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ノルマ廃止では解決しない「かんぽ不正契約問題」と日本郵政の深い闇

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郵便局のかんぽ生命保険商品販売を巡り、保険料二重払いをはじめ多くの不適切事案が発見された問題が底なしの広がりを見せています。

発端は、かんぽ生命の不正販売発覚に対して6月19日に総務省が営業活動に関する行政指導をおこなったことでしたが、それを受けたかんぽ生命による不正件数公表が五月雨式に増えたことで、単なる不祥事ではなく郵便局を巡る郵政三事業のガバナンスという観点での議論に広がっているのです。

約18万件に及ぶ不正契約は「起こるべくして起きた」

共同通信社

かんぽ生命の公表は当初、6月24日の「新商品発売を受け乗り換え契約が急増した昨年11月に、顧客不利益が疑われる契約件数が5800件あった」というものでした。ところが直後の27日には、「過去5年間で23,900件の不正が疑われる契約がある」という膨大な数字にかさ上げされ、さらに7月8日には「28年度以降の保険料二重払い件数だけで、22,000件ある」という新たな事実が判明します。

そして10日に「解約から新規契約まで無保険となっていたものを含め93,000件」と公表。30日にはさらにその数が倍の18万件にのぼっていたことが判明するに至り、あまりに杜撰な販売実態に日本郵政に対する世論の批判が急激に高まったわけです。

世論の批判は「行き過ぎたノルマ体制が生んだ不祥事」という論調が主流で、郵政側もそれを受けて「かんぽ保険のノルマ廃止」を公表。さらにはカタログ商品等物販のノルマも廃止するという方針を打ち出すことで、問題の矛先をかわそうという姿勢に出ています。

しかしながら、1990年代後半に全国銀行協会(全銀協)の立場で「郵政&財政投融資改革」を担当し郵政の内情に精通していた私の立場からすれば、この不祥事は起こるべくして起きたものであり、問題の本質は単なるノルマの是非にとどまらず、もっと深いところにあると考えています。

金融マン経験の乏しい郵便局長が金融商品を販売するリスク

一番大きな問題は、旧全国特定郵便局長会(民営化後の2008年に全国郵便局長会と名称変更。以下ここでは、特定郵便局長会と呼ぶ)というある種の政治的既得権団体を残したまま民営化の道を進んでしまった、ということにあると考えます。この問題を分かりやすく解説するため、まず民営化が抱える問題点から説明しましょう。

郵政は民営化以前から郵便、貯金、かんぽの三事業からなっており、2007年の民営化に際しては持株会社である日本郵政の下に日本郵便(郵便事業および郵便局運営)、ゆうちょ銀行、かんぽ生命をぶら下げる形で移行しました。現状は、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の商品を日本郵便が運営する郵便局が販売委託する形で、保険はじめ金融商品が取り扱われています。

そして、民営化郵政の実情はといえば後に明らかになったことは、国営時代同様のユニバーサルサービスの提供を原則とした郵便事業が電子メール等IT化の進展や宅配便の競争激化によって慢性的な赤字体質にあり、その赤字をゆうちょ、かんぽの金融事業が埋め合わせているという状況なのです構図でした。

すなわち、今回問題視されている民営化郵政における現場へのノルマ達成指示は、郵便事業の赤字を金融事業で埋め合わせをするために不可欠な組織運営策なのです。ちなみに、今回ノルマを外すとしたかんぽ、物販以外にも、ゆうちょ銀行からの委託業務である投資信託等の金融商品販売などにでも当然ノルマは課されています。

そしてさらに重要なことは、具体的なノルマは日本郵政本社から各郵便局長宛に出され、現場では各郵便局長指導の下で職員がノルマ遂行に走らされていた、という構図になっているということです。

問題なのは、その各郵便局の長である郵便局長です。その大半を占める特定郵便局長の多くは民営化以前、局舎の土地所有者でかつ世襲によりその地位を代々引き継いだ人たち(旧称:特定郵便局長)でした。

この世襲局長はほとんど無条件で局長に就任し、よほどの不祥事を起こさない限り定年までその地位は保証され転勤もありません。いわゆる既得権益の権化のような存在なのです。

民営化後はさすがに無条件での世襲局長採用は激減し、後継難もあって転勤ありのサラリーマン局長も徐々に増えているとのことですが、民営化からまだ12年という現状ではまだそれも少数派。現在も旧特定局長の主流派は、国営化時代から生き延びている残党世襲局長ということになるのです。

国営化という親方日の丸下で既得権益に守られ長年ぬるま湯経営を享受してきた彼らが、いまだ多くの旧特定局の責任者として現場を指揮する現状。そもそも実質入社試験もなくフリーパスで採用され金融マンとしての教育などろくに受けたこともない世襲郵便局長に、金融商品の推進責任者、販売責任者などを任せていいものなのか。

22年間銀行に勤務し現場指導をしてきた私の常識からは、そのこと自体がリスクの塊でしかないと断言できるのです。

局長会が持つ異常なまでの政治的影響力

その上、転勤のない責任者が金融商品を販売することは、利用者の立場からは善よりも悪の方が圧倒的に大きいです。顧客との関係が必要以上に親密化し、癒着とまでいかずとも馴れ合いや甘えを生むことは確実です。その構図は当然職員にも伝染し、顧客との間に生じた甘えが多くの問題契約を生み出した。今回の不祥事はそのような構図で生まれたものであると、私は確信しています。

「お堅い銀行さんと違って、下駄履きで来られる気軽さが郵便局のウリなのです」。全銀協時代に取材に応じてくれた旧特定郵便局長の言葉は、民営化郵政ではアダになったと言えるのではないでしょうか。

ではなぜ、およそ金融マンとはかけ離れたリスクの根源である世襲特定局長たちを、いつまでも現場管理者として雇っておくのでしょうか。民営化段階でやめさせることができなかったのか。それは、特定局長たちが組織している任意団体である特定郵便局長会が、政治的力にものをいわせて厳然たる力を持ち続け既得権保持をはかっているからなのです。

その力の根源は、特定郵便局長会の政権政党集票マシンとしての行動です。自民党政権下の力の大きさは言わずもがなですが、自民党主導の郵政民営化に反対姿勢だった民主党政権下でも、連立相手の国民新党を支持し2017年完全民営化という既定路線を排し民営化を骨抜きにしたことからも、その異常なまでの政治力の強さが分かろうものです。

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