- 2019年09月08日 11:15
女性外交官に聞く"世界で働くため必要なこと"
1/2各国から政治や交流を担うために日本に派遣されている女性外交官たち。さまざまな国に駐在し、世界を飛び回る彼女たちが考える“働くこと”とは? 自身の子育てや、日本の魅力についても語ってくれました。
フランス留学が、世界への扉を開いた

在日米国大使館 広報・文化交流担当公使 キャロリン・グラスマンさん
アメリカの外にほとんど出たことのなかった私を変えたのは、大学生のときの、フランスに1年間留学した経験でした。住み込みでベビーシッターをしながら、日中は学校に通いましたが、まさに世界は広いことを実感し、「いつかは海外に出て、世の中に変化を起こす仕事をしたい」と強く思ったのです。
その後、さまざまな経験をして、最終的に外交官という仕事に就いたのはその原体験があったからだと思います。今は、広報・外交全般を統括していますが、メディア、教育、文化、スポーツなどから海外投資や安全保障まで外に向けて発信するため、多様な知識を求められます。こうして常に学び続けられる仕事を魅力的に感じますし、退屈な日なんて一日もない。大使館で一番楽しい仕事だと自負しています。
3人の乳幼児を抱え、夫が仕事を辞めて来日
私が最初に日本に来たのは20年ほど前。外交官として初めて赴任した国でした。1997年1月に第1子を出産し、3月には乳飲み子を抱えて来日。しかもその次の週末には京都での会議を控えていて、それはもう「タイヘン」でした。その2年後には双子の男の子を出産し、3歳以下の子どもを3人抱えての日本での生活はめまぐるしかった。それでも、滞在中は家族や同僚、シッターなど多方面から手助けを得ることができたのは幸運でした。
特に夫は、私の日本行きが決まったとき、仕事を辞めて一緒に日本に来る決断をしてくれたのです。「もしこれがあなたにとって良策でないなら、私がアメリカに残ってほかの仕事を探してもいい」と話すと、夫は「人生は1度しかないから、行ってみよう! ダメならやり直せばいい」と背中を押してくれました。彼は日本で仕事を再開したのですが、子どものお迎えなどで早く帰ると、同僚から嫌みを言われたこともあったそうです。それでも夫は強く乗り越えてくれました。
休みになると私が長男、夫が双子を背負って、日本の美しい山々にハイキングに出かけました。それから20年経ち街並みは多少変わりましたが、私が大好きな日本の自然や文化、美しさはそのままです。
年代を超えて夢を語る、日本の女性のパワー
一方で、働く女性の環境は、大きく変わってきましたね。20年前は少しずつムーブメントが起きてきたのを感じていましたが、今は幅広い年代の女性たちが活動的になっているのを感じます。日本の女性たちが新しい挑戦に積極的に向かっているのを感じてワクワクします。そして、男性たちが女性活躍についてよく語るのを聞きます。政治でも家庭でも何かを変えるには、男女両方の力が必要です。

仕事と子育てのバランスを取るのは誰にとっても簡単ではありません。私もアメリカにいるときは、子育ても家事も仕事も自分でやり、手いっぱいな毎日。深夜1時、2時まで仕事をし、翌朝6時に出社した日もあった。だから自分がいいロールモデルだとは思っていません。
でも、子どもの頃からボランティア活動に参加し、学生時代も男女の権利平等などの運動に参与してきた経験からも、「自分の意見は、きちんと人に伝えていかなければいけない」という思いがありました。
今、若い女性たちの相談に乗るときには必ず「あなたの言葉は価値のあるものよ」と伝えています。日本もアメリカも、まだまだ男女の権利は平等とは言えませんが、だからこそ諦めないで声に出していきましょう。私はとてもポジティブに考えています。これからみんなが仕事でも家庭でももっと充実した日々が送れるように、世の中を変えていきましょう。
▼アメリカは、こんな国●面積:962.8万㎢(日本の約25倍)●人口:3億2775万人●首都:ワシントンD.C.●政体:大統領制、連邦制●女性の就労率:56.8%(男性:69.2%)
※アメリカ労働省(2016年)。16歳以上の就労率統計。
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