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「検閲にあたる」「まだ負けていない」「あとは勇気だけだ」『表現の不自由展・その後』の実行委員が会見


 2日、「あいちトリエンナーレ」芸術監督を務めた津田大介氏の会見に続き、「表現の不自由展・その後」の実行委員のうち、岡本有佳氏、アライ=ヒロユキ氏、小倉利丸氏が展示の再開を求める記者会見を開いた。


 岡本氏はまず「日本で2012年以降、ヘイトスピーチといわれる差別・排外主義のデモが各地で起き、表現の自由を侵害する事件が増えている。特に第二次安倍政権以降、数だけででなく範囲も広がっており、日本の植民地支配の責任を問う問題に加え、原発事故、憲法9条など、現政権批判の表現に規制が及ぶようになっていると私たちは認識した。その社会状況を可視化して表現しようと開催したのが2015年の表現の不自由展だった」と説明。


 その上で、「あいちトリエンナーレでの開催前から、「検閲や政治的圧力、抗議行動や妨害が入ったときの警備体制に心配があり、企画当初から懸念を伝え、会議にも参加したが、やはり事前の対策に問題があった。自動音声案内も私たちが提案したものだし、抗議の最前線に立つ職員らの事前研修と現場でのケアが不十分だった」と指摘。

「大村知事と津田芸術監督はたった3日で中止を決定した。表現の自由に対する侵害である、作家とともに表現の自由を守らなければならないと思っていたのであるのならば、作家たち、企画・キュレーションした私たちに意見を聞いて、悩みを共有すべきだった」「検閲ではなく安全の問題だと主張しているが、私はそうは思っていない。作品を見せないようにしたこと、表現の自由を侵害した行政の判断は検閲にあたる。現地を視察した上で中止を申し入れた河村名古屋市長の発言、補助金見直しに言及した菅官房長官の発言は、ともに作品の内容に踏み込んだ政治的圧力で、表現の自由を侵害している」と批判した。


 次にアライヒロユキ氏は展示について「全体の構成は日本の歴史や政治体制における負の問題を主題にした検閲作品が多くを占めるが、日本社会における検閲はほとんどがこれらのモチーフの問題から起こり、それは2014年以降増え、最近は悪質化かしている。本展への批判は、そうした社会状況を知らないためだ。ただし猥褻に関しては刑法に触れる可能性があるため、津田監督などとも相談して、断念せざるを得なかった。

また、抗議の5割は少女像だが、4割の大浦信行『遠近を抱えて』について報道されない理由は"天皇タブー"だ。昭和天皇の写真を焼いたのが非難の理由だが、実際は昭和天皇の写真をコラージュした彼の版画作品だ。この点が誤解を受けているが、この批判には社会的心理的な背景もある。

日本には"言挙げせず"という言葉があるが、日本の支配的価値観に逆らって言葉にすることは敬遠されがちだ。天皇制を支持しようが反対しようが、天皇のコラージュすることは不敬とされる。ここに論理性はないが、戦前に見られた不条理な傾向が近年高まっている。この社会の不寛容さを白日に晒すことが本展の意図でもある」と説明。


 さらに検証委員に対しても、委員の一人である上山信一氏がTwitterで同展を"サヨク的企画"と表現したことに対し、「ヒアリングについて疑問 公正な形で事実経過を聴取してくれるかどうか、政治性という形の予断をもってこちらに質問してくるのではないかと予想される。今でも私たちに対する検閲が行われているのではないか」と疑問を呈し、「深刻になりつつある検閲状況を提示することが目的だった本展が圧力と検閲によって中止になったのは、それがいかに酷いかを示してしまったことになる。

私たちの最大の望みは、これをひっくり返して表現の自由が生き続けることを示すのが願いだ。(現状の)"事なかれ主義"がブレイクスルーされないと、日本の"事なかれ主義"はさらに酷くなっていく。『サイボーグ009』の島村ジョーのセリフにあるように、"あとは勇気だけだ"、それが答えだ」。


 また、小倉利丸氏は「新聞などのマスメディアにも、展示を見ずに書かれた文章が散見される。展示を見ることなく記事を書くことはジャーナリストであればやってはいけないことだ」とする一方、「トリエンナーレ側は展示前も展示後もカメラが入ることを禁止し、観覧した人々へのインタビューも禁止した。こうしたメディア規制は実行委員会にはなん野相談もなしに行われた。

会場正面にはSNSへの投稿禁止も掲げられ、これらの条件を飲まなければ展示自体ができないと言われ、やむなく受け入れた。今もメディアは入室できておらず、明らかな報道の侵害だ。展示の作品の多くは歴史認識や天皇をめぐって検閲に遭った作品ばかりだが、不自由展の展示中止の問題は同時に報道の自由への深刻な侵害を含んでいる。今回の検閲のターゲットは私たちだけでなく、報道の自由を尊重しようとするメディア全体に及んでいると考えている」と指摘。

「まだ負けていない」「なぜこんな小さな会場のセキュリティすら守れないのか。市民の自由を守ること、言論、表現を守ること、安全確保しながら展覧会を実施するのが、愛知県でできないのか。できるにもかかわらず本気でやろうとしないところが問題で、そこに県幹部も含めた心理的な問題があると思うし、本展のテーマそれ自体に対するアレルギーがあるんだろうと思う。それを払拭することだ」と訴えた。
(AbemaTV/『AbemaNews』より)

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