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【映画評】『二ノ国』は本当に“クソ映画”なのか


 公開早々に「『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』より酷い!」というなかなか強烈な評が出回ってしまったが、公開前にムビチケを買ってしまっていたので、仕方なく観に行って来た。

 以下、あくまでもゲーム版未経験のぼくによる感想。

 ヒロインの永野芽郁の声がとにかく浮いている。ただし、これは永野さんだけのせいとは思えない。永野さんの芝居の魅力は、ある意味つっけんどんと言えるあの身体性をともなった発声だ。それを生身の身体から剥がして、ほぼそのままアニメ絵に当てているのだから、浮きまくるに決まっている。結果、「アニメの背景で永野芽郁の声が聞こえていた」だけとなった。これはキャスティングしたスタッフ側の責任でもある。

 ただ、永野さんの件を抜きにしても、アニメとしてのスペクタクル、視覚的な快楽がないので2時間ずっと退屈である。『プロメア』のあの独特の省略表現、色彩の何度も観たくなる中毒性がなければ、『この世界の片隅に』のような優しい絵柄で残酷な現実を描き出すギャップの衝撃があるわけでない。ただただ平凡だ。

 本作の主な舞台は現代(=一ノ国)と、そして二ノ国というもう1つのファンタジー世界だ。何より痛いのはこの映画を観ていて一瞬たりとも「二ノ国に行ってみたい!」と思えないところだ。

 そう思えないのは、単にぼくが老成してしまったからだろうか? いやいや、そんなことはない。今でも『となりのトトロ』を観れば、サツキ&メイと一緒にあの昭和の世界でトトロを探してみたくなるものだ。ファンタジーでもなんでもない、ほんとは退屈なはずの昭和なのに。

 そうした「行ってみたい!」の魅力がこの映画の二ノ国には全くない。

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 キャラクターデザインも、変なくせがない分、余計にとっつきにくい。表情の乏しいキャラクターたちを見ていたら、どこか既視感を覚えたが、あれだ。学校で見る道徳の教材のアニメや、某新興宗教団体が関与しているアニメ映画のそれである。その手のアニメはだいたい後半から思想が強くなっていき、コクが出てくるのがある意味楽しみの1つだが、本作にはそれもないから余計に辛い。本作に足りないものは明確。宗教もしくは思想である。

 結論を言えば、あまり観るべきところのない、つまらない映画である。かといって、酷い方向に突出もしていない。このぐらいの出来の映画なんて無数にあるだろう。ひどく凡庸な一作だった。

 この映画を「クソ・オブ・クソ」「人類に対する挑戦」とばかりに罵る風潮には疑問が残る。観ないでクソクソ騒いで面白がっているのは論外だが、観た上でそこまで言うのもちょっと違和感がある。

 別にそれは「作った人がいるのだからバカしてはダメ」というナイーブなことが言いたいわけでも、「俺はもっと酷い映画を観ているぜ」とマウンティングがとりたいわけでもない。どこの誰がそんなマウンティングとりたがるのだ。

 何もかもをクソ映画に認定していたら、ガチのクソ映画が襲いかかってきたときに、きちんと面白がれなくなると思うのである。神作かクソ作か。その幼稚な2択ではなく、そのあいだのグラデーションを注意深く吟味していく。その先でこそいつか、目も眩むような神作と、何もかもを飲み込むブラックホールのような漆黒のクソ作に出会えると思うのだが、どうだろう。

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