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中二病をドライブさせるアニメは嗜好品をちゃんと描いて欲しい

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 最近、うちのtwitterのタイムラインで『ロード・エルメロイII世の事件簿』のアルコールの描写について、目に留まるツイートが流れてきた。

 これは私も引っかかった。
 なぜシャンパングラスではない?
 そこに冷やしてあるのはシャンパンボトルか、万が一違うとしても白ワインのボトルではないか?

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 シャンパンにお似合いなのは細長いフルート型グラスで、シャンパンというワインの用途からいって、リムジンにあってもおかしくはない。しかし、ここではフルート型グラスではなくボルドー型グラス、しかもステムの短い安物っぽいやつが並んでいる。

そのうえ、グラスが下を向いているのでなく上を向いているときたものだ。ワイングラスに埃が入るのは避けられるべき事態なので、まっとうにワインをサービスする者はワイングラスを戸棚に入れるか、逆さまに「吊るす」。
  
 もし、このアニメが『Fate』の看板を背負っていなかったら、こうした描写は気にするほどのものではない。世の中には、ワインを何種類も混ぜ混ぜして料理をつくるなどという蛮行が描かれる作品や、赤ワインをワインクーラーでキンキンに冷やす作品も出てくる。それでどうということはない。気にならない作品では、特段に気に留める必要を感じない。
 
 しかしこのアニメは『ロード・エルメロイII世の事件簿』、『Fate』の看板を背負っている。『Fate』といえば中二病だ。背伸びした格好良さに焦がれ憧れ、中二病をギュンギュンと音を立ててドライブさせてナンボの作風ではなかったか。
 
 だから背伸びした格好良さに関連するガジェットは大切に描写しなければならないはずで、ガジェットをできるだけしっかり描いておかなければ中二病をドライブさせる差し障りになりかねない。
 
 この点では、『Fate Zero』は背伸びした格好良さをかなり大切にしていた、と思う。
 このブログ記事の冒頭のスクリーンショットは、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトが白ワインを飲むシーンだが、これはある程度の合点がいった。
 
 ケイネス先生のような人格の持ち主が飲む白ワインといえば、カリフォルニア産などではなく、ブルゴーニュ産の正統なシャルドネだろう。ボトルの形状や色もそれに合致する。そういう正統なシャルドネを飲むにあたり、このような大ぶりのブルゴーニュグラスを用いるのはもっともなことだし、これぐらいの量しか注がないのは香りを堪能するうえでは都合が良い。

唯一、ワインボトルを冷やしているのは引っかかりどころで、正統なシャルドネは冷やし過ぎると美味くなくなる。が、ぬるすぎても美味くなくなるし、気の利いたレストランではともあれ冷やせるように準備はしてくれる。
 
 ほかにも『Fate Zero』では、言峰綺礼のワインセラーを飲み荒らすギルガメッシュなどが登場するが、このシーンで登場するワインボトルとラベルの形状もなかなか凝っていた。
 
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 ボトルに、わざわざ「ラトゥール」「ジロンデ」といった表記があるのは大変好ましく、架空のボルドー高級ワインを想像したくなる。ただしこのシーンのギルガメッシュ、ステムの長いワイングラスに少々ワインを注ぎ過ぎている。あと、ワインは飲み干してから追加を注ごうよ。
 
 こうしたワインを嗜む現代的な作法については、さすがにケイネス先生に軍配があがる。
 
 これに限らず、『Fate Zero』は細かなガジェットをかなり頑張って描写していた。アニメを作る者とて万能ではないし、予算の都合もあるから、すべてを細かく描くことはできない。しかし背伸びした格好良さに関連したガジェットを細かく描くことには意味があり、『Fate』シリーズは、ボキャブラリーの点でもガジェットの点でも中二病が勃起するような細部によって成り立っている、と私はいつも思っている。

嗜好品や奢侈品は、伝記伝承のたぐいと同様、そうした細部を構成する重要なパーツになる。その点では、『Fate Zero』のいたるところで頑張った作品だったように思う。

中二病の神は細部に宿る

 アニメがサブカルチャーコンテンツとして幅をきかせるようになってどれぐらいの歳月が流れただろう。
 
 私のような中年までもがアニメを見るようになった2019年においても、多くのアニメが中二病的気分をドライブさせてくれる。中年になってなお、そうした中二病的気分がギュンギュン音を立てる瞬間は気持ち良いものだ。そうしたコンテンツを次々に輩出する界隈には感謝している。
 
 しかし気持ちの良く中二病のドライビングに身を委ねるためには、細部に瑕疵があって欲しくない。そういった瑕疵が増えるほど、中二病という心地よい夢を醒めやすくなってしまう。アニメは、記したいことを記すには適したメディアであると同時に、記したいと意図していない、手間と予算を省いた描写までもがひとつのメッセージとして解釈・咀嚼されかねないメディアだ。

だから、中二病をドライブさせるコンテンツの饒舌さに神が宿っていて欲しいと願うと同時に、手間と予算を省いた場所で神を追い払ってしまうことがないよう慎重であって欲しい、とも願う。
 
 コミック版を読むにつけても、『ロード・エルメロイII世の事件簿』という作品は、そういう中二病の夢、背伸びした格好良さをプロバイドしてくれると期待された作品だと思う。頑張れ、『ロード・エルメロイII世の事件簿』。なにせこれは『Fate』シリーズの時計塔の物語なのだから。

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