- 2019年08月28日 10:34
2030年の世界:知っておきたい9つのメガトレンド
1/2アンドリュー・S・ウィンストン
MIT Sloan Management Review から転載
2030年、私たちはどんな世界を生きているだろうか?
私は未来で起きることを予想するようなタイプではない。どちらかというと、今日の世界をかたちづくる移り変わりの速いメガトレンドの中で、いまここで起きていることに目を向ける現在主義者だ。しかし、クライアントからは2030年の世界でどんなことが起きているか、メガトレンドを教えて欲しいと頼まれる。だからそんな時は、11年後の世界がどうなっているかというある程度予想はついていると答える。
私たち人類が進み、選ぼうとしている方向は、人の生活やキャリア、企業、世界に多大な影響を与えるだろう。2030年までに、9つのメガトレンドがどうなるかーー。私の予想は次の通りだ。リストは確実性の高いものから並べている。
近い将来、起こりうる9つのグローバル・トレンド
人口動態
世界の人口は今よりも約10億人増え、平均寿命も延びる。2015年に73億人だった世界人口は2030年までに85億人に到達する。最も速く増加する層は高齢者だ。2030年までに、65歳以上の人口は10億人に達する見込みだ。
この層の大半が経済的には中流階級であり、極度の貧困層は減り続ける。しかし中流階級が増えるにも関わらず、ピラミッドの最上段を占める新たな富裕層の割合は大きな課題であり続けるだろう。とは言え、特に気候変動などのメガトレンドは、人口増加を鈍化させるか、現在の予想とは異なる結果をもたらすだろう。
都市化
2030年、私たちの3分の2は都市に住んでいるだろう。都市化が進み、メガシティ(巨大都市)や小・中規模の主要都市がさらに誕生してくる。人が集まる多くの人気の都市で、生活費が上がる。より大きなビルが必要になり、レベルの高い管理テクノロジーも必要になる。
ビッグデータやAIによって、ビルの効率化がさらに進むだろう。それから、食料がもっと必要になる。生産地から多くの人が暮らす都市へ運ぶが、アーバン・アグリカルチャー(都市農業)を迅速に増やしていくという方法もある。
透明性
世界はさらにオープンなものになり、プライベートという括りが少なくなってくるだろう。すべてのものを追跡・監視するという傾向がどこまでも行き渡ることは想像に難くない。しかも一方通行の追跡だ。すべての人やモノ、組織に蓄積される情報量は急速に拡大する。特に顧客や消費者に対して、情報を共有するプレッシャーは増していくだろう。
情報分析ツールがより発達し、一部の意思決定は簡単にできるようになるだろう。例えば、二酸化炭素の排出量の少なさ、労働者の最高賃金、有害物質の少なさなどを基準に、商品を選ぶことが簡単になるだろう。しかし、こうしたツールはどれも使われる過程でプライバシーを保護することはないだろう。
気候変動
気候は急速に変わり、異常気象がどこでも発生するということが続くだろう。すべてが予想した通りに発生するかどうかはまだ不確かだが、気候が急激に、危険なほどに変わっているということは疑いようもない事実だ。大気圏の活動と経済・人間の活動のバランスを考えることが、わずか11年間にどんなことが起きるかをより正確に予測する手助けになるだろう。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球の平均気温の上昇を産業革命前の水準から1.5℃に抑制するために、二酸化炭素の排出量を迅速に減らすことがどれだけ重要な意味を持つのか明確にしている。しかし、現在の各国政府のコミットメントを見ると、そう簡単なことではないだろう。
理論上、各国政府は2015年に採択されたパリ協定で、平均気温の上昇を産業革命前から2℃未満に抑えることに同意してはいる。しかし実際には、いま各国がコミットしているのはせいぜい3℃上昇させないというところだ。現状のままだと、2030年までには1.5℃上昇するだろうし、それに向かっているのが現実だ。
気候変動が引き起こす結末は容赦のないものだろう。人口密度の高い沿岸部の多くは、海面が上昇することで、共通の課題を抱えるだろう。自然界はさらにはるかにその豊かさを失い、多くの種の集団が壊滅的に減少し、サンゴ礁などの生態系は全滅する恐れもある。
干ばつや洪水は世界の穀倉地帯に打撃を与え、主要穀物の生産地域も変わっていく。北極圏は夏、氷がなくなるだろう。もちろん船が通れるようになるので、サプライチェーンを短縮できるという利点はあるが、ピュロスの勝利のようなもので、払う犠牲に比べて得るものが少なく、割に合わないだろう。
海面上昇や水源が変わることで、居住地を移さなければならない大規模難民が生まれ始めている。2030年までには、それ以降の数十年がどんな状態になるのかより明確になるだろう。私たちは生きている間に、主要な氷床が溶けることで多くの海岸沿いの都市が浸水するかどうか、そして、人の住めない地球に本当に近づいているのかどうかを知ることになるだろう。
資源不足
さらに積極的に資源不足問題に取り組まなければならなくなるだろう。経済成長に合わせて、金属などの主要な鉱物資源の埋蔵量を保つためにも、早急に循環型モデルに移行する必要がある。例えば、新たに採掘した資源を使用する量を減らし、リサイクルしたものや再生製品を使用すること、そもそもの直線型の経済を見直すといったことが必要だろう。
水は不足している資源だ。多くの都市が頻繁に水不足に直面するようになると考えられている。水に関するテクノロジーや、水不足問題の解決策となる脱塩技術へのさらなる投資が求められている。