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映画と広告と文在寅政権

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 彼に会わなかったら、そこそこ安泰に、適当に人助けをしながら生きていたかもしれない。彼の苛烈さが私を目覚めさせた。
 彼は死ぬときでさえ苛烈だった。そして私を再び彼の道へと引きずり込んだ。盧武鉉は遺書に「運命だ」と書いた。心の中で思った。「私のほうこそ、運命だ」。
 あなたはすでに運命から解放されたが、私はあなたが残した宿題に縛られている。

 そんな文在寅がテレビのニュースでは度々、激情をむき出しにした姿を見せる。韓国でフッ化水素工場の大爆発事故が起きた時、当時、野党の議員だった文在寅は現場視察で作業服を着てヘルメットを被った姿で、テレビカメラに向かって「こんなことが許されていいのか!」と大声で叫ぶ。朴槿恵元大統領の弾劾につながったセウォル号沈没事故では、政府の対応の不味さに抗議しハンガーストライキを決行し生命の危険が迫った市民に代わって、自らがハンガーストライキを行う。白髪が長く伸び、ヒゲも伸び放題の、体力も衰え、痩せ細った文在寅の姿がテレビや新聞で何度も報道された。穏やかな笑顔を絶やさない温厚な人物が時折見せる激しい怒り。広告として見た場合、あの自伝はその落差として機能しているのだろう。

 テレビニュースで時折見せる、まるで映画のような怒りは、どのように受容されるのか。日本記者クラブ主催の「朝鮮半島の今を知る」(23)文在寅大統領をどう見るか-文在寅政権の歴史的課題と日韓関係」というクォン・ヨンソク(権容奭)一橋大学准教授の講演によれば、韓国では報道ニュース番組を楽しみにする国民が多いとのことだ。最終的に正義が勝つ物語として事件報道を楽しむ傾向が高いという。この動画は1時間40分あるが、興味のある方は視聴してみてほしい。韓国の3分の1を占める、韓国のリベラル派がどのように文在寅政権を考え、評価しているかが非常によく理解できる。共感、批判は別にして韓国問題を考える人は必聴の資料だろうと思う。

 映画と言えば、世界的に大ヒットした韓国映画「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」に言及しなければいけないだろう。この映画は、1980年に起きた光州事件で実際にあった実話を元にしている。悲惨極まりない光州事件も映像化されながらも、庶民的なソウルのタクシードライバーを演じるソン・ガンホの人間味溢れる演技や終盤の手に汗握るカーチェイスなど娯楽映画として楽しめる作品になっている。

 この映画は2017年に公開された。文在寅の大統領就任後だ。青瓦台は、実際の事件でドイツ人記者である故ユルゲン・ヒンツペーターの妻を韓国に招き、文在寅大統領夫婦とともに鑑賞している。文在寅大統領は〈光州事件の真相は完全には解明されていない。これは我々が解決すべき課題であり、私はこの映画がその助けになると信じている〉とコメントしている。

 2019年3月1日の三・一運動記念式文大統領演説を覚えているだろうか。この演説では、先に紹介したクォン・ヨンソク(権容奭)一橋大学准教授の講演でもテーマになっていた〈親日残滓清算〉という言葉が何度も登場するが、それ以上に驚かされたのは〈アカ〉という現代ではほぼ忘れられかけている言葉が何度も登場することだった。

日帝は独立軍を「匪賊」、独立運動家を「思想犯」と見なして弾圧しました。このときに「アカ」という言葉もできました。思想犯とアカは本当の共産主義者だけに使われたのではありません。民族主義者からアナーキストまで、全ての独立運動家にレッテルを張る言葉でした。左右の敵対、理念の烙印は日帝が民族を引き裂くために用いた手段でした。解放後も親日清算を阻む道具になりました。

良民虐殺、スパイでっち上げ、学生たちの民主化運動にも、国民を敵と追い込む烙印として使用されました。解放された祖国で日帝警察の出身者が独立運動家をアカとして追及し、拷問することもありました。多くの人々が「アカ」と規定されて犠牲になり、家族と遺族は社会的烙印の中で不幸な人生を送らねばなりませんでした。今もわれわれの社会で政治的な競争勢力をそしり、攻撃する道具としてアカという言葉が使われており、変形した「イデオロギー論」が猛威をふるっています。われわれが一日も早く清算すべき代表的な親日残滓です。

 いくらリベラル派と言えども、「アカ」という言葉は韓国社会で今どき日常的には使われないだろう。これは、たぶん映画「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」のヒットと関連させた発言だろうと思う。映画の中で韓国軍が「このアカ野郎が!」と言って市民を殴り殺すシーンが幾度も出てくる。これは実際にもあったことではあるが、光州事件は1980年の出来事である。

 つまり、この演説は、約40年前の光州事件という悲惨な出来事を描いた現代の映画の中のショッキングなイメージを「アカ」という言葉を契機に現代と結びつけた、自身の党派的思想への誘導なのだろう。〈今もわれわれの社会で政治的な競争勢力をそしり、攻撃する道具としてアカという言葉が使われており、変形した「イデオロギー論」が猛威をふるっています〉と結ぶことで、光州事件を現在の対立的党派と接続してしまった。極めて広告的な戦略を持った演説だと思う。2017年5月20日の大統領就任時〈今日から私は国民みんなの大統領になります。私を支持しなかった国民一人ひとりも、私の国民であり、私たちの国民として仕えていきます〉という言葉は嘘だったのだろうか。

 この演説で、朴槿恵元大統領の弾劾を求める大規模デモを表す単なる修辞だった「キャンドル革命」が本当の革命へと転化する。国内でも革命政権さながらの粛清的人事で組織改革を行い、国際社会においても革命政権さながらの独善的な振る舞いを続けている。しかし、文在寅政権は民主的な選挙で選ばれた政権であり、たとえ弾劾によるものであっても、単なる政権交代に過ぎない。広告的につくられた独善的な理想世界は現実の世界とは違う。この広告的な革命を支持する、支持しないに関わらず、今起きている問題は、空想世界と現実世界との齟齬なのだろう。

 この広告的につくられた革命を、このまま韓国国民は支持し続けるのだろうか。軍、行政、司法と続く、まるで革命のような粛清的組織改革の残された最後の一つ、検察改革は、スキャンダルで揺れている。経済は、その広告的な革命を支えきれるだろうか。日韓GSOMIAが失効する11月23日午前0時を一つの区切りとして、今後も注視していくしかない。

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