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今日、全国のコンビニからエロ本が消える…撤去される“成人向け雑誌”はこれからどうなる? 『日本エロ本全史』著者・安田理央×93年生まれのエロ本ライター・姫乃たまが緊急対談!

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今日、2019年8月31日、日本全国にあるほとんどすべてのコンビニから「エロ本」がひっそりと消える。8月いっぱいをもって「成人向け雑誌」コーナーがコンビニから撤去されてしまうのだ。

残りわずか1列。まさに風前の灯火といった状態の成人向け雑誌コーナー(8月28日、都内某所にて)

そこで緊急対談として、折しも7月に日本のエロ本の歴史をオールカラーで伝える大著『日本エロ本全史』を上梓したばかりの安田理央さんと、歌手でありながら現役エロ本ライターとしても活躍する、93年生まれの姫乃たまさんにお越しいただき、このコンビニ撤去がエロ本に与える意味について語っていただいた。しかし、そこから見えてきたのは壮大なメディア史そのもの。エロ本、あるいは成人向け雑誌に限らない話だったのだ。

【取材・文/木下拓海 撮影/大本賢児 ヘアメイク/EMIKO SASO】

安田理央

1967年生まれ。ライター、アダルトメディア研究家。もともとエロ本ライターだったが、90年代からエロサイトの仕事も手がけ、紙からデジタルへの移行を目の当たりにする。またAV監督しても活躍。さらにハメ撮りしまくったDVD付きエロ本など、変革の時代の中、あの手この手であらゆるチャネルを通して世の中にエロを供給。その経験からアダルトメディアの歴史をライフワークとしている。

姫乃たま

1993年生まれ。ライター、歌手。デジタルネイティブな世代にもかかわらず、“エロがあれば何でもあり!”だった80〜90年代のエロ本を愛し、縁あって2010年からエロ本にライターとして参加。以降、廃刊の嵐を迎える中で、あたかも雨風から卵を守る母鳥のごとく、潮流から取り残された読者からのお便りコーナーを担当。並行して地下アイドル活動も展開し、2019年にメジャーデビューしている。

コンビニエロ本は18禁ではない

——というわけで、本日2019年8月31日、エロ本がほとんどすべてのコンビニから消えます。

姫乃たま(以下、姫)「もともとセブン-イレブンは、制限が厳しかったですよね…。表紙で下着はダメとか、水着でも下着っぽく見えるのはダメとか」

安田理央(以下、安)「だからエロ本出版社は、セブンに合わせてレギュレーションを決めてる場合が多いし、そもそも会社によってはセブンに入れてないっていうところもあった。コンビニ向けのエロ本って常にそういうことを考えて作っていたんですよ」

——基本的にエロ本って、コンビニ向けと書店などのそれ以外に分かれてるんですか?

安「そうですね。わかりやすいポイントは、18禁のマークが付いているのが書店売り。それが付いてないのはコンビニ売り。だからコンビニ売りのエロ本って本当は18歳未満でも買えるんです。成人向けではあるけれど、成人以外でも読んじゃダメってわけじゃない。両者は90年代からだんだん分かれる感じになっていったんですけど、00年代には確実に分かれましたね」

——コンビニの成人向け雑誌って、グレーゾーンなんですね。

姫「まるでノンアルコールビールだ!」

安「そうそう、あれも一応未成年はダメなんだよね。ダメなんだけどアルコールは入ってないから問題もない」

姫「コンビニ売りのエロ本って表紙の規制以外に、中身の規制もあるんでしたっけ?」

安「厳密にはセックスしていたらいけないとか…まあ、してるんだけど(笑)」

姫「モザイクかかってるから、建前上は全部セックスしてないことになるという…」

安「コンビニだと2人の身体がくっついてたらダメとかのルールがあるから、そこはモザイクをかけ直して大きくしてたよ。身体がくっついてないアピールするために

姫「あ〜、だからエロ本の編集部っていつもモザイクかけてたのか! なんでいっつもモザイクかけ直してるのかなって不思議だったんです。そっか、私が出入りしてたところはコンビニ売りの編集部だったもんなあ」

——今後はヌードグラビアのある一般誌とかはどうなるんでしょうか?

