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GO LOCAL 〜行ってわかった、地方のいま〜
テレビや雑誌など、メディアを通じて目にする地方に関するニュースたち。でも、本当にまだ見ぬ土地について知ろうと思うなら、現地に行ってみるしかない!そこで今月は、これからの「地方」の担い手たちをBLOGOS編集部が取材、さまざまな声を集めました。あらたなチャレンジを知れば、きっとあなたも出かけてみたくなるはずです。

「都会に求めすぎじゃない?」若者の流出続く地方が “それでも最高”なワケ

  • 2019年09月02日 14:00
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地方のそれほど大きくない規模の町に行くと、どこも抱えている課題が人口減少、とりわけ若い世代の流出だ。

進学、仕事…理由は様々ながら、若者たちの多くは、県内の大きな町、地域の中核都市、そして東京や大阪といった大都市を目指して地元を出て行くという。

そうした流れがある一方で、町には地元にこそ価値を感じ「田舎の素晴らしさ」を日々感じている人もいる。今回、新潟県魚沼市、島根県益田市、鹿児島県いちき串木野市を訪れ、「地元が最高」だという人たちに話を聞いた。

CASE1:新潟県魚沼市

東京から新幹線で約1時間半、新潟県中越地方に位置する魚沼市。平成16年に北魚沼郡の6町村が合併して誕生した自治体だ。

魚沼市も多くの地方都市と同様に、人口減、若者の流出という課題を抱えている。平成10年代からは全人口・若者人口ともに右肩下がりの状態が続く。

町を流れる魚野川と奥に望む越後の山々
同世代で地元に残っているのは半数以下。昔から変わらないと思いますが、外に出て行く一番の理由は仕事ですね。仕事自体はあるんですけど、自分がやりたい仕事がない人が多いようです。

そう話すのは魚沼青年会議所で2019年度の理事長を務める大桃崇弘さん(33)。20歳から40歳までの地元の若者が集まり、地域活性化の催しなど「明るい豊かな社会を築き上げる」ための活動を行っている。

「田舎だけど不便ではない」

高校を卒業し、進学の段階で約80%が市外に出て行き、卒業後に戻るのはその約2割だというのが、地元にいて感じる同世代の動きなんだとか。

市内にはレジャー施設がなく、大きな商業施設で買い物をしようと思ったら車で1時間ほどかけて長岡市に行くのが一般的。ただ、新幹線、在来線、高速道路が整備されている魚沼市はどこに行くにも利便性の良い土地だといい、「そこまで不便だとは思いません」(大桃さん)。

少し遠出すれば北関東へのアクセスも容易で、買い物から娯楽まで日常で物足りないことは多くない。その一方で、交通の便の良さが市外への人口移動の動きにつながる面もあるという。

東京から近いので、手元に入ってくるお金を比べやすいんですよね。同じ仕事でも、向こうに行けば30万円もらえる仕事が、地元なら20万円前後とか。それくらい違うと『ちょっと東京に行ってくる』って考えちゃいますよね。地元には週末でも休み期間でも簡単に帰ってこられますので。(同所監事・岡部義彦さん:39)
定例会議では、地元で実施する取り組みのアイデアを形にしていく

「残業が少ない」「ワークライフバランス」

地元の良いところを聞くと、皆が一様に口をそろえるのが「自然の豊かさ」だ。娯楽施設こそないものの、市内から少し移動するだけで夏場は川遊びやキャンプ、冬場は手軽にスキーやスノーボードが楽しめる環境はアクティブ派には大きな魅力だ。

また、この地域では「もつ焼き」と呼ばれるBBQ文化が盛んで、週末になるとあちこちの庭先でホルモンをつついて盛り上がるのがよくある光景。ほかに、祭りなど地域のイベントに主体的に参加でき、「大人になってから知り合いが増えるのも楽しい」という声も聞かれた。

(写真AC)

ただ、家族・友人と楽しむキャンプやBBQも、地域の祭りも、とても興味深く参加してみたいものだが、そうした「趣味」や「余暇の楽しみ」を人生の中心に置いて考えることは誰もができることではないようにも思える。

そんな疑問を持っていると、「仕事」と「プライベート」のバランスを考える材料となる面白い話を聞くことができた。

こちらでは、残業をする人が少ないんです。経営者は別にして、社員は定時で帰る人が多くいます。僕の経験でも、市外だと夜まで仕事をするのが当たり前なんですけど、魚沼では『あれ?もう帰るの?』ってことが多いです。そこまで仕事に追われてないんでしょうね。だから地域のイベントに参加できるし、自分の生活を中心に考えられる。(岡部さん)

