記事

イギリス王室スキャンダルとEU離脱で国は完全に崩壊する

Getty Images

11世紀から続くイギリス王室に危機

[ロンドン発]市民生活と企業活動を大混乱に陥れる「合意なき離脱」に突き進む英国が国体(国のかたちのこと)崩壊の危機に瀕しています。欧州連合(EU)とケンカ別れしても、保護主義に走る米国と貿易協定を結べば大丈夫とうそぶくボリス・ジョンソン首相は「千年王国」をバラバラにしてしまう恐れが大きく膨らんでいます。

現在の英王室はウィリアム1世が1066年にイングランドを征服したのが始まりです。それが「千年王国」と呼ばれるゆえんです。

イギリス王室の祖となったウィリアム1世=Getty Images)

「合意なき離脱」になれば、EU残留派が多い英・北アイルランドとスコットランドで住民の不満が強まるのは必至です。アイルランドと北アイルランド間に「目に見える国境」が復活。英国からの分離とアイルランドへの統合を主張してきた北アイルランドのカトリック系住民は住民投票を要求して南北アイルランド統一を目指すでしょう。

スコットランドはイングランド・ナショナリズムに反発して2回目のスコットランド住民投票を実施して独立に邁進するのは間違いありません。こうしたことは、祖国に献身的に尽くしてきたエリザベス女王にとっては絶対に避けたいシナリオです。エリザベス女王が元首を務める15カ国を含む英連邦に与える衝撃も計り知れません。

昨年9月、EU残留派が北アイルランドで実施した世論調査では、英国残留派は39%にとどまり、南北アイルランド統一派は52%に達しました。今年3月のアイリッシュ・タイムズ紙の世論調査では南北アイルランド統一の賛否を問う住民投票の実施に賛成は38%、反対は45%。住民投票が行われたら統一に賛成が32%、反対が45%と逆転していました。

英保守党の元上院議員で実業家のマイケル・アシュクロフト氏がスコットランドの独立を問う2回目の住民投票について世論調査を行ったところ、実施に賛成が47%、反対が45%。明日、住民投票が行われたら独立に投票するが52%、反対するが48%にのぼっていました。

ジョンソン首相らEU離脱派のスローガンは「EUから主権を取り戻せ」でしたが、「合意なき離脱」を強行するとイングランド・ウェールズと北アイルランド、スコットランドの領土保全を維持するのが難しくなってきます。エリザベス女王が「抜かずの宝刀」である君主大権を行使して「合意なき離脱」を防ぐシナリオもまことしやかに囁かれています。

エリザベス女王(左)とアンドリュー王子=Getty Images

イギリス王室・アンドリュー王子の性的スキャンダル疑惑

英国が直面している危機はそれだけではありません。英国は立憲君主制国家ですが、国の根幹をなす王室の信頼が大きく揺らいでいるのです。

英王室はチャールズ皇太子と故ダイアナ元皇太子妃のダブル不倫、離婚、パパラッチに追い回された元妃の交通事故死で存続の危機に立たされた苦い経験があります。今、英王位継承順8位のアンドリュー 王子(59)が、勾留中に首吊り自殺した米国の大富豪ジェフリー・エプスタイン被告(66)の児童性的搾取疑惑に巻き込まれて、大変な騒ぎになっています。

アンドリュー王子は命の危険を顧みず、1982年のフォークランド紛争に従軍した国民的英雄ですが、交際した女性はモデルやボンド・ガールら1000人を超えると言われるほどのプレイボーイ。エプスタイン被告が未成年者買春で有罪判決を受けた後もニューヨークにある被告の高級マンションに出入りしているところを撮影した動画を英大衆紙にスクープされました。

エプスタイン被告の「性奴隷」にされた当時17歳の女性から「アンドリュー王子と3度寝た」と告発され、「王子に胸を触られた」「王子が若いロシア人女性に足をマッサージしてもらっているのを目撃した」といった見出しが連日、タブロイドの1面を賑わせています。