安「週刊誌のレギュレーションって、時期によって結構変わるんです。袋とじの中ならOKとか、おっぱい何個までならOKとかあるんですよね。『今号はもうおっぱい3つ使っちゃったから、残数がこれしかない』とか(笑)」

——なるほど、みんなギリギリのところで戦っているんですね。

安「今は、エロ本に限らず雑誌全体として難しいんですよね、コンビニ売りは。だけど書店売りと比べると、売り上げ規模が全然違うからそれに向き合わなきゃならない」

姫「特にコンビニのエロ本は、中身が立ち読みできないようにテープで封をされているから、表紙一発勝負みたいなところはありますよね」

安「表紙のエグい文句は、テープで閉じられちゃったからってよく言われてるよね。80〜90年代に人気のあった『URECCO』みたいな、表紙に文字がほとんどないようなかっこいいデザインのエロ本だと、中身が全然わからなくなる」

——それもこれも石原慎太郎元都知事のせいですよね。東京でコンビニのエロ本がテープで封印されたのも、ちょうど歌舞伎町浄化作戦をやっていた2004年の石原都政でしたし、今回のコンビニ撤去はオリンピック開催を見越しての対応とも言われているんですけど、そもそもオリンピックを招致したのも石原都政でした。障子をおちんちんで破る人だと思ってたのに、なんとも皮肉な話です。

コンビニは読者と雑誌を見放した


——さて、実際に各コンビニさんに聞いてみたところ、各社の対応は以下の通りでした。
セブン-イレブン(約2万1000店)
状況:本部としては、基本的に品揃えの判断はオーナーに委ねているため強制という形ではないものの、本当にごく一部の店舗を残して8月いっぱいで撤去。
理由:女性と子供が安心できる店舗づくりの一環として。

ファミリーマート(約1万6500店)
状況:8月いっぱいで本部推奨の取り扱いを中止。最終的にオーナーの判断に任せる形になるが、スズメの涙程度の店舗を残して8月いっぱいで撤去。
理由:女性と子供が利用しやすい店舗づくり。および訪日外国人の増加、そして東京五輪を見越して。

ローソン(約1万4700店)
状況:すでにほぼ全店で納品は中止しているが、8月いっぱいで完全に中止。8月31日以前に納品された分については売り場に残っている可能性もあるかもしれないが、おそらく数店舗レベル。
理由:女性と子供、今後ますます増加する訪日外国人など、すべてのお客様に気持ちよく買い物してもらうため。かねてより、子供連れのお客様からは「売り場の前を通りづらい」といった声をいただいていた。

デイリーヤマザキ(約1450店)
状況:全店舗において8月いっぱいで配本を中止する。9月1日以降は、すでに配本された在庫だけが残る形となる。
理由:社会的な情勢を考えて。従来のままでは女性と子供、訪日外国人が気軽に入れない。東京五輪開催を見据えてという理由もある。

セイコーマート(約1190店)
状況:2019年年内に撤去と報道されたが、8月いっぱいで入荷ストップする。在庫も含めて全店舗で撤去する。
理由:女性と子供が利用しやすい店舗にするため。成人向け雑誌を撤去した分、子供向けの絵本や女性誌を増やす。

ポプラ(約470店)
状況:本部からの強制はしない。そこは店舗の利益に関わる部分になるので、状況を見ながらオーナーとの協議の上で決めていきたい。
理由:基本はオーナーの判断に任せたい。ただ、成人向け雑誌はすでに5割の店舗でしか取り扱っておらず、いずれ間違いなく売れなくなると見ている。

※ミニストップ(約2000店)は、すでに昨年1月1日から全店舗で成人向け雑誌を撤去している。
——というわけで、ポプラさん以外、終了です!

