、編集長がお詫びコメントを出す失態を演じた。宣伝戦では完全に劣勢に立たされている。

 深圳に武警を集結させて威嚇を続けるなど、香港当局を支えてきた習政権も息切れ気味だ。共産党関係者は「建国70周年の10月1日までに収束すればと期待していたが、無理だろう。批判がこちらに向かわないよう静観を決め込むしかない」と漏らす。

 自力解決を求められた香港当局は、議会の同意なしに集会や通信を制限できる「緊急状況規則条例」の発動を検討中だ。しかし、同条例は、民意の反発や経済への影響が大きい。劇薬に手を出せば事態が好転する保証は、どこにもない。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年9月12日号)

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