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“楽曲は無料、ライブも無料”の時代を--日本の音楽業界に挑む米国人シンガー

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YouTubeでの人気に目をつけたのか、『HEY! HEY! HEY!』にゲストで呼ばれた。日本語の曲をカバーしているあの外国人がテレビ番組に出演する――。YouTubeの視聴者の間で期待は高まった。しかし当時、YouTubeはまだJASRACなどの権利者団体と契約を交わしていなかったため、ネルソンさんの行為は著作権侵害にあたる。そして放送前日という絶妙なタイミングで、ネルソンさんのYouTubeアカウントは停止。アップロードしていた動画もすべて削除された。

「『HEY! HEY! HEY!』に誘われたまではYouTubeのおかげだった。でも放送に合わせて圧力があったのかも…。アメリカのアーティストはYouTubeなんて無料の宣伝媒体として使っているわけだから当然気にしない。特に最近はYouTubeがないとプロモーションは無理と言ってもいい。『オレの新曲をみんなカバーして。その中で一番よかったやつに賞をあげるよ』みたいな取り組みが定番。みんなでそうやって楽しむの。まさにコミュニティを作るというマインド。けど、日本だと権利関係がうるさすぎて無理だよね」

日本の音楽業界は、人々に本当に音楽を楽しんでもらおうと考えているのだろうか――。CDが売れない時代。誰にも興味を持たれない音楽ランキング。音楽と人々の間に「大きな壁」を感じた。ネルソンさんが日本でバンド活動を開始した背景には、それを取り払いたいという想いがあった。

■日本の音楽業界のダメなところ

nothing ever lasts
音楽を取り巻くいまの環境について語るネルソンさん

——日本とアメリカの音楽業界って違いますか。

ネルソン:全然違いますね。日本はずっと変わってないんです。70年代、80年代からずっと。アメリカはだんだんと柔軟になっていった。もともとビジネスは同じなんですが、アメリカは先にナップスターが流行った。1990年代のアメリカの音楽業界は数年前から今の日本の音楽業界と似ていると思います。当時はすぐ売れるアーティストだけを探して、また捨てての繰り返しだった」

——アメリカは一足先に変わらざるを得なかったと。

ネルソン:それだけナップスターの衝撃が大きかった。ビジネスとアーティスト、2つの目線がある。ビジネス的にいえば、音楽は儲からなくなったし、メジャーレーベルはもうすぐなくなると思います。ソニーやユニバーサルのようなデカイ会社はやっていけなくなる。だけどアーティスト的には、こんなにワクワクする時代は今までになかったと思う。YouTubeに動画をアップロードするだけで、あるいはSound Cloudを使うだけで、世界中の人々に作品を聞いてもらえる。いい作品ならすぐにFacebookやTwitterでシェアされる。壁がなくなったんです。

——アーティストと受け手が近づいた、ということなんですかね。

ネルソン:そういうことだと思う。1990年代のアメリカと今の日本の音楽は似ている。メジャーレーベルは「今売れるもの」しか求めない。アーティストがどんなにいい音楽を作っても、『この曲は売れるか』という壁が立ちはだかる。作曲家もいっぱいいるし、それを演奏する人もいっぱいいる。自然と『この曲は売れているアイドルにやらせればいいじゃん』となる。日本は、その壁を越えようとしているんだけどなかなか越えられていない。今のアメリカには壁が全然ない。とりあえず好きな音楽を発信できるようになった。

——でもその一方でビジネスモデルはどうなるんでしょう。アーティストと人々が直接つながったとしても、誰かがビジネスの世話をしないといけない。

ネルソン:アメリカではもうCDはほぼ存在していない状態ですよね。ライブ会場で売られたり、手渡ししたりするくらいで。タワーレコードだって潰れましたから。だけどデジタル配信はすごく盛んです。誰でも無料で使える「Bandcamp」というサービスがあるんですけど、これがあれば世界中のインターネットユーザーに好きな値段で音楽を配信できる。アーティストが得られる利益は85%ぐらい。日本でiTunesを通してやると50〜60%くらいしか返ってこない。Google MusicもどんどんBandcampの値付けに近づいてきています。

BandcampならiTunesというプラットフォームだけでなく、自分のサイトやFacebookページなど、どこでもウィジェット貼り付けて配信したり、販売したりできる。もちろんiTunesはシェア1位だけど、だんだんそれが変わってきています。

nothing ever lasts
アーティスト向け音楽配信プラットフォーム「Bandcamp」

——Bandcampってサービス、初めて聞きました。

ネルソン:PayPalで全部決済できるからアメリカだとかなり浸透しています。在庫を自分で持っていれば、普通のCDパッケージも販売できるし。新しいプラットフォームになりつつある。最近は日本でもBandcampを使っているバンドを見かけました。ジワジワと広まっているかもしれないですね。無料で配信できるしお客さんに値段をつけてもらうこともできるのがいい。

■楽曲が無料でも「ムーブメント」になれば収益は上げられる

——「楽曲そのものは無料」という時代も近いんですかね。

ネルソン:そうですね、もうアーティストがCD販売はもちろん、音源の流通で生活していくのは無理でしょう。じゃあどこで生活するかというと、ライブや物販になる。でも、ライブ音源なんかはほぼ無料で配信されています。YouTubeやUstreamなんかにはけっこう公式のコンテンツがある。COACHELLAという有名な音楽フェスは全編YouTubeで生配信されました。日本ではありえないと思うけど、アメリカはそうやって盛り上げるしかない。無料で見せて「もっと見たい」と思わせる。で、それぞれのアーティストのライブを直接見に来てもらう。アーティストはもうお金持ちにはなれかもしれない。でも絶対に音楽で生活はできるはず。

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