また、自分や家庭の都合で仕事を休みやすいのも魚沼の土地柄だという。この地域では魚沼産コシヒカリの産地として、昔から本業のほかに田んぼを持っている兼業農家が多く、家の事情を理由に仕事を休むことが当然のこととして受け入れられるという。

仕事で拘束される時間が短いからこそ、家族や趣味のことを中心に生活を考えられる。「ワークライフバランスを考えている人にとっては良い土地ですよ」との言葉にとても納得させられた。

「パリピじゃなきゃ最高の地域ですよ」

仕事は本当に短いんでしょうね。毎日17時になると店の前の通りが渋滞しますからね。17時に混むってことは何時に仕事終わってるのかな(笑)。

そう話すのは、2019年の冬に魚沼市に移住し、「ファミリー居酒屋 ハーモニー」を開業した磯淳太郎さん(34)だ。東京都港区白金で生まれ育った磯さんは、魚沼への移住は「23区の別の地域に行くより楽だった」と振り返る。

スノボで何度か来たことがあって、知り合いも何人かいたんです。自分のお店をいつかやりたいなと思ってたけど、東京にいる間は何年もできなかった。ある時にこっちの友達に「こっちでやれば?」って言われて、すぐできちゃいましたね。
オープン半年で予約必須の人気店に

2月にハーモニーを開業すると地元客を中心に話題になり、店は今では連日の大賑わい。顔馴染みとなっているお客さんの一人は「こういうマスターが魚沼に来てくれて本当に嬉しいよね」と笑顔を見せる。

お金の問題については、収入に差があっても「東京の方がお金を使うから、むしろこっちにいた方が溜まるんじゃないか」と磯さん。今のところ魚沼への移住はポジティブな要素しかないという。

パリピだったら物足りないかもしれないですけどね。銀座や表参道で買い物するのが好きって人も。でも、僕は東京にいても知り合いの外国人を案内する時くらいしか銀座は行ったことないし。自然が好きな人にとって魚沼は最高ですよ。冬は毎朝仕事の前にスノボ行ってやろうかと思ってます。

CASE2:島根県益田市

島根県の西端に位置し、北側は日本海に面する益田市。旧石器時代から人々の営みがあったことが確認されるなど古い歴史を持つ地域だ。

その中心部、益田駅から歩いてすぐの場所に“スケートボードショップ”を開店した人物がいるという。

「『地元っていいね』の一人になりたい」

なぜ地方でスケボーショップなのか、スケボー人口が多いのか、そもそも経営は成り立つのか…そんな疑問を抱えて現地に飛ぶと、指定された場所は何の変哲もない倉庫。

住宅街に立つ倉庫。ショップには見えない

階段を上がって建物の中に入ると、室内はショップとスケートパークが併設されているスペースだった。

専門学校で福岡に行って、一度別の会社に入ってから、今は家でやっている音響屋の仕事をしています。25歳くらいの時にスケボーを始めたんですけど、この辺りには店がないから全部ネットで買ってたんですね。

その時に、次にスケボーを始める人が同じような大変な思いをしなくていいように、店も始めちゃうかって。ちょうど倉庫の2階が空いていたのでDIYで全部作りました。

スケボーをはじめストリートアイテムを幅広く扱うANGLEBANKの代表・澄川真ノ介さん(31)の言葉だ。時間を見つけては柱を立て、壁を貼り…と作業を進め、自身がスケボーを始めて半年後にはショップも開店した。

「益田最高ですよ。何もないのがいいんですよね」と澄川さん

益田市でも、地元に残る若者の数はとても少ないという。澄川さんの同級生でも、大半が「益田には何もないから」と、仕事や将来の可能性を求めて外へと飛び出していった。

一度は、専門学校で住んだ福岡での開業を考えたこともあったという。ただ、最終的には「好きな益田で」と地元に残ることを決めたと語る。

地元が過疎っていくのを見てるから、田舎でも頑張ってやればできることがあるんだよ、って見せていきたいですよね。ゆくゆくは「益田って楽しいね」「こういうところが良いよね」って言われる一人になりたいです。

地元には何もないので「逆に何でもできる」と澄川さん。最初こそ店がやっていけるか不安もあったそうだが、蓋を開けてみるとネット通販で一定の売り上げがあり、また店の存在が地元の若者のスケボー需要を掘り起こした面もあって、経営は安定しているという。

