- 2019年09月02日 15:12
「拒否的抑止考える段階」長島昭久衆議院議員
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安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・韓国が大陸国家群に行くと日本の安全保障のベースが劇的に変わる。
・無人航空機で監視しミサイルを高出力レーザーで迎撃する技術必要。
・「アクティブな拒否的な抑止」を本気で考える段階に入っている。
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韓国によるGSOMIA離脱の動きに波紋が広がっている。自民党の長島昭久衆議院議員に話を聞いた。元々なかったものだし、アメリカを通じて軍事情報は手に入るので問題ない、との論調がある中、地政学的中長期的視点が重要だと長島氏は強調する。
■ GSOMIA離脱の本当の影響とは?
安倍: 日米韓の防衛協力に影響はそんなに大きくないという論調が多いようですが?
長島: (GSOMIAは)2016年に締結され、これまでほとんど北朝鮮のミサイルをおっかけていた。基本的にはアメリカの情報が1番有益で、早期警戒衛星情報は発射の段階からわかっている。韓国にとっても日本にとってもお互いの情報はそんなにクリティカルかというとそうでもない。2016年に戻ったから大丈夫と言う人もいるが、今後のことを考えなけばいけない。
(GSOMIAは)これから3年か4年、ならし運転でアメリカと日本と韓国との間できちんと情報が漏れないで保護されれば、情報を共有しながらお互いの信頼感が醸成され、出す情報の質も変わってくるし当然量も変わってくる。
中国やロシアという東アジア、あるいはインド太平洋全体の日米韓同盟の紐帯(ちゅうたい)のベースになるのはGSOMIAだけ。今後のことを考えるとGSOMIAはある種無限に広がっている可能性がある。だから、ここで絶たれてしまうのは日韓にとって非常によくない。
韓国は、日本に対してなんとなく報復した気持ちになってると思うが、アメリカにしてみれば、重要なアグリーメント(協定)を韓国側が破棄することは信頼を大きく裏切ることになる。だから「失望した。」と言う発言になる。これは外交的にはとても強い表現だ。
今日はっきりシュライバー米国防次官補がはっきり、(GSOMIAを)元に戻せ、と言う言い方をしていた。これはアメリカの非常に強い意志が垣間見られたと思う。
安倍: そういう中で文政権は、はっきり反米援北の姿勢を打ち出して支持率を上げている。しばらく様子見するしかないのでは?
長島: 最近、側近のスキャンダルで(人気)ガタ落ちですけど。今まさに朴槿恵政権に起こったことと同じようなことが文政権に起こっている。韓国の文派ではない一般の人たちや、保守派の人たちがどう対応していくのか、見守るしかない。
今のこの流れで1番危惧されるのは、そもそも半島国家というのは大陸の磁力に惹きつけられていく運命というか宿命にある。中国・ロシア・北朝鮮+韓国と言う構図に黙っていればなりやすいが、それを日米を中心とするいわゆる海洋国家群が、38度線の南側をなんとか繋ぎ止めながら大陸国家群に対して抑止を効かせて地域の安定を維持してきた。その紐帯が切れることによって、韓国が大陸国家群のほうに引き寄せられると、日本の安全保障のベースが劇的に変わる。
38度線が対馬海峡まで南下することになる。韓国が仮に、大陸国家群に入ったとすれば当然在韓米軍の撤退と、米韓同盟も解消ということになる。
トランプさんのように煩わしいところからなるべく引こう、後は自分たちでやれ、今まで俺たちが持ち出しでやってきてのはけしからん、という大統領が仮に続くとすると、在日米軍、そして日米同盟だってどうなっていくかわからない。
朝鮮半島の韓国があったがゆえに、なんとなく一緒になってアメリカとしては対応しなければいけなかった。しかしそれが負担に感じるような大統領あるいはアメリカ国民の感覚になっていくと、日本の安全保障戦略の土台が総崩れになる。
だから自立すればいいんだ、と簡単に言う人がいるんだけど、じゃぁそれはどれだけの防衛費がかかるのか。少子高齢社会の中で誰が負担するのかと考えると、やはり日本の役割と言うのは大きくて、どこかで落としどころを作る必要がある。ちゃんと韓国の政権と意思疎通を図ることが重要だ。
今回 文政権は、北朝鮮が要求した通りのことをした。北朝鮮はGSOMIAを切れと再三言ってきた。そして韓国を射程に収める短距離ミサイルを連発して打った。その結果として韓国は、GSOMIAを切ったわけで、北朝鮮や中国から見ればこれは脅しに屈した、韓国与し易し、と思っただろう。だからこそアメリカは(GSOMIAは)絶対切るなと言ったのに切ってしまったわけですからまさに反米援北の判断と言わざるを得ない。韓国の大統領府が米韓同盟アップグレードするなどと言ったけれども、とてもそういう話ではない。
