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日ロ首脳会談

 ウラジオストクで5日、安倍総理とロシアのプーチン大統領との首脳会談が行われました。北方4島の共同経済活動等については具体的な協議が行われたものの、領土問題の解決を含む平和条約交渉については何ら進展がありませんでした。

 私がお会いしたことのある各国首脳の中で、最も手強いと感じたのはプーチン大統領でした。柔道と秋田犬の話に限っては意気投合できましたが、いざ交渉に入ると手練手管を駆使する人物だという印象が強く残っています。安倍総理はその術中にはまってしまったのではないでしょうか。

 田中角栄政権下で旧ソ連との交渉の最前線に立ったことのある元外交官の新井弘一氏(現在は国策研究会理事長)は、対ロ外交には「3つの悪」があると指摘されています。第1は希望的観測、第2は交渉力の欠如、第3は任期中に成果を上げたいという功名心だそうです。安倍外交にもこの3つが当てはまると思います。

 まずは、相手に対する希望的観測。首脳同士が直接向き合う機会が多く、「ウラジミール」「シンゾウ」とファーストネームで呼び合える関係になることは良い事です。でも、冷徹な相手に甘い幻想を抱くことは禁物です。安倍・プーチン会談は27回も積み重ねてきましたが、現に領土問題は全く進んでいません。

 次は、交渉力の欠如です。安倍総理も河野外相も「北方領土は日本の固有の領土である」と、口にしなくなりました。一方、プーチン大統領もラブロフ外相も「第2次大戦の結果、北方領土はロシア領になった」と、公言し続けています。わが国が到底受け入れることのできない主張です。交渉に臨む立ち位置が、日本は既に後退しています。

 経済協力を次々と実現していけば、最後はロシアも領土問題で譲歩してくるだろうという安易な交渉に陥っています。領土を人質に日本から金と技術を徹底して引き出して、最後は食い逃げされるかもしれません。

 最後に、任期中に成果を上げたいという功名心です。「戦後外交の総決算」を掲げる安倍総理は、「私とプーチン大統領との信頼関係の上に、領土問題を解決し平和条約を締結する」と、明言しています。2021年9月で任期が切れる安倍総理はレガシーづくりに前のめりになっていますが、2024年まで任期のあるプーチン大統領は焦る安倍総理の足もとを見透かしています。

 首脳会談が開催された9月5日、プーチン大統領は色丹島に完成した水産加工工場とビデオ中継を結び、稼働を祝う式典に参加しました。首脳会談の直前に島のロシア化を強調し、揺さぶりをかける狙いだったのでしょう。

 以上、権謀術数にたけたプーチン大統領に視野狭窄に陥った安倍総理が、完全に手玉にとられているように見えてきました。対ロ交渉については戦略的に再検討すべきではないでしょうか。むしろ、プーチン後の時代をにらんだほうが賢明だと思います。

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