安「本当の理由を単純に言うと、まあ、売れないからでしょうね。それに“エロ本ってどこからエロ本なのか?”っていう問題があるじゃない。もし18禁マーク付いてるのがエロ本だとすれば、もともとコンビニにはエロ本は置いてないということになる」

姫「ゾーニングも重要だけど、もしエロ本がコンビニを支えるほどの売り上げだったら、ここまで一斉に撤去されないんじゃないかなあ」

安「オリンピックをいい言い訳にしてるだけだと思います。売れてたらこんなことやらないよ」

姫「私は『Chuッ SPECIAL』や『ザ・ベストSpecial 極』など、何誌かで読者のお便りコーナーの担当をしていたんですけど、どこも高齢者の方からの投稿ばかりなんです。50代で若いかなという感じで、40代が来たらもうルーキー(笑)。エロ本を担う若手読者の星って感じでした」

——今エロ本を読んでいる人たちは、やはり先輩方たちなんですね。

姫「脚フェチのエロ本は特に年齢層が高いので、70代の方からのお便りも珍しくありませんでした。読者の皆さんから寄せられた手紙には、普段人に言えないような性癖が書いてあって、文通を重ねていくと身の上話が書かれたお便りが届くようになります」

——どんな身の上話が書かれてあるんですか?

姫「一人暮らしや実家で老老介護をされている方がほとんどで、身体に障がいを抱えている方も多くいました。しかもそうした事情から家をあまり出られないのに、インターネットを使えない人がほとんどで…。時々コンビニに出かけてエロ本を買うのだけが楽しみっていう、地方の一人暮らしの老人が多いんです

——特に今の地方は書店がないですからね…。

姫「私は今回のコンビニ撤去については、そういう人たちに対してどうしたらいいんだろう? って思うんです。ただそれだけです」

安「もう介護だよね」

——彼らこそが社会的弱者なんですね。

姫「コンビニにとってエロ本は売り上げにならないし、オリンピックのほうが大事なのはわかるんですけど、経済では語れないところにも大事なことってあって、今まで文通してきたようなおじいちゃんたちの人生の楽しみを奪ってどうしようっていう動揺が私にはあります。ただ、そんなことはごく少数派の気持ちでしかなくて、将来ある子供たちの目に触れさせたくないという意見は重要だし正しくて、だからこそ複雑な気持ちです」

安「そして次は、雑誌自体がコンビニから撤去されるってことなんだと思いますよ

——!!!!!

安「新規でオープンした店やリニューアルした店って、もう雑誌コーナーが店の奥のほうにたった一段しかないんですよね。昔は入り口のところにバーンとあったけど、あれを見ると雑誌って今はもう売れないんだなって」

姫「昔はコンビニの窓から女性誌を見つけて立ち読みして、その後ろの棚に化粧品が売ってるから相乗効果がある、なんて言われてましたけど、今はもうテープで閉じられてることが多いから立ち読みしないし、そもそも雑誌の棚が追いやられたりしていて、それどころじゃないですもんね」

——もはやエロ本に限らない、時代の必然的な流れなんですね。

安「それにコンビニは売るものが他に増えてきてるから。エロ本のライバルって、プリペイドカードらしいんですよ

姫「あ〜確かに、プリペイドカードの棚って最近幅をとってる! iTunesとかAmazonのやつとかですよね」

安「あれってコンビニ側からすると、すっごい都合がいいんです。まず単価が高いでしょ、そしてレジでアクティベートしないと使えないから万引きがない」

——なるほど。それでそのプリペイドカードを使って、オンライン上でエロコンテンツを買うと。

安「そうそう、DMMとか結構ありますからね。そして今のエロ本は予算がなさすぎて編集者が記事を書いてる場合が多く、ライターはもう書かせてもらえないんですよ。だからライター側からするとコンビニに置かれなくなっても、もはや関係ない話だし、別にどうでもいいやってことだと思うんですよね。実際に、俺もう全然エロ本書いてないもん」

姫「私も連載してたエロ本がどんどん休刊して、今は『FANZA』しか書いてないなあ。それもビデオ情報誌でのAVレビューなので、エロ本の記事を書くのともまたちょっと違うんですけど」

——ガワとしてのエロ本はあっても、中身としてのエロ本はもうとっくに終わっていたんですね…。さて、次のページからはそんなエロ本の歴史に迫っていきます。使い捨てカメラの「写ルンです」は、エロ本に革命をもたらしたんですよ。飲み会で披露したい話がてんこ盛りです!

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