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試しに事故物件に住んで後悔した「眠れぬ恐怖」

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家を探すときに敬遠しがちな事故物件は、本当に危ないのだろうか。幽霊やオカルトを信じない男が、実態を調査するために住んでみた東京・池袋にほど近い事故物件での恐怖体験を語った——。(第1回、全4回)

※本稿は、建部博『一家心中があった春日部の4DKに家族全員で暮らす』(鉄人社)の一部を再編集したものです。


※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pkanchana

入社早々、幽霊マンションの連載担当に

「お前、怖いもんは別にないって言ってたな」

そもそもは2008年末、鉄人社の入社試験のときから始まっていたようだ。その日、大学中退のヤツなんかが受かるはずないと半ばあきらめつつ面接に訪れたオレに、編集長・佐藤が聞いてきた。

「ところでどうでもいいんだけどさ、キミは何か怖いもんってある?」

何が聞きたいのかよくわからなかったオレは、「別にないっすね」と即答した。後で聞けば、そのとき最終候補として残っていた人間がもう1人いたらしい。慶応卒の彼は、経歴も人となりも申し分ない、まさにエリートと呼べる逸材だったが、先の質問には「わりと怖がりのほうです」と答えたそうだ。

採用されたのはオレのほうだった。むろん、どこをどう評価されたのか、その時点のオレは知らない。ようやく面接の意図がわかったのは、入社後の企画会議のときだ。

「お前、怖いもんは別にないって言ってたな」
「はい」
「んじゃ、ちょいと幽霊マンションに住んで、何が起きるか連載しろよ」

うなずかないわけにはいかなかった。ここで拒否れば、オレは面接で虚偽の返答をしたことになる。逆に言えば、いま拒めなくするために、佐藤は面接でそれとなく質問してきたのだ。

ただこの提案、オレにとっては渡りに舟でもあった。埼玉の実家から通勤するのは少々億劫(おっくう)だと思っていたのだ。それにオレは幽霊とかオカルトの類はいっさい信じないタチだから、正直そんなに怖くもない。

二つ返事で了承し、すぐに幽霊物件探しが始まった。

池袋まで一駅なのに家賃4万円台

都内の不動産屋をめぐること数軒、それらしき物件は3部屋だけ見つかった。

①若者がウツ病になって自殺したマンション(武蔵小金井)
②女性2人が立て続けに洗面所で手首を切って自殺したマンション(豊島区・千川)
③入居者が4人連続で夜中にうなされ退去したマンション(豊島区・要町)

さて、どこに住むべきなのだろう。エピソードだけなら②がエグイのだが、自殺があったからといって、この後オレが住んだときに怪奇現象が起きるとは限らない。①然りだ。となると残るは③。この物件に関して不動産屋は、

「自殺などの事実はないですよ。ただ、入居した皆さんが言われるのは、うなされて寝れないとのことです」と言うのみだ。

原因はわからないが、何故かうなされる部屋。ちょっとおもしろいかもしれない。ひとまず内見に向かうとしよう。

有楽町線・要町駅から徒歩4分の場所に、その物件「豊島マンション(仮名)」はあった。

外観は至って普通のマンションだが、今回見にきた205号室だけが相場より2、3万円ほど安い4万円台となっている。言うまでもない、入居者が決まらないためだ。


筆者が入居したマンション(豊島区・要町)の部屋の間取り図 - 画像提供=鉄人社

カンカンと鉄製の外階段を上り、いざ部屋に。流しとユニットバスの付いた、5畳程度のワンルームだ。リフォームを終えた壁は真っ白で、窓は南向き。清潔感にあふれている。

窓の外は静かな住宅街で、スズメの鳴き声がするだけだ。不動産屋も、近くにうるさい住人がいるわけではないと説明する。

(この部屋にしよっかな。ちゃんと眠れそうだし)

内装工事は済んだのに電気カバーが割れている

晴れて契約を交わしたオレは、引っ越しの日を迎えた。友人に車を出してもらい、実家で荷物を積んでレッツゴー。豊島区に入って池袋を通過すれば、そろそろ要町だ。

しかし間もなくマンション付近というところで、友人が変なことを言いだした。

「あれ? おかしいなぁ」なになに? どうしたの?
「ナビが……」
「え?」
「狂っちゃってるのかな? さっきのとこ右に曲がったはずなのに」

助手席からナビの音量を上げると、無機質な声が何度も同じ文句を繰り返している。

『ルートを外れました。ルートを外れました』

入力した通りに走っているはずなのに。

「こんなこと今までなかったんだけどね」。試しにいったん要町を出ると、ナビは正常に作動した。

「やっぱりマンション付近がダメみたいだな。とにかく向かおうか」

なんとかマンションに到着し、荷物をそそくさと運び入れ終えたころには外が暗くなってきた。電気を点けようか。


内装工事後になぜか割れていた蛍光灯のカバー - 写真提供=鉄人社

ん? おいおい、蛍光灯のカバーが割れてるじゃねーか!

「内装業者がやっちゃったんじゃない?」友人はそう言うが、この部屋、オレが内見にくる数日前に、内装工事や清掃はすべて終わっていた。しかも内見当日に契約する旨を伝えたので、それ以降の侵入者がいるはずない。

念のためその場で管理会社に電話をしたが、やはりオレの後には誰も立ち入っていないという。荷物をぶつけたのかな。

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