英王室は「アンドリュー王子はエプスタイン被告の容疑に関する最近の報道に愕然としている。王子はいかなる人的搾取も遺憾としており、そうした行動を許容し、参加し、促したと示唆されるのは耐え難いことだ」と疑惑を全面否定。王子本人も「逮捕や有罪につながる、いかなる行動も目撃せず、疑いもしなかった」と身の潔白を主張しました。

しかし、英王族が刑事、民事にかかわらず、米国の法廷に呼ばれて、証言台に立つ事態になったら大事です。交通事故を起こしたのに被害者に謝罪もせずに現場から姿を消したフィリップ殿下(98)が厳しい非難にさらされたことからも分かるように、王族だからと言って、どんなことをしても許される時代は終わっています。

Getty Images

セレブ生活送るヘンリー&メーガン夫妻にイギリス国民が激怒

第一子アーチーちゃんの出産をきっかけに、王族の一員というよりセレブぶりを発揮し始めたメーガン妃と、その言いなりになっているヘンリー王子への批判も強まっています。ウィリアム王子とキャサリン妃と袂を分かち、240万ポンド(約3億1100万円)かけて改装したロンドン郊外ウィンザーのフロッグモア・コテージに引っ越したのが始まりです。

英大衆紙サンによると、米ニューヨークでのベイビーシャワー(出産前に妊婦を祝うパーティー)に33万ポンド(約4300万円)、ジバンシーの詰まった洋服ダンスに78万7000ポンド(約1億200万円)。

メーガン妃の38歳の誕生日を祝うためスペインのリゾート・イビサ島にプライベートジェットで往復。プライベートジェットのチャーター代は片道2万ポンド(約260万円)。イビサ島6泊のご予算は12万ポンド(約1555万円)。

ダイアナ元妃と親しかった人気歌手エルトン・ジョン氏に招かれて南仏ニースの別荘で7泊した際もプライベートジェットで往復したことから、サン紙は「環境を保護する闘士のヘンリー王子とメーガン妃がプライベートジェットで温室効果ガスをまき散らす」と批判し、メーガン叩きの火に油を注ぎました。

そもそも英国のEU離脱(ブレグジット)の原動力の一つは、グローバル化とデジタル化のあおりで負け組に転落した「ホワイト・アンダークラス(白い負け組)」の怨念です。彼らはアフリカ系のメーガン妃が贅沢三昧の生活をしているように見えることに怒りを膨らませています。

戦費がかさみ、大英帝国が崩壊した第二次大戦後、国民とともに苦難の道を歩んできたエリザベス女王は、宮殿の電気を一つひとつ消して回り、晩餐会の残り物も無駄にしない倹約家として国民から尊敬されてきました。米国出身のメーガン妃にはこうした英国の文脈が全く分からないようです。

保守系の読者が多い英大衆紙デーリー・メールにも「英国に王室なんてもういらない」という意見が寄せられる事態になっています。不人気なチャールズ皇太子とカミラ夫人の代になったら「チャールズ国王」を国家元首として仰ぐことを辞退する英連邦の国が続出し、英国内でも共和制への移行を求める声が大きくなってくるかもしれません。

あわせて読みたい

「イギリス王室」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    旧民主の悪夢 八ッ場ダムに脚光

    早川忠孝

  2. 2

    バレーのジャニ依存 海外で批判

    WEDGE Infinity

  3. 3

    台風19号にみる野田前首相の英断

    早川忠孝

  4. 4

    素人の台風撮影に頼る報道へ苦言

    krmmk3

  5. 5

    日本がラグビー界に衝撃 海外紙

    文春オンライン

  6. 6

    ラグビー主将が忘れぬ日本の募金

    文春オンライン

  7. 7

    避難所のホームレス拒否は差別

    大西連

  8. 8

    横浜・鶴見川 今後も氾濫の危険

    かさこ

  9. 9

    台風時に多摩川で泳ぐ男性に批判

    文春オンライン

  10. 10

    「命を守れ」で途方に暮れる都民

    やまもといちろう

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。