- 2019年09月03日 10:36
アフリカでの「日中冷戦」は新たなステージへ――ビハインドは埋まるか
2/2深層でのつばぜり合い
ところが、援助競争は日中にとって負担が大きく、永久に続けられるものではなかった。とりわけ、日本にとっては、対アフリカ貿易額で中国の約10分の1に過ぎない状況で援助が頼みの綱だったが、有権者のアフリカへの関心が低いなか、援助額を増やし続けることが難しかったといえる。
その一方で、一時は首脳会談すら行われなかった日中関係は、2017年頃から徐々に改善。昨年6月には安倍首相が「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」と宣言するに至り、これと前後してアフリカを含む開発途上国での援助で日中が連携する協議も進められてきた。
これらを反映して、2016年のTICAD6では、援助の増額がストップ。一方、中国もこれとほぼ時を同じくして、援助の増額をやめた。こうして、金額を競う日中の援助競争は、ひと段落ついたのである。
ただし、日中の潜在的な緊張に変化はない。TICAD7で打ち出された債務管理は、公的な資金協力をこれ以上増やせない日本政府が、先述のコンゴで生まれたアフリカでの変化を踏まえて打ち出した新たな手法といえるだろう。
実効性への疑問
もっとも、こうした手法が日本政府の期待ほど成果をあげるかは不透明だ。そこには大きく2つの理由がある。
第一に、先述のように、IMFや世界銀行の融資の条件が厳しいため、多くの国が二の足を踏みやすいことだ。
さらに、IMFや世界銀行は1980年代、今の中国に先立ってアフリカで過剰な貸付を行い、各国を債務地獄に陥れた「前科」をもつ。しかもその際、IMFや世界銀行は融資をテコに各国の経済政策にまで介入した。これらの借金は後に減免されたが、少なくともアフリカ諸国からみてIMFや世界銀行への警戒心は強い。
そのうえ、アフリカ各国の政府は汚職が激しく、責任あるポストの人間が国家の将来より中国企業からのワイロを優先させても、取り締まりには限界がある。
そのため、日本の働きかけだけで、アフリカ諸国が雪崩を打ってIMFや世界銀行に駆け込むことは想定しにくい。
アップデート・レースの行方
第二に、中国が黙っていると思えないことだ。
中国政府はこれまで状況に応じて手法をアップデートしながらアフリカに進出してきた。中国企業の進出が雇用を生まないと批判されれば現地人の雇用枠を増やし、経済や資源だけに目を向けていると批判されれば国連の平和維持活動や無償援助も増やしてきた。
中国にとってアフリカは重要な足場であり、企業はともかく中国政府はそこでの悪評を避けようとする傾向が強く、これまでも二国間の協議で各国の債務を部分的に放棄してきた(結果的には無償で援助したことになる)。
そのため、今後アフリカ諸国がIMFや世界銀行に支援の要請をする動きが広がれば広がるほど、中国は債務返済の免除を増やすことも想定される。そのうえ、中国は出資額を増やすことによってIMFや世界銀行での影響力を大きくしている。
こうしてみたとき、日本政府の外交的メッセージはアフリカ各国の債務負担を減らす一つのきっかけになるかもしれないが、それだけで中国の圧倒的なプレゼンスがは揺らぐことは想定しにくい。
むしろ、中国政府へのプレッシャーはそのアップデートを促すきっかけにもなり得る。その場合、アフリカにおけるビハインドを多少なりとも挽回しようとするなら、日本もアプローチをアップデートし続けるしかない。TICAD7での「中国封じ」は、今後も続くであろう「日中冷戦」の一里塚に過ぎないとみた方がよいだろう。
※Yahoo!ニュースからの転載- 六辻彰二/MUTSUJI Shoji
- 国際政治学者



