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東京の新名所「チームラボ ボーダレス」の仕掛け人・杉山央の表現の軌跡

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不便さが、ワクワクを生み出す

「チームラボ ボーダレス」は、ここに来ないと経験することができない価値を、どうやって提供するかを考え抜いてつくり上げたミュージアムだ、と杉山さんは言う。

作品ごとの境界はなく、広大な迷路をさまようような感覚。最先端のデジタルテクノロジーによって入場者の動きなどに反応し、人が触れると花が散ったり、水の流れが変わったりする。散った花や鳥などがほかの作品に移動し、新たな動きにつながっていく。

杉山)「チームラボ ボーダレス」の構想は、開催の3年ほど前からチームラボのメンバーと、話し合ってきました。

生活の中にアートや文化があることで、生活がより豊かになる。それが森ビルの考えです。だから六本木ヒルズに森美術館、アークヒルズにサントリーホールと、街づくりにアートを取り込んできた。そのなかで世界中の人を惹きつける文化施設を東京につくるべきだという流れにつながった。

一方、チームラボにも東京に拠点をつくりたいという思いがあった。その点で、森ビルとチームラボの想いが重なった。僕自身も、若いころからつながってきた猪子さんと、いつか一緒になにかをしたいと、ずっと思ってきました。

ここに来ないと体験できないような突き抜けたものを東京に作って、世界中の人々を惹きつけよう。デジタルアートを体験してもらうことで、物質的ではないものに対する価値を生み出したい。僕も彼らも、この思いは根底で通じ合っていました。


杉山)僕自身、森ビルでイベントや展覧会を企画するうち、展覧会や美術館のあり方を深く考えるようになっていました。

展覧会で見る絵と、ネットで見る絵が同じになってしまう時代です。単に「知る」だけなら一緒ですよね。でも、だからこそ「モナリザ」のような絵は相対的に「本物」の価値が高まる。

だけど、2次元のデジタルのアートやコンテンツに、物質的な「本物」は存在しません。どこにいてもスマートフォンなどで見ることができてしまう。そういうものを見るためにわざわざ出かける価値は、なくなってきている。逆に言えば、平面的でなく立体で複雑な空間の中に入れるもの、シークエンス(連続性)が無いものーーつまりライブ性があるものであれば、わざわざその場所に来る価値は高まるのではないか、と。

「チームラボ ボーダレス」は、そういったことを徹底的に考えた上ですべて設計されています。



杉山)普通の美術館なら入り口から出口まで1本道になっていて、あらかじめキュレーションされた作品を見ていくうちに、ストーリーが分かるようにできている。でもこのミュージアムにはそもそも順路が無い、地図すら存在しない。

ある意味、とても不親切ですが、それはあえて、なんです。道しるべがない代わり、来場者自身の身体を使い、この通路を行った先に何があるんだろうというワクワク感や発見したときの嬉しさが得られる。入る前にそれを理解してもらいたいから、エントランスに「さまよい・探索し・発見する」というコンセプトを掲示してあります。

流れている映像も、あらかじめ決められたものがずっと流れているのではなく、その場ですべてコンピューターが作り出しています。だから、二度と同じ景色は見られない。しかも自分が世界の一部となって、自分の行動で景色を変えられる。世の中とつながっているような気持ちになる。

それが、この空間が生み出した価値なんです。


変わらない強さ

杉山)オープンまで本当に不安でした。いったい、どのくらいのお客様が来てくれるだろうか、と。それまでに何度も展覧会を企画するなかで、「いける」と思ったものがコケることもあったからです。

オープン初日の朝、平日にも関わらず入場待ちの列が100メートル以上できていました。チケットもあっという間に完売に。夢を見ているようで、本当にうれしかった。

小学校の時から僕を知る友人からよくこう言われます。
「若いころからやりたいことが本当に変わっていない。だから強いよね。」

幸せだと思います。「街」と「アート」と「テクノロジー」という信念や、やりたいんだという気持ちを汚されることなく、今もここにいるから。


杉山央(すぎやま・おう)=森ビル株式会社 MORI Building DIGITAL ART MUSEUM 企画運営室長。2000年に森ビル株式会社入社。タウンマネジメント事業部、都市開発本部を経て、森アーツセンターでは六本木ヒルズの文化事業を手掛ける。18年6月、東京・お台場に開業した「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless」室長。一般社団法人MEDIA AMBITION TOKYO理事。

取材・文=錦光山雅子 写真=西田香織 編集=川崎絵美

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