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- 2019年08月31日 21:10
今日、全国のコンビニからエロ本が消える…撤去される“成人向け雑誌”はこれからどうなる? 『日本エロ本全史』著者・安田理央×93年生まれのエロ本ライター・姫乃たまが緊急対談!
3/4ネットが敵になり始める00年代

——完全にCDの売り上げピークと一致していますね。
安「俺がエロ本の仕事をメインでやり始めたのは1993年だったかな。その頃はコンビニに売ってる雑誌で、10万部を超えてないとバカにされた時代でした」
姫「私の生まれた年だ。そんな部数は今じゃ考えられない。うらやましいですね」
——そして1993年にエロ本を始めた2年後には、『ウィンドウズ95』が登場します。
安「その頃はまだみんな、将来あれがエロ本の敵になるとは思ってなかったんです。ダウンロードも時間かかったしね。その過渡期的な産物として、“アダルトCD-ROM”ってのがあったんですよ。脱衣麻雀とかゲームが入ってて、インタラクティブなエロが楽しめる。で、俺は当時、それに強いライターとしてよく書いてたんですね」
姫「はっ、だからいまだに安田さんってちょっと機械に詳しい風を吹かしてるんですね」
安「いや、実際は全然詳しくなかったんだよ。当時のエロ業界はPCできる人少なかったってだけ(笑)。その頃はよく『PCの画面見ながらオナニーできるわけないだろ!?』って言われてましたね。当時のエロといえば本を開くか、テレビ画面で見るもので、『キーボードとかにかかったらどうするんだ!?』みたいに言われてた。それが今や、『え、本でオナニーするんですか? それ動かないですよね?』だもんねえ…」
——で、その次は、『ケータイのあのちっこい画面でシコれるわけないだろ!?』になるんですよね。
安「そうそう。時代は変わるんですよ」
——ネットのエロが広まるのはいつですか?
安「やっぱり00年代になってからですね。常時接続のADSLが流行ったのが大きいです。それまではネットもタクシー料金と同じでどんどん上がっていって怖かった。夜中から朝方にかけては定額になる『テレホーダイ』ってのがあって、みんな23時から始めてましたね。そして、自動でサイトを巡回するやつでネタを探してね」
姫「誰が?」
安「プログラムがいろんなところを回って、勝手に画像とか集めてくれるのよ。それで朝見るとたくさん獲れてて『よっしゃよっしゃ』って。そしてネットは何より、無修正が見れるってのが大きかったですね。その頃、俺はエロ本とか週刊誌に『インターネットで無修正丸見え!』っていう記事をすごい書いてました。というか、その手の記事はどれもだいたい俺が書いてた(笑)」
姫「『インターネットでエロ動画が見られるらしいぞ』っていう記事は、いまだに実話誌に載ってますよね」
安「そうそうそう、それも俺が書いてるんだよ。お年寄り向けに」
——その頃のエロ本ってDVDが付き始めましたよね?
安「2004〜06年くらいから付き始めて、2008年には一気に広まった感じですね。多分、PC雑誌の文化の流れだと思うんですけど、DVDの前はCD-ROMが付録に付いてたんですよ。その中にエロ動画が『QuickTime』とかで入ってた。尺が短くて、画像もこんなに小さくて、しかも粗い。それでも売れたんです」
——で、それがDVDへ発展していくと。
安「2006年創刊の『サルシキ』の影響が大きいですね。俺も全面的に関わってたんだけど、390円で全部撮り下ろしのDVD付きというすごいエロ本だったんです」
姫「あれカッコよかったんですよ〜」
安「それが結構話題になってね、それまで版元のワニマガジンは『DVD? え〜?』みたいな反応だったのが、『お、いいんじゃん?』となって全誌にDVDが付くようになり、他の出版社もそれに続いたという流れです。実際はそんなに売れたわけじゃないんだけど、話題にはなった」
——エポックメイキングなエロ本だったんですね。
安「エロ本が動画を撮るっていうやり方もできるんだと、当時は思いましたね。ところがそれも程なくして、動画素材をまるごとAVメーカーから借りて作るようになるんです。その端緒は同じく2006年に出された『一冊まるごとプレステージ』っていうエロ本です」
——『プレステージ』ってAVのメーカーですよね?
