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治療薬の価格は効果主義で

8月末、国内初の遺伝子治療薬に対して公的医療保険の適用が認められ、公定価格が決まった。この治療薬、手足の血管を再生する薬で、コラテジェンというとか。投与1回当たり60万360円だそうだ。高いのか安いのか。

株式市場は「(大儲けできるくらいに高いと)期待していた価格より安い」と評価し、(開発したのは大阪大学であり)製造を担当するアンジェス社の株価が急落した。といっても、その前に株価が相当上がっていたから、元の木阿弥になった程度だが。

この薬価が高いのか安いのかは僕には判断できない。もっとも、新聞情報によると、日本の薬価は製造原価に利益や流通経費などを積み上げる方式だそうである。常識的な方式のように見えるが、グローバルには非常識である。

薬品に限らず、画期的な製品やサービスであれば、その経済的な効果に対して対価が支払われて然るべきである。実のところ、日本企業の利益率が低いのは、画期的な製品やサービスが少ないこともあるが、たとえ画期的なものを出したとしても、企業が適切な対価を得ようとしないか、得ていないことが影響しているようだ。

遺伝子治療薬のような先端的な分野であれば、その開発が成功する可能性はきわめて低い。治療薬の場合、それが人体に用いられることもあり、きわめて慎重な治験がなされ、最終的に治療に用いられるものがごく少数になってしまう。

角度を変えて評価すれば、1つの世に出た治療薬の裏には、非常に多数の敗者が存在する。新しい画期的な治療薬を生み出してもらうには、敗者の分を含め、多額の資金を必要とするのだから、世に出た治療薬に高い値段がつかないと製薬会社としてはやってられないのではないか。

日本政府の戦略の1つは、大学発ベンチャーを含め、日本企業が最先端分野で活躍することではなかったのか。医薬の分野だけでなく、最先端分野で成果を出すのは容易でない。だから最先端なのだと言える。そうであるのなら、ようやく出てきた成果を正当かつ高く評価すべきである。

コラテジェンに対しても、その観点から薬価を決めるべきだろう。今回の薬価の決め方が、この分野での日本の大学や製薬会社の研究開発の出鼻をくじかなければいいのだがと、心配になってしまった。

ついでに書けば、高い薬価が日本の公的医療保険の財政を悪化させているとの議論がある。そのせいか、政府は薬価を下げることに躍起である。でも、これは枝葉末節での政策でしかない。

厚労省は医師会に圧倒的に弱い。医師、医院に関する制度を抜本改革できないものだから、製薬会社を絞ろうとしている。さらに言えば、高齢化社会における人命とは何か、尊厳とは何かの議論を本気ですべきであるのに、多分これも医師会の手前、避けて通ろうとしている。

弱腰の厚労省が日本の医療財政を悪化させ、さらに医療分野での技術革新の阻害要因となりかねない。

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