- 2019年09月09日 16:09
メディア経営のもう1つの選択肢、会員制で編集部はここまで意識を変えている
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メディア経営で、購読料でもなく、販売収入でもなく、「会員になってもらう」ことで収入を得て、ジャーナリズムにこれを投資する仕組みが世界各国で目に付くようになった。
読者が会員になることで、コンテンツを作る側の意識が変わり、編集作業も変革している。会員になってもらうためには、どうしたらいいのか、これがメディアの悩みの1つでもある。
ペルージャの国際ジャーナリズム祭のセッションから、具体例を紹介してみたい。
英ガーディアン紙の会員制はどうやって始まったか
アマンダ・ミッシェル(英「ガーディアン」のグローバル・ディレクター・コントリビューションズ):収入は広告の方が多かったが、3年ほど前から会員制を開始し、寄付金(コントリビューション)も合わせると、読者からの収入が広告収入を上回るようになった(4月5日のセッション「会員制モデルの人気」)。
そもそもは、ガーディアンが開催するイベントで始まった。イベントに来てくれた人には参加料を払ってもらえる。しかし、これはロンドン、あるいは英国だけだ。
読者は世界中にいるし、大規模に読者から収入を得る方法はないか、と。
まず、読者に大々的な調査を開始した。そこで分かったのは、読者はガーディアンの広告収入はどれぐらいで、寄付するとすればどれぐらいがいいのか、何に使われるのかを知りたがっていた。
このため、ウェブサイト上では記事の後に、「ジャーナリズムを支えるために」会員制あるいは寄付を募っているという文章を入れるようにした。このやり方は自然発生的にできた。
ガーディアンのウェブサイトによれば、現在、ガーディアンに何らかの形でお金を払って支援する人は約100万人(有料購読者、会員、寄付金を払う人)。3年後の2022年までに、これを200万人にする計画を立てている。
「ローカル」のスウェーデン版は

エマ・ロフグレン(スウェーデン版ローカルの編集者):ローカルは欧州に住む外国人向けのニュース媒体で、9つの国で発行されている。自分はスウェーデン版を担当しているが、英語での情報発信だ(4月4日のセッション「新しいモデル、新しいジャーナリズム:資金繰り改革は内容も変える?」)。
2年前、ローカルはもっと長期的に、かつ大きく収入を伸ばすにはどうしたらよいかと考えだした。そこで思いついたのがメンバーシップ(会員制)だった。
ローカルは英語で情報を読む人のコミュニティーに向けて作られており、そのコミュニティーと住んでいる国との橋渡し的役割を持つ。「購読料はお金の行き来だ。しかし、会員制は関係性を築くことを意味する」。
「クリック数を伸ばすことを最優先するのではなく、オーディエンスにかかわりのある問題を扱っている。オーディエンスからの意見を取り入れて、物事を決定するようにした」。
オランダ:会員と一緒に記事を作る
さらに詳しく、見てみよう。会員制で知られている、オランダの「コレスポンデント」の例だ。
ローザン・スミット(オランダの会員制ニュースサイト、コレスポンデント)編集長:オランダではすでに6万人の会員(有料購読者)がいるが、英語版でもサービスを開始し、こちらは5万人(注:本格的なサービス開始は今年秋)。会員は世界130か国にいる。90%の収入は会員からの購読料だ(4月5日のセッション「ニュースビジネスの次は何か?」)。
日々のニュースを追うのではなく、私たちの生活に重要なトピックを追う。例えば気候温暖化やプライバシー保護など。
原稿が出るまでの過程に、会員が関与する。例えば、議題を設定するのは編集長ではなく、ジャーナリスト自身。それぞれのジャーナリストが自分なりの議題を持っているので、編集部はジャーナリストに対し、どのようなことを書きたいと思っているかを細かく説明してもらう。
この時、ジャーナリストは「嘘の中立性」を持たないようにしてもらう。自分なりの世界観(例えばプライバシーだったら、プライバシー侵害に抗議するという姿勢)を読者と共有してもらう。
ジャーナリストは会員・読者に対し、なぜその特定のことを書くことにしたのかを明らかにする。このようにするのは、会員との関係を築くため。取材・執筆過程にも会員が参加できるようにするため、ジャーナリストは経過報告を出す。そこに会員がインプット。一緒に調査できるようにする。
会員が関与する動機は、「自分のインプットによって記事が変わる・人の物の見方が変わる・世界が変わる」と思うから。起きていることを批判するだけではなく、解決策も考える視点を持つ。
これまでの経営で、学んだことをリストアップしてみる。
まず、会員制とは1つの文化を作ることを意味する。
また、会員制は双方向の動きで、ジャーナリストはこれまでの取材・執筆手法を変える必要がある。
読者の方もジャーナリズムに対する期待を変える。つまり、コレスポンデントのジャーナリズムとは出来上がった記事をお金で買う、という商業行為ではなく、会員である自分たち自身も知識のプラットフォームとしてこれに参加することを意味する。ともに作る、ということである。それには会員も時間と知識をインプットする必要がある。
これを可能にするには互いの連絡をスムーズに行うソーシャルのツールが必要で、会員がどのような専門知識を持っているかを見つけ出せるようなツールも必要だ。
「対話のエディター」、「ソーシャル・エンゲージメント・エディター」など、新しい職種が生まれた。
90%の収入は会員が払うことになるが、収入と歳出の内訳をオープンにしている。会員からの支持がなければ成り立たないことを示し、経営の透明性、ひいてはメディアへの信頼性を築くための1つの方法だ。
会員は記事を非会員に贈り物として送ることができる。また、会員費はいくつかあって、選べるようになっている(払いたい分だけ、払う)。