安「そうです。タイトル通り、全部プレステージからもらった素材だけで作った本です。で、それがね、売れちゃったんですよ。自分のところで何も作ってないから製作費が安いし、その頃はもうエロ本の売り上げも落ちてたので、『お、このやり方、いいな!』って」
姫「なっちゃうよねえ」
安「そして、それがだんだん当たり前になっていくんです。そこが多分一つの分岐点」
——カルチャーとしてのエロ本が、そこで終わってしまったんですね。
どん底に辿り着いた10年代

姫「ハメ撮りだったら、女優さんと撮る人が2人でホテルに行くだけでいいもんね。それにDVDにもしやすいし」
安「そう。それで一時期どれもハメ撮り雑誌になってしまった。その頃、俺も随分ハメ撮りしたな〜。で、撮らなかったらもっと安いということで、素材を全部借りるようになってしまったと、こういう流れです」
姫「AVの宣伝にもなるしね」
安「さらに言うと、ライターの費用を削減する流れになり、00年代後半から記事らしい記事は消えていったんです。そこから今に至るまでは、実はあんまり変わっていません。ひどい状況がずっと続いている感じですね」
姫「私はわりと最近までKKベストセラーズのエロ本で、多摩川の河川敷にエロ本を探しに行ったりだとか、そういう余裕ある企画をやらせてもらえたので幸せ者でした。結局、2年くらい前に休刊になってしまいましたが…」
——多摩川にまだエロ本は落ちてましたか(涙)?
姫「残念ながらありませんでした…。なので、河川敷にいたホームレスのおじちゃんにそのエロ本を献本して帰りました」
——なんだかいい話(涙)。
安「10年代に入ると、エロ本出版社がエロ本を作らなくなってくるんですよ。今でもちゃんとエロ本作ってるのは、三和出版だけだから」
——作らないで何をやってるんですか?
安「さて、ここでクエスチョンです!」
姫「エロふしぎ発見!」
【安田理央からのクエスチョン】
10年代に入ってエロ本を作らなくなったエロ本出版社は、今、何をやって糊口を凌いでいるでしょうか?
10年代に入ってエロ本を作らなくなったエロ本出版社は、今、何をやって糊口を凌いでいるでしょうか?
姫「え〜〜〜、何だろう…」
安「正解は、概ねクロスワードパズル雑誌を作ってます」
姫「あっ、確かにクロスワードパズルめちゃくちゃ作ってる!」
——なるほど〜! でもそれは正しいやり方ですよね。クロスワードパズルって高齢者向けだし、紙メディアでやる意味もあるし、コンビニでも売れる。
姫「うちの祖母もめちゃくちゃ熱中してます」
安「今、マガジン・マガジンがクロスワードパズルで一番の大手出版社だったと思うんですけど、その前身のサン出版ってエロ本で有名なところだったんですよ」
——もともとエロ本を作ってた人たちが、今はパズルを考えているんですか?
安「いやいや、パズルには作家がいるんですよ。編集者は彼らに発注して雑誌にしているだけです。だからエロ本がコンビニからなくなると、みんなクロスワードに移ってきてライバルが増えるって思ってるかもしれませんね」
姫「それにしても本当に実写のエロ本作ってるところなくなっちゃったね。エロ漫画ばかり」
——二次元でしかシコれない若年層が増えましたからね。
安「クロスワードパズルとエロ漫画だよね。コアマガジンは白夜書房のエロ部門的な出版社なんだけど、今は実写のエロ本は全く作ってないんじゃないかな。漫画ばっかりだよね」
姫「ワニマガジンも全部漫画になってるはずです」
安「有名なエロ本出版社だった英知出版はもうなくなったし、東京三世社もなくなった。KKベストセラーズもエロ本を作ってない。だからコンビニのエロ本って、インテルフィンとかブレインハウスとか、あんま聞いたことないところがいっぱい作ってたのよ」
——新しい出版社なんですか?
安「でも、たどっていくと古い出版社だったりするんですよ。インテルフィンもビデオ出版って老舗だったし。10年代後半っていうのは、エロ本出版社はもうエロ本作ってなくて、たくさん出してるのは聞いたことがないところばっかりっていう感じですね」
姫「私はエロ本でライターデビューしたのが2010年なので、ライターというより“おくりびと”みたいな感じだったなあ」
安「ホスピスみたいだよね」
姫「エロ本編集部が、どんどん会社の倉庫にされていくんですよ。デスクの島の誕生日席に担当さんが座ってたから、『偉くなってすごいじゃないですか!』って言ったら、そもそも島に一人ずつしかいなくて全員がお誕生日席とか。その部屋にはもはやその人しかいないとか…」
安「フロア丸ごとガラッと空いてて、誰もいない階があったりするんだよね」
姫「で、物置になって、やがてそのフロアに別のテナントが入って…」
安「某大手出版社もオーナーが変わって、自社ビルを売っぱらわれたりしてましたね。みんなベンチャーに買われちゃうんですよ」
——ベンチャーが弱ったエロ本出版社を買うのは不動産目当てですか?
安「そうですね。だいたい自社ビルを建てるとそのあと潰れます。象徴的なのは英知出版ですね。そういう歴史を見ていると、自社ビル建てるとろくなことがないって思いますね」
——会社がベンチャーに買収され、ビルも売っぱらわれ、もはやケツの毛もむしり取られたかのようなエロ本。時代の必然というにはあまりに悲しい。嗚呼、僕の古い友達、エロ本よ。君はどこに行ってしまうのか?



