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九州北部豪雨、油まみれの我が家、誰が補償してくれるのか

8月28日昼、床上浸水した民家

 8月28日、九州北部を襲った記録的な大雨は、各地に甚大な被害をもたらした。佐賀県大町町では「佐賀鉄工所大町工場」が冠水し、タンクから工業用油約5万リットルが流出。早朝より油が混じった黒い泥水が近くの住宅地や田畑、順天堂病院へ流れ込み、場所によっては昼までに床上40cmほどの高さまで浸水した住宅もあった。

 本誌記者が現地を取材した30日も、鼻につく油の臭いが立ち込め、すぐに気分が悪くなるほど。地元消防隊員が、汚水に浮かんだ油を吸収シートで取り除いていく形で、流出した油の除去作業をおこなっていた。

 家が床上浸水した野口必勝さん(42)は、こう憤る。

「脚が弱っている母をおぶって避難しました。水だけならまだしも油が混ざっているので臭いがひどく、家財道具は処分しなくてはならないと思います。(油が流出した佐賀鉄工所から)賠償金が出るのかどうかもわからないですし、これからが大変です」

 油まみれになってしまった住宅や、家財道具の補償はどうなるのか。ファイナンシャルプランナーの平野敦之氏が解説する。

「火災保険に加入したときに、水災補償にも加入していて、支払い要件を満たしていれば、保険金は払われます。支払いの対象は、契約内容に建物だけでなく、家財も含まれているかで変わります」

 ただ、通常の水害ではない「油まみれ」の被害でも、保険金の支払い額が増えることはないという。

「ふつう、水災で床上浸水してくるのは汚水や泥水ですから、今回も『油が混じった汚水』として、とくに扱いは変わらないのです。たとえ、住宅、家財道具が油まみれになって使い物にならなくなっても、契約内容に応じた補償がされるだけです」

 油が流れ込んだ田畑の補償はどうなるのか。じつは2019年から農林水産省が主導して、農産物の自然災害や価格低下による収入減少などを補填する「収入保険」が始まっている。

 だが、制度開始から間もないため、加入していない農業者も多い。ビニールハウスと水田が冠水した、鵜池幸治さん(35)は途方に暮れる。

「ちょうど収穫時期だったキュウリは、全滅しました。これほど油で土が汚染されると、また作れるのか、見通しも立ちません。収入保険にも、まだ加入していなかったんです。被害はすべて自分でかぶるしかありません」

 佐賀鉄工所からの油流出は、鵜池さんだけではなく、大町地区全体に被害を与えた。住民のひとりは取材に対し、「流出は30年前にもあり、今回は2回め」だと憤った。だが、同社から賠償金が支払われる可能性は、現時点では低い。

「鉄工所が賠償責任保険に加入していたとしても、保険金は鉄工所に法的な責任がある場合にしか支払われません。自然災害で起こった被害に関して、法的責任をどこまで問えるかは難しい部分も多く、一概には言えません」(前出・平野氏)

 油の被害に対する補償がなく、被害を受けた住宅と田畑だけが残るなら、復旧への道のりは遠い。

(週刊FLASH 2019年9月17日号)

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