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自民党がもくろむ貸金業法の「改正」

 2010年6月より改正貸金業法が完全施行になりましたが、主な改正点は、
 ①グレーゾーン金利の撤廃
 ②過剰貸付の禁止
です。
 これによって、長らく貸金業者の利潤の源であったグレーゾーン金利がなくなり、出資法の上限金利も引き下げられ、利息制限法に上限利率が統一されることになりました。
 これによって、貸金業に対する規制は強化されることになりますが、その結果、サラ金は、従来のような貸付を増やすだけ増やして利益を上げるということはできなくなりました。

 そのため、貸金業者を中心に、貸出の上限金利の引き上げを求める声が上がっていました。これでは借りたい人が借りられずヤミ金融のような非合法なところからお金を借りてしまう、その方が社会問題だと主張するのです。
 これに呼応するかのように自民党財務金融部会の「小口金融市場に関する小委員会が、5月23日、改正貸金業法などについて事務局による改正案を承認したと報じられています(ロイター2012年5月23日配信)。
 その内容は、「利息制限法と出資法を見直し、上限として年利30%をめどとする変動金利制の導入や、貸金業法を見直し、返済困難者へのカウンセリング制度を強化する代わりに総量規制を撤廃することなどを盛り込んでいる。」
というものです。
 そして、その記事の末尾には、
借り過ぎで生活が破綻する多重債務問題への対策の側面があったが、総量規制に抵触する借り手がヤミ金融に流れるなどの問題も指摘されている。」
と結んでいます。
 しかし、その指摘は正しいのでしょうか。

 2000年には出資法の上限金利が引き下げられ、それまでの年利40.004%が29.2%に引き下げられました。あまりにも40.004%という年利が高金利に過ぎ、サラ金に対する批判も強まっていたからです。
 この頃からヤミ金融が社会問題化してきます。
 ヤミ金融は、それ以前からもありましたが、この時期に爆発的に増え出した時期にあたります(都知事登録で番号が1なので、「トイチ」とも呼ばれていましたが、利息は10日で1割でありません。もっともっと高金利です。)。
 当時も同じように出資法の上限金利の引き下げがヤミ金融をはびこらせたという主張がありました。

 しかし、高金利を規制すれば、ヤミ金融がはびこる、だから金利規制を緩めよ、という主張は、明らかな誤りであるばかりか、意図的な業界の宣伝に過ぎません。

 2000年のときのヤミ金融も社会問題になり、しばらくヤミ金融による被害は続きました。
 背景には、警察の動きが全く鈍かったことにあります。警察は、民事の問題だというようにほとんど動かなかったのです。ヤミ金融は、出資法に違反する立派な犯罪行為であり、民事の問題ではありません。
 その中で、トイチ(都一)業者が減少していきます。東京都の対応によるものと、名義を届けなければならないために足がつきやすかったためです。
 その後は、無登録の携帯ヤミ金融(090ヤミ金)が増加します。
 しかし、2005年頃には、警察の取締も本腰が入るようになりました。
 最近では、全くではありませんが、ヤミ金融に関する相談は急激に減少しています。
(それに代わって出てきたのが、クレジット換金業者です。)
 要は、ヤミ金融の問題は、犯罪行為であり、本来、取り締まらなければならない対象であるにもかかわらず、それらを持ち出して、サラ金の高金利を認めよ、というのは本末転倒なのです
 次に、実態面からみても、金利規制の緩和は不当だということです。
 ヤミ金融から借り入れをしていた層というのは、いわゆるブラックとされている人たちです。破産したり、借りたものが延滞しているなどで、信用情報に事故情報(ブラック)が掲載されたため、サラ金からは借り入れができなくなっている人です。
 しかも、生活費を理由に借りている人は、まずいません。例えば、米を買うお金が無くヤミ金融から仕方なく借りた、とか、借りたらヤミ金融だったということは、ないということです
 ヤミ金融と知りつつ、また、目先のお金が欲しいが故に借りるというもので、借りてしまう人にも困った人が多いのが現実です。
 借りるにあたっては、親族の名前や連絡先、親族の勤務先ですら教えてしまっているため、本人よりは親族やその勤務先が迷惑を被ることが少なくありません。
 私自身、これまでヤミ金融事件を数百件は対応していますが、借入自体が仕方ないと言えるような案件はありません。
 要は、借りる必要性が全くなかったということです。

 このように見てくると、サラ金では借りられない層がヤミ金融に走るという想定が明らかな誤りであるし、仮に、自民党財務金融部会小委員会の案のような年利30%で借りた場合、返せる見込みは全くない、ということです。
 生活費として借りる必要があるということは、既にその時点で生活が破綻してしまっているということです。
 5万円、10万円で生活をつながなければならないレベルであるならば(それ以上の額であれば生活費の範ちゅうを超えます。)、それを借りれば生活は早晩、破綻します。
 また、サラ金が5万円、10万円を貸し付けることを想定しているとは思えません。
 5万円の利息は年間でも、15,000円です。人件費などの経費にも満たないばかりか貸倒のリスクが高いのですから、併せて、貸出額に対する規制の緩和も求めることになるのです。
 そうなれば、必然的に返しきれなくなるのは当然のことです。
 現在、公的貸付制度もありますが、それだけでは足りず、さらにサラ金による貸付が必要だ、ということが言えなけば、到底、自民党財務金融部会小委員会の案は正当化されることはないのです
 ましてや、5万、10万円で困るというのは、どのような場合を想定しているのか具体的に示す必要がありますが、サラ金業者側から、そのような具体的事例を示されたことはありません
 むしろ、そのような場合は、大抵は生活保護対象になってしまい、生活保護を受給できれば問題ないということになります。
 しかも、サラ金が利益を得るためには、一定の回収が前提となりますが、この不況下において、サラ金は、どのような回収方法を考えているのでしょうか。この回収方法こそが、今後、サラ金が利潤を得るための欠かせない不可欠の前提となりますが、取立規制が厳しい現状では、いずれにしても困難でしょう。それでも敢えて、このような規制緩和を求めているのは、取立についての規制緩和ももくろんでいるとしか思えません。自民党財務金融部会小委員会の案ではカウンセリング」とありますが、それも実は取立手段の1つであることを考えると、これだけにとどまるとは思えません
 貸金業の「改正」は有害なだけですから、このような業界の巻き返しには、断固として反対しましょう。

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