「都会に求めすぎじゃない?」

空いている時間は、もっぱら釣りかスケボー。地元にかつてあったボウリング場も映画館も今はないため、違う楽しみを見つける必要があったそうだ。

でも、映画って毎日見ないでしょ? 僕は恵まれていたし、お店を持つことができたけど、そうじゃなくても地元で楽しめるかどうかは気持ち次第だと思うんです。

都会に“何か”を求めすぎてるんじゃないかな。仕事がないって聞くけど、選びすぎるからない、という面もあるんじゃないですか。仕事は仕事で、それ以外に楽しいことを探せればいいと思います。

「仕事がない」「地元ではできない」と口にする人は多いという。だが、動いてしまえば自分も周りも楽しめる、というのが澄川さんの考え。大切なのは「とりあえず始めてみること」と「楽しもうとする姿勢」とのことだ。

取材中もスケボーを練習する人たちとの会話が絶えない

人が少ないからこその人間関係のストレスについては、「人が多い都会だと、気が合わない人がいても別の人と仲良くできるが、田舎はその人がすべてということもある。そこで詰まって苦しいのは田舎のストレスかもしれないですね」ということだ。

CASE 3:鹿児島県いちき串木野市

鹿児島市から車で30分ほど、まぐろとさつま揚げで知られる海沿いの町・いちき串木野市。

近年、県外からの移住者も巻き込んだ、地元を盛り上げる取り組みが注目されている同市だが、ここに「自身のキャリア形成=地元にどう関わるか」と考えている若い女性がいる。

串木野市商店街のシンボルとなるアーケード屋根「ドリームキャノピー」

「都会に行きたいと考えたことはなかった」

子どもの頃から暮らした串木野が「とにかく大好き」だと話すのは、地元の染物屋で働く橋口彩花さん(20)。高校卒業後、中国地方の港町にある服飾系の短期大学に進み、「町づくりに関わりたい」と慣れ親しんだ土地にUターンした。

進学の際、同級生の中には「都会に行きたい」という友人もいたそうだが、彼女自身は「都会に行きたいってことは考えたことがなくて、地元を盛り上げるヒントになりそうだなと思って」その学校を選んだという。

串木野に残る子は少なくて、仲の良い子も一人しか残ってないですね。「とりあえず地元を出たい」「田舎は嫌だ」って子が多い。

この辺りって、食べ物屋さんはたくさんあって、居酒屋さんも多いんですけど、未成年の子が遊ぶ場所がないんです。ジョイフルも車がないと行けないし、コスメを買いに行くにもドラッグストアくらいしかなくて。都会だとスタバやマックに気軽に行けていいなとは思うけど、鹿児島市内まで移動すればありますよね。だからそれは自分が都会に住む理由にはならないかなって。

「次世代が地元に残る理由になる」から地元に残る

就職先は地元の企業しか選択肢として考えていなかったという。もし串木野で仕事が見つからなかった場合は、市外で忙しくなるよりは、アルバイトをしながらでも地元に住み、町づくりに関わることができる時間を増やそう、と考えていたと橋口さん。

就職した地元企業は求人募集を出していなかったそうだが、ダメ元で電話を入れて見学をお願いし、会社を訪問して1ヶ月後に入社が決まったという。

私は給料が全然高いわけではなくて、正直一人暮らしとなるとギリギリです。ただ、私の場合は、町づくりに関わりたいという思いがあったので、お金の問題ではなかったんです。

地元の染物屋なだけあって、地元のお仕事(祭りの浴衣や手拭いなどの依頼)ができるので、嬉しいです!串木野の役に立ててるのかなと思います。
地元のイベント・串木野さのさ祭。漁師によって唄われてきた民謡「串木野さのさ」の調べで踊る(写真協力:公益社団法人 鹿児島県観光連盟)

串木野もこれまでの地域と同じように、人口減少や若者の流出という問題を抱える。橋口さんは地元に残り、そういった課題に自分が当事者として取り組みたいと考えている。

地元にはかわいい洋服屋さんや雑貨屋さんがなくて、私自身も買い物は鹿児島市内で済ませています。どこに行っても若い世代の居場所がないような気がするんです。焼酎が有名でも、若い子にとっての選択肢にはならないですよね。

よく姉妹で話しているんですけど(※橋口さんは三つ子)、私たちには将来的には夢があって、いつか起業して店舗を持ちたいなって。自分たちのスキルと町おこしの掛け合わせ。市外や県外にいる人にも自分たちや、自分たちの作品に興味を持ってもらって、私たちに会いに来る=串木野に来るという形で地元を間接的に盛り上げたいなと思っています。

地元に残ることが、次の世代の若者が地元に残る理由になる。橋口さんは、もっと若い世代に「地元でできる可能性を教えてあげたい」と笑顔。

串木野は人も温かくて、最近は面白い人もたくさん集まっているので、ぜひいろんな人に遊びに来てほしいですね。
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