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産経新聞【正論】プラごみ入り口に海洋問題を

 海の危機が一段と深刻化している。人類の社会・経済活動の結果であり、今を生きるわれわれには500年、1千年後の社会に健全で美しい海を引き継ぐ責任がある。海水温の上昇や酸性化対策、漁業資源の保存に向け、世界は国連を中心に国際機関や基準を設けてきた。だが、統括する国際機関がなく、縦割りの弊害が持続可能で効果的対応を難しくしてきた。

≪海洋管理の国際機関新設を≫

 2017年の国連海洋会議で、日本財団は海洋を総合的に保全する政府間パネルの設置を提案した。各国の反応は今ひとつの感が強かったが、深刻化する海洋プラスチックごみ(海洋プラごみ)問題を前に雰囲気が大きく変わる兆しが出てきた。

 プラスチックごみは先進国、途上国を問わず、誰もが日常的に接する身近な問題であり、国際社会が海の危機に対し足並みをそろえる格好の「入り口」ともなる。あらためて海洋を総合的に管理する国際機関の設置を訴えたい。

 海に流れ込むレジ袋やペットボトルなど海洋プラごみは世界で年間500万~1200万トン、日本では2万~6万トンに上ると推計されている。6月に大阪市で開催された主要20カ国・地域(G20)首脳会議では、海洋プラごみによる新たな海の汚染を50年までにゼロにする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が打ち出された。

 世界では現在、サトウキビなど生物資源を原料にしたバイオマスプラスチックや間伐材を利用した木製ストローなど新素材の開発が活発に進められている。海底に堆積したごみの回収処理施設の整備から、地球にやさしいゴミ拾いスポーツまで多彩な取り組みも広がり、G7海洋プラスチック憲章を打ち出した昨年の先進7カ国(G7)首脳会議のホスト国カナダのように、使い捨てプラスチックを21年に禁止する動きもある。

 日本政府も大阪のG20に先立って30年までにプラスチックの再生利用を倍増させる、などを内容としたプラスチック資源循環戦略を打ち出すとともに、政府開発援助(ODA)や国際機関を通じて途上国の廃棄物分別収集などを支援する考えだ。

≪公海にも拡大する海の危機≫

 われわれも「日本財団 海と日本プロジェクト」の中に、海ごみ対策を中心とする「CHANGE FOR THE BLUE」プロジェクトを立ち上げ、海洋ごみの実態調査や幅広いステークホルダーと連携した対策モデル構築など多彩な取り組みを進めている。

 海は大量の海洋ごみのほか、二酸化炭素(CO2)の排出増加に伴う海水温の上昇や酸性化、乱獲による漁業資源の枯渇などが急速に進んでいる。世界168カ国が批准する海の憲法「国連海洋法条約」(UNCLOS)は地球の7割を占める海のうち、各国の沿岸から12カイリ以内を領海、200カイリ以内を排他的経済水域(EEZ)とし、それ以外の3分の2の海域を各国政府の管轄外となる公海としている。

 近年、海水温の上昇に伴い、主な魚種の8割以上が繁殖に必要な温度環境を求め、極地方向あるいは深海に移動しつつあるとされ、ただでさえ漁業資源の枯渇で危機に瀕(ひん)している世界の漁業は一層、厳しい状況に追い込まれている。

 さまざまな議論があるようだが、地球温暖化―海水温上昇の主因が化石燃料によるCO2の放出にあるのは間違いない。海の危機は公海にも広く拡大しており、国際社会は公海に関しても環境保全に向け、節度ある協力態勢を確立する必要がある。

 とりわけ海洋プラごみに関しては、海に流出後、波や紫外線の影響で5ミリ以下に砕けたマイクロプラスチックの分布状況や魚介類の摂取を介した人体影響の解明が急務である。

 17世紀のオランダの法学者グロチウスが唱えた「自由海論」に基づき、いまだに海の自由な利用を唱える向きもあるが、当時、10億人に満たなかった世界の人口は70億人に増えた。海の劣化は、こうした変化を意識しないまま経済活動を拡大、化石燃料の大量使用を続けた結果である。

 海はこれ以上の負荷に耐えられない。国際社会はこの事実を厳粛に受け止め、G20が打ち出した海洋プラごみゼロの目標に立ち向かうべきである。個人としては、目標年を50年より早め、各国が法的な拘束力を持つ協定を取り交わすような、より積極的な対応こそ必要と考える。

≪母なる海は一つで結束を≫

 安倍晋三首相は7月15日に行われた「海の日」総合開会式にビデオメッセージを寄せ、海洋プラごみ問題が世界的に深刻化している現状を指摘した上で、「海洋国家日本がリーダーシップを発揮して、新しい令和の時代を海とともに歩む」と語った。

 海の再生は〝待ったなし〟である。国連加盟国は現在、193カ国に上るが、「母なる海」は一つだ。国際社会は今こそ結束して行動を起こさなければならない。古(いにしえ)から海の恩恵を受けて発展してきた日本が、その先頭に立つべきは言うまでもない。

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