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学費年間500万円の英名門イートン校、日本からはセレブの象徴として人気集めるも国内では「特権階級の学校」のイメージ払しょくに苦心

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イギリスの名門私立学校に通う日本人学生も急増

制服は「黒の燕尾服にベスト」「白シャツにピンストライプ」という学校がイギリスにある。

Getty Images

イギリスの中等教育機関(日本では中高一貫校に相当)「イートン・カレッジ」(イートン校)。超名門校として世界にその名をとどろかせる。卒業生の中にはウィリアム王子、ハリー王子など王室のメンバーや、現在の英首相のボリス・ジョンソン氏を含め20人も国のトップを輩出しており、米ニュースサイト「ビジネス・インサイダー」はイートン校を「イギリス紳士の養成所」と呼んだ。ケンブリッジ大学、オックスフォード大学に進学する生徒の比率も高く、「エリート養成所」と言ってもよいだろう。

学費は年間で4万ポンド(約500万円)を超える破格の値段だが、外国富裕層の親にとって、こうしたイートン校のようなイギリスの名門私立学校「パブリックスクール」の輝きは増すばかりのようだ。

私立校の組織「インディペンデント・スクルーズ・カウンシル」の2019年度版年報によると、外国籍の生徒の割合は現在、全パブリックスクールの生徒数の5.4%とまだ少ないものの、国別では存在感の大きさが目立つ国がある。その筆頭は中国だ。香港を除く中国大陸出身の生徒は9585人(うち7708人の親は中国に住む)。これに香港出身者の総数5222人を含めると、1万4000人以上となる。

2番目はアメリカ(3,840人)で、その次はロシア(2568人)だ。ロシア人の子弟は10年前の800人から3倍以上増えている。

ちなみに、日本は1040人と、中国・香港の10分の1以下だ。日本からの生徒数は5年前の2014年版では666人、2017年版では924人、2018年版では1068人となっている。

名門校お受験への努力は幼稚園時代から

名門校入学のための「お受験」の努力は、小学校入学時から始まっている。

イギリスの教育体制はそれぞれの地方(イングランド、ウェールズ、北アイルランド、スコットランド)によって若干異なるが、初等教育の開始年齢はほとんどの地方で5歳から始まる。

日本の小学校から高校までに相当する学校では、主に公立と私立に分かれる。日本同様、公立の小学校は無試験で入れ、授業料は原則無料だ。しかし、親には複数の学校の選択肢が与えられるので、近辺にあるいくつかの小学校の中から少しでも評判の良い学校を選ぶ。

昨年、イングランド地方では10人に1人の割合で、親が最初に希望した小学校への入学はかなわなかった(BBCニュース、4月15日付)。全国的に見ると、最初の希望校に入れた比率はロンドンでは特に低く、富裕層と貧困層が隣り合わせで住むケンジントン・チェルシー地域では68%のみとなった。

以下、イングランド地方の教育を中心に説明してみたい。

中学校受験から競争が激化

「何とかしなければ」と親が本気で焦り出すのは中等教育の段階だ。

同地方の中等教育機関は11歳から18歳までが対象だ。小学校同様公立と私立に分かれるが、公立(ステートスクール)には、無試験で入学できる「コンプリヘンシブ(統合)スクール」と選抜制の「グラマースクール」がある。

①コンプリヘンシブスクール(ComprehensiveSchool)は、日常的には「ステートスクール」と呼ばれることが多く、日本の公立に該当する。学費は無料。

ケンブリッジ大学とブリストル大学が共同で行った調査(2014-15年度の約52万件の入学申請データを使用)によると、約60%の親が自宅から離れた場所にある学校を最初の選択肢として入学申請をしたという。

入学希望者が募集する生徒数より多い場合、子供がその学校の近くに住んでいるかどうか、兄弟姉妹が同じ学校に既に在校しているかなどが決め手になるため、引っ越しをする、あるいは親せきや友人の家を自宅として申請するなどの荒療治に手を染める親もいる。学校側もこうした親がいることを想定して、面接時に様々な質問を投げかける。

コンプリヘンシブスクールの場合、イギリス流お受験は、究極的には「自宅の引っ越し」という形で表面化するというわけだ。

②同じく公立中のグラマースクール(Grammar School)の場合、選抜試験に合格した人が入学できる。学費無料。当初ラテン語の文法=グラマーを教えていたことからこの名称になった。「11(イレブン)プラス」という入学試験に合格して良い成績を取ることが必要となる。入学が認められるには、この試験の高点数のほかに近隣に住んでいるか、兄弟姉妹がすでに在校しているかも選考対象となる。

イレブンプラスのための勉強へのプレッシャーは児童に大きくのしかかり、希望のグラマースクールに入れなかったことで、自分を「失敗者」と見なす感情が大人になってからも長い間続くと教育関係者は指摘している。

イートン校は年間の学費500万円超も数年先まで入学希望者殺到

③私立校(プライベートスクール、Private School)は、「インディペンデント(独立)スクール」(Independent School)あるいは「パブリックスクール」(Public School)と呼ぶこともあるので、ややこしい。

「パブリック」は「公」の意味になり、日本では「パブリックスクール」は公立校のことを指す。一方、イギリスの場合は15世紀の創立当時、貴族の子弟は在宅での個人教授が主であったところを親の出生や身分に関係なく、「一般(パブリック)」に開かれた学校として生まれたため、この名称となった。

さらに、パブリックスクールという言葉は、エリート層を育ててきた名門数校の代名詞として使われることも多々ある。学費はかなり高額に上る。

イートン校は、名門パブリックスクールの1つで、他には、例えばウェストミンスター、ウィンチェスター、ハーロー、ラグビー、セントポールズ、チャーターハウスなどだ。

イートン校について詳しく見ていこう。同校は1440年、ヘンリー6世が創設し、70人の貧しい少年たちに教育の機会を無料で与えたことが始まりだ。元々は貧困少年たちに教育を施すためだったが、いつしか富裕なエリート層が子弟を送る学校として発展していったのである。生徒数はその後の数世紀で増え続け、現在は約1300人に達している。大部分の私立校は男女共学だが、イートン校では男子のみ、という伝統は変わっていない。

大きく変わったのは、入学の仕組みだ。従来は、同校出身者の息子であれば、誕生時に入学が認可されるなどコネが効いていたが、この慣習は次第に時代にそぐわないとみられるようになり、2002年に廃止。どの生徒もイートン校の前の学校からの推薦状、論理思考テスト、面接を経て入学が決定されるようになった。

この「面接」のために、子供のコーチングをしてくれるビジネスもある。しかし、面接官の方は「コーチングしたな、と分かる」という(「良い学校ガイド」のウェブサイト)。

全員が男子となる生徒の年齢は13歳から18歳。イートン校のウェブサイトを見ると、2022年までの入学申請受付はすでに終了しており、競争率の高さがうかがえる。

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