- 2019年09月08日 09:15
「すぐ殴られる」国士舘高剣道部のスクハラ体質
3/3■「殴ったところを見たことがございますか」
これらの発言からは、大学で剣道を辞めると言ったAさんにハラスメントを行ったことを、悪いとは思っていないように受け取れる。さらに、他の部員への体罰に関しては認めたものの、「コツン」「パチン」という形容詞を使いながら「軽くたたいた程度だった」と説明した。
説明会でAさんの父親は「加害者になった方を擁護する言葉をなぜ私に聞かせるのですか。言葉の暴力ですよ。体罰ですよ。熱い思いがあったら許されるんですか」と発言した。すると、同席していた元校長の相談役が、突然、こう問いただした。
「非常にあいまいなものが飛び交っているように私には思えるんですね。じゃあ誰が見て、誰がやられたのか。お母さん方は見ましたか。先生がどこかの遠征に行って、殴ったところを見たことがございますか。蹴ったところを見たことがございますか」
保護者らは監督の退任を再度求めたが、校長は「監督が反省すれば、予定通り半年間で監督に戻す」と述べ、反省しているかどうかの判断は学校側が行うとした。
■生徒よりも教員を守ろうとする学校の姿勢
Aさんは監督が謹慎となった7月以降、学校と寮に戻り、剣道部にも復帰している。だが、問題が解決したわけではない。説明会では監督退任の要望が聞き入れられなかったばかりか、具体的な再発防止策も示されなかった。Aさんの父親は、生徒よりも教員を守ろうとする学校の姿勢に憤りを感じている。
「校長は最初は息子のことを心配されていたのですが、だんだん監督を守るような言動に変わっていきました。処分の体裁だけとって、この問題を静かに終わらせようとしているように感じます。
説明会にいたっては、悔しさとつらさしかありません。本当にふざけた説明会だと思います。『体罰を見たことがあるのか』とおっしゃっていましたが、われわれは子どもを学校と寮に預けていて、見えないところでやられているのです。
とにかく監督を戻してほしくない思いに変わりはありません。これまでの実態を聞いても監督のやり方が陰湿で、時がたてばまた同じことをやると思います。息子は保護した時、本当に大変な状態でした。大きな事故が起きてからでは遅いのです」
■寮では一緒に生活していて、監督の私用にも使われる
他の保護者も、高校になって剣道が嫌になる生徒が多いと話す。
「保護者として頭にくるのは、親元を離れて中学から寮に入って稽古に励んでいるのに、高校になると嫌になって卒業していく生徒が多いのが、いまの国士舘高校剣道部です。寮では監督も一緒に生活していて、監督の私用にも使われ、休まる時間もないと聞いています。監督を退任させるかどうかに子どもの一生がかかっていると思っています」
全日本剣道連盟は去年、居合道の称号段位審査をめぐる金銭授受の慣行が明らかになったことや、他のスポーツ団体でハラスメントなどの問題が起きていることなどを受け、11月に「倫理に関するガイドライン」を制定した。
その内容は、身体的・精神的暴力行為や、セクシャルハラスメント、薬物の乱用などを禁止するものだ。特に、指導者に対しては「選手、剣道を学ぶもの等への指導の際、暴力、パワー・ハラスメント行為と受け取られるような行いには十分留意すること」を求めている。
■学校側「ハラスメントの事実はなく、受け止め方の相違」
筆者は、Aさんの書いた記録を読み、複数の保護者に取材したうえで、国士舘高校にAさんへのハラスメントについて質問した。ところが、学校側の回答は「ハラスメントの事実はなく、受け止め方の相違」というもの。剣道連盟のガイドラインを理解しているとは思えない。
「本件に関し本校として、剣道部員へのアンケート調査および指導者への聴取を行いましたが、ご質問のようなハラスメントについての事実はありませんでした。
ただし、進路について指導者の言動と部員の受け止め方に相違があり部員に対する言葉のかけ方や指導方法が適切でなかったと判断し、本校は指導者に対し、2019年12月まで謹慎としました。なお、本校の進路指導において、本学武道学科への進学を強制すること、それを容認することは一切ありません。
今回、指導者の言動と部員の受け止め方に相違が認められたことは、本校として教育・指導のあり方を根本的に見直し、改善を図っていかなければならないことと受け止めています」(学校法人国士舘 理事長室広報課)
この回答は、加害者である国士舘高校が「受け止め方の相違」をもちだして、ハラスメントを否定するものだ。保護者への説明会では、ハラスメントや体罰を認めていたにも関わらず、対外的には「事実はありませんでした」と回答するのは、誠実な態度だろうか。
Aさんの父親は7月、「国士舘キャンパス・ハラスメント防止対策委員会」に再調査を申し立てたが、委員会は7月末に「再調査や再審査をしない」との結論を出した。保護者は現在、警察に被害届を提出することも検討している。
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ジャーナリスト
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。
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(ジャーナリスト 田中 圭太郎)
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