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- 2019年09月01日 11:25
秋吉 健のArcaic Singularity:迷ったら、楽しい方へ!QWERTYキーボード搭載スマホ「Cosmo Communicator」の国内販売を受け、ハンドヘルドコンピューターの歴史や魅力を振り返る【コラム】
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筆者もシャープ製の「W-ZERO3」シリーズなどを好んで使っていましたが、初代W-ZERO3が登場した当時、スマートフォンという言葉は日本ではほとんど耳にすることがなく、PDA機能付きPHS端末などと呼ばれていたのを記憶しています。
W-ZERO3シリーズも時代に合わせて小型化や薄型化が図られ、より日本人の使い方に合った端末へと進化していきましたが、やはりマイナーなままにシリーズを終了しました。
そしてキーボードのないiPhoneが登場し、それを真似たAndroidスマホが大量に生まれ、瞬く間に世界を席巻していきます。それまでマイナーであったスマートフォンが、携帯電話すら飲み込んで駆逐してしまったのです。歴史的にも珍しいデジタルデバイスのパラダイムシフトが起こった瞬間でした。
そしてこれは、QWERTYキーボードという入力デバイスが一部の人間のみに好まれる方式であり、キーボードレスUIこそが万人に受け入れられるUIであったことを証明した瞬間でもありました。

■「楽しさ」はイノベーションを生み出す原動力
今時、QWERTYキーボード付きスマホを好んで購入する人は稀でしょう。キーボードを使いたければ普通のスマホにBluetoothキーボードでも接続すればいいじゃないか、と言われそうです。確かにその通りなのですが、それでは「面白くない」のです。ガジェットマニアやモバイルオタクと呼ばれる所以がそこにあることは自覚しています。
クリエイティブな仕事をする者にとって、面白いか面白くないかというのはとても重要です。漫画「宇宙兄弟」の中で、シャロン博士がこのような言葉を言っています。
迷った時はね、「どっちが正しいか」なんて考えちゃダメよ。
(中略)
「どっちが楽しいか」で決めなさい。
これは本当にその通りだと感じます。面白いと感じるものを選び、楽しいと思うことをする。それがモチベーションやインスピレーションを与え、素晴らしいアイデアとイノベーションを生み出していくのではないでしょうか。

売れないから、という理由で一時は日本市場から絶滅してしまったQWERTYキーボード付きハンドヘルドコンピューターやウルトラモバイルPCが、ここ数年海外から大量に輸入され国内で小さなブームを巻き起こしていることは、何かのヒントになりそうです。
人々はiPhone型のスマホに飽き始めているのかもしれません。かつてはiPhoneを手にし、指先だけでヌルヌルと動くUIやアプリを見て未来を感じ取りました。しかしあれから十数年。iPhone型スマホは何か進化したでしょうか。
キーのない長方形の板、というデザインは全く変わっていません。指で操作するUIも代わり映えしません。強いて言うなら、画面が大きくなってカメラがたくさん付きました。

Cosmo Communicatorもまた、新しいデザインではありません。むしろ懐古的でクラシカルなデザインなのですが、そこが大きなポイントなのです。古参のモバイラーには懐かしく、そして今の10代や20代の若者には目新しい。古い人間にも新しい人間にも「これで何ができるだろうか」、「これでできることを探してみたい」と思わせるのにふさわしいデザインです。
十数年というブランクが、古い人間である私たちに再び記憶とインスピレーションを呼び起こさせます。若者にとっては初めて触るQWERTYキーボード付きスマホになるかもしれません。その新体験こそが大切なのです。
みなさんも、iPhoneに飽きたらQWERTYキーボード付きスマホなどを試してみてはいかがでしょうか。何か新しいことへチャレンジしてみたくなるかもしれませんよ。

記事執筆:秋吉 健



