- 2019年08月27日 11:26
【読書感想】野球消滅
2/2野球を始めた少年の9割にとって、野球人生のゴールは高校野球だ。自分が18歳を迎えるまで、野球とどのように関わっていきたいのか。甲子園を目指して懸命に努力を重ねる球児がいれば、野球を楽しむことを第一に取り組む者や、受験との両立を掲げる学生がいてもいい。チームの目的次第で、週の活動日数や練習時間も変わってくる。
一方で高校野球の先に大学やプロを見据える1割の場合、「甲子園を目指して徹底的に追い込み、その先に上の世界がある」という考え方もあれば、「高校野球で酷使されて壊されたくない。甲子園も目指したいが、それよりプロに行ける可能性を重視したい」という進学先の選び方もあるだろう。
ただし気をつけてほしいのは、メディアの前では綺麗事を言う一方、クローズドの練習場では異なる振る舞いをする監督もいるので、保護者や子どもは指導者やチームの本質をしっかり見極めることが必要だ。
高校野球を運営する日本高野連に対しては、現状のトーナメントよりリーグ戦の導入を求めたい。一発勝負のトーナメントでは弱肉強食の世界となりやすく、強い者ばかりが多くの肉を得て、弱い者との機会の均等性が保てなくなるからだ。子どもの野球離れが進むなかで「200年構想」を目指すには、強い者だけではなく、多様な者が幸福に生きていけるような全体設計が大切になる。
著者は、日本の少年野球、高校野球での「勝利至上主義に伴うケガの多さ」を指摘しています。
アメリカではケガをさせた指導者は訴えられることがあり、ドミニカでは中学生は「プログラム」というカテゴリーのチームに所属して大切に育てられ、16歳以上でメジャーリーグの球団と契約した場合、その契約金の10~30%が指導者に渡るシステムになっているそうです。
日本の甲子園のような注目される大会がないため、指導者は長期的な視点で選手を育成していくのです。
それが、指導者自身のためにもなる。
著者は、日本で野球をやっている子どもたちが、それぞれ異なる目的を持っていることが問題を難しくしている、と述べています。
今年の夏の甲子園大会で、大船渡高校の佐々木朗希投手が甲子園出場をかけた岩手大会決勝に登板しなかったことに、さまざまな意見が出ました。
「この試合で佐々木投手を起用するのは、ケガのリスクが高いと判断したので、出場させなかった」
この判断は、正しかったのかどうか。
実際は、公にできない身体のトラブルがあった可能性もありますが。
佐々木投手本人にしてみれば、もちろん甲子園に出たかったとは思いますが、これからの人生で数十億円稼げるかもしれない自分の身体のことを考えて、無理をせずにはいられない試合を回避するのは妥当な選択ではあります。
しかしながら、ほとんどのチームメイトにとっては、甲子園に出ることは、彼らの野球人生にとって最大の目標だったはず。彼らはそれなりの犠牲を払っても、あの試合に勝ちたかったはずです。もちろん、佐々木投手を生贄にしたい、とは思っていないだろうけど、ここまで来たのだから、多少は無理しても……と僕だったら考えたでしょう。
それは、もちろん彼らにとっては「正しい」のです。
目指すものが違う選手たちが、同じチームでプレーしているのが高校野球である、というのが最大の問題点なのだけれど、どんなにすごい選手でも、ひとりで野球はできない。
観客は「悲運のエース」も「強打者の全打席敬遠」も「熱中症になりかけてフラフラ」も、「物語」にしてしまう。
「正解」がないからこそのドラマ、という面もあるのです。
なんのかんの言っても、僕もやっぱり「野球」が好きなんですよ。観るほうばかりですけど。
でも、「1日は24時間しかないのに、3時間も他人が野球をやっているのを熱心に観ているほど暇じゃない」という人たちの気持ちもわかります。
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