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日本の経済金融政策の幻想

日本の金融政策が効果を発揮しない。それどころか、底なし沼に足を踏み入れたかのように、金利水準がジワジワと低下し、40年国債でもほぼゼロ%になってしまった。2000年以降、日本の金融政策が効果を発揮しない理由はどこにあるのか。とくと考え直すべきだろう。

僕自身、じっくりと金融政策のことだけ考えているわけではない。時々暇な時に考えるだけだが、いくつかの複合要因により、従来型の金融政策が機能しなくなっているのではないかと思っている。

以下、経済と金融政策をからめたメモである。

1つに、日本社会が老齢化問題をかかえ、経済に力がないことである。高齢化という現象だけを取り上げると、消費需要が不足気味になり、しかも年々減少していく。これは構造的な物価の下げ要因になる。

2つに、1で指摘したように、国内の需要が下手をすれば減少するから、その需要を当て込んだ企業の設備投資意欲も弱くなる。国内の需要不足が上乗せされる。

3つに、国内の需要全体が減少する可能性が高いのに(実際も多くの製品やサービスで需要減少が見られるのに)、多くの既存の国内設備が稼働を続けている。政府が企業の淘汰と新陳代謝を促さないどころか、弱った企業の救済を試みている。需要が減少気味なのに、既存の設備が生み出す供給がなかなか減らない。だから、受給のバランスが崩れる。結局のところ、(潜在的な)供給過多から、物価の下落圧力が続いてしまう。

4つに、全般的に日本企業の国際的な競争力が低下している。家電に代表されるように、かつての強い日本企業の姿がない。既存の設備を用いて生産したとして、国内に需要がないのなら余りを輸出に回そうとしても、それがかつてのように容易ではない。これも物価巣の下落圧力となる。

5つに、逆に海外からの供給圧力が強い。メイドイン日本でなくても、大抵の製品にはそれなりの品質が保持されている。これらの海外の製品は、特定のブランドを除き、大量生産に基づいて安く供給される。むしろ、日本企業の製品を打ち負かすから、日本企業の既存の設備が作り出す製品に下落圧力がかかる。

6つに、アマゾンのような新しい供給網が作り出された影響である。この点は新聞紙上などで時々指摘される。個人的な体験ながら、よく飲むビールの調達だが、近くの安売り店(やまや)よりも、アマゾンで買うほうが安い場合が目立ち始めた。配送料込みでの比較だから、何で近くの店に重い商品を買いに行くのか、(運動のためという以外)理由がなくなりつつある。

7つに、以上の3から6の裏返しだが、日本政府の企業政策が間違っているのではないか。企業が淘汰されて、ゾンビ的設備が廃棄されなければならない。そうすれば、若い企業と設備が生まれ、国際的な競争力が高まり、国内と海外の供給を調整できるようになり、物価の下落要因が軽減される。この政策のためには、古い企業から解雇された雇用者の就業を確保する必要がある。つまり、労働市場の抜本的改革も求められる。

8つに、上記7の雇用者の側面の補強だが、高齢化によって日本の人口が減り、若くて適応力のある労働者人口が減るのであれば、その労働者を発展性のある企業や産業分野に配置しないことには、日本全体が沈んでいく。それなのに、既存の古い企業を維持しようとする現在の政策は、その企業にとっては大変あり難いながら、日本全体としてはナンセンスでしかない。

9つに、上記3の繰り返しながら、現在の地方銀行の問題も、かつての人口が増加していた時代の金融機関政策を踏襲しようとの愚策でしかない。政府として、地銀、信用金庫、信用組合、農協、郵便局、それにくわえてメガ銀行がいるという、何という銀行の多さだろうかと反省しなければならない。金融機関の経営問題は、マイナス金利というよりも、もっと構造的な問題である。

10に、日銀自身の問題である。ゼロ金利、マイナス金利を続けることは愚策でしかない。企業を淘汰し、新しい革新的な企業を生み出し、日本経済を活性化するという、本来あるべき経済政策に対してソッポを向いている。金利水準を限界以上に下げてしまったことにより、淘汰されるべき企業をゾンビと化し、革新的な企業の登場を阻害している。

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