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「いかがだったでしょうか」さん、今しか書けないこと、書いてますか。

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 インターネットを誰もが利用するようになって、ブログやSNSや動画でいろんな人が情報発信するようになった。文章を、フレーズを、コンテンツを配信するようになった。それはそれで結構なことだと思う。
 
 さて、二十年ほどインターネットに文章を書き続けていると、気づかされることがある。
 
 それは、「その年の自分には書けても、5年後の自分には決して書けない文章がある」ということだ。
 
 たとえば、私は2006年にこんなことをブログ記事に書いている。
 
これから式場の下見に行ってきますが - シロクマの屑籠

 とはいえ結婚などという難儀な選択肢を選ぶことも、結局は漏れ出る諸執着に由来するわけで、その限りにおいて落胆や絶望の萌芽から逃げきれません。一方、僕は自分が凡庸な人間である、少なくとも凡庸な人間とそう変わらない行動遺伝学的特徴を持った雄であると推定しているので、凡庸な人生の諸先輩が創りあげてきた世間智から大きく外れないほうが執着の制御が容易なのだろう、とは推定しています。少なくとも僕の場合、結婚せず家族も持たずに生きていくことは、それはそれで(おそらく五十代以降に)相応の渇望を惹起すると予測されるので、結婚という名のコストとリスクを払ってでもその渇望を回避出来やしないか、という企みが結婚には含まれています。

 これは、あるブロガーさんへの返答として書いたものだが、こんな内容は結婚直前でなければ絶対に書けないし、こんな漢字だらけの文章に仕上げることは今ではあり得ない。ゆえに、現在の私には貴重なアーカイブになっている。
 
 ブログ記事の集合形とも言える以下の本にも、同じことが言える。
 

「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?

 
 この本には、40歳~41歳の私が考えていた「年の取り方」についてのアイデアが詰まっている。30代の頃の私はもちろん、現在の私も、ここに書いてあるアイデアのとおりには考えない。率直に言って、この本を今読み返すと気恥ずかしくて仕方がない。
 
 ただ、いずれ気恥ずかしくなるだろうという予感は書いていた頃にもあって、私は後書きに以下のようなことを書いていた。  

 私はこの本に43歳時点の、嘘偽りのない気持ちを書き綴りました。ということは、50代の私からみれば、相当に青臭くて、肩に力の入ったことを書いている可能性が高いと想像されます。ちょうど30歳の頃の私の文章を、私がいま読むと苦笑せずにはいられないのと同じように。この本は、10年後の私から見て、黒歴史として記録されることでしょう。私は今、すごく恥ずかしいことをやっているのです。

 いやー、ネットスラングでいう黒歴史としか言いようが無い。それだけに、あの時期に書いておいて本当に良かったと思っているし、この本は40~41歳の頃の私を忠実に念写したアーカイブとして価値がある。
 
 「年を取れば取るほど、書けば書くほど書けることが増える」というのは、知識やテクニックの点ではそのとおりかもしれない。しかし文章は知識やテクニックだけで紡がれるわけでなく、自意識、年齢、境遇が色濃くにじみ出るものなので、その時にしか書けない文章・今しか書けない文章というのもやはり存在する。

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