- 2019年09月04日 11:23
【読書感想】ドライブイン探訪
2/2 ドライブインが廃れていったのは、コンビニやファミレスなどの業種の発展とともに、若者や家族連れが「ドライブ」とか「ツーリング」というレジャーから離れていった影響が大きいのです。
観光バスを利用する人も減りました。
地元の常連さんをつかんだ店や名物料理をつくることができた店は残っているけれど、多くの店が潰れていったのです。
正直言って、大概のドライブインの料理はおいしくも安くもなく、この本で紹介されるくらい長年営業を続けられているというだけでも、それなりに繁盛してきた店ではあるのです。ドライブインに限らず、長続きする飲食店は少ないですし。
市井の人々がモータリゼーションの時代に「ドライブインとかだったら、手に職がない自分にもできるのではないか」という理由で、この商売をはじめていったのです。
そのなかで、「ちゃんとやってきた」人たちが生き残っているのだけれど、それだけに、見切りをつけて閉店するのをためらってしまう。
人との出会いや店への愛着などで、明らかに「商売としては限界」に達しているような店でも開けつづけ、著者に「誰かドライブインをやりたい人を紹介してください」と話していた、というのを読みと、なんだかしんみりしてしまいます。
さびれた店でも、店主にとっては「自分の人生そのもの」なのだろうなあ、こういうのって。
奈良県の「山添ドライブイン」の項より。
(店主の吉田富美代さんの話)
「うちに来てくれるお客さんも、長距離トラックのお客さんが多かったです。向こうに座敷もあるんですけどね、ごはんを食べてお酒を飲んで、座敷に寝て休んで行かれる方も多かったですよ。名阪のお客さんも多かったし、地元のお客さんも多かったから、当時は茶碗を洗う暇がないぐらい忙しかったみたいです。地元の人はね、稲を出荷したときとか、お茶を出荷したときとか、行事の帰りに『吉田屋さんで食べて飲んで帰ろうか』という人もいてましたね。今はクルマでちょっと走ればお店がありますけど、その頃は他に店がなかったから、皆喜んで利用してくれたみたいです」
地元のお客さんはもちろんのこと、長距離トラックの運転手にも常連客が多く、顔なじみのお客さんは大勢いた。おかずのメニューを豊富に取り揃えているのは、そうしたことも関係している。
「今だとね、焼き魚だけでもサケ、サバ、ブリ、カレイ、赤魚五種類ぐらいは出すようにしてるんです。揚げもんも、エビフライ、アジフライ、イカフライ、唐揚げと、なるべくたくさん並べるようにしてますね。同じ人が来てくれることが多いから、自分で今日のメニューを決めてもらったほうが毎日違うもんを食べれますよね。一個の料理をたくさん出すんじゃなくて、品数を多く、数を少なくです。そうすると手間も大変ですけど、自分だって毎日同じもん食べるのは嫌やしなと思うたら、こうなってしまいますね」
お客さんたちが自分でお皿を下げているのは、お店のそうした心遣いが伝わっているのだろう。ちょっと強面のお客さんでも、他のお客さんに倣って手伝ってくれるのだという。
「初めて来はったときはわからなくても、二回、三回と来てくださっているうちに『他のお客さんたち、自分でお茶出してきてるわ』というのを見て、自分でお茶を持って行ってくれるようになるんです。半分セルフですね。そんなこんなでお客さんに助けてもらってます。お客さんのほうも、自分が早く食べようと思ったら、他のお客さんの食器を下げたほうが早く食べられると思ってくださるのかもしれませんけど。皆さん協力してくださって、ありがたいですね」
何より驚かされるのは、お店には伝票が存在しないということ。つまり会計は自己申告制なのだ。
淡々と、「自分の仕事」をやり続けて生きてきた人にスポットライトが当たることは珍しいし、その言葉が記録されることもほとんどありません。
「普通の人の、普通の人生」は、みんなが「ありふれたもの」だと思っているうちに、いつのまにか歴史から失われていくのです。
この本には、そんな「太平洋戦争後の高度成長期の日本を生きてきた、普通の人々」の肉声が詰まっています。
懐かしの昭和ドライブイン
作者: 越野弘之
出版社/メーカー: グラフィック社
発売日: 2019/07/08
メディア: 単行本(ソフトカバー)
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昭和懐かし自販機巡礼 (タツミムック)
作者: 魚谷祐介
出版社/メーカー: 辰巳出版
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ドライブイン鳥 鳥めしの素 130g
出版社/メーカー: アリウラ
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