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「大勝負の前、眠れないとき」にぐっすり眠る法

ベッドで“勝負プレゼン”を何度も反芻するうち、いつの間にか目がパッチリ。そんな決戦前夜におすすめしたい習慣、NGの習慣とは――。「プレジデント」(2019年9月13日号)の特集「ぐっすり眠れる! 脳科学」より、記事の一部をお届けします。

焼き肉やとんかつを食べるべきか

遠足の前夜に眠れなくなる子どもっていますよね。「ワクワク、ドキドキする緊張感」「朝、起きなければというプレッシャー」「万全を期した過剰な準備」が、その理由だと思いますが、プレゼンのような大きな勝負イベントの前夜もそれと似ています。


PIXTA=写真
※写真はイメージです


だからつい、いつもと違うことをしがちです。実は「いつもより2時間早めに寝る」「パワーをつけるために焼き肉やとんかつを食べる」「景気づけに寝る前にお酒を飲む」なども、翌日に悪影響を及ぼす要因になります。30~40代になれば、代謝や消化機能が落ちるので、若い頃と同じではないことを自覚すべきです。

就寝前のアルコールは、入眠こそスムーズですが、眠りが浅くなりますし、アルコールへの耐性ができて次第に量が増えます。利尿作用によって夜中に目が覚めるので、深い眠りを妨げることにもなります。スタミナをつけるための脂っこい食べ物は、胃に負担をかけるので控えたほうがいいでしょう。意外かもしれませんが、早めの就寝も「早く眠らなければ」という意識で目が冴えて、眠れなくなる原因になります。

頭をスッキリさせるためにジョギングをと考える人がいるかもしれませんが、就寝2~3時間前に交感神経を活発にすると、気持ちが高ぶって眠れなくなります。就寝前の軽いストレッチは有効ですが、普段やっていないなら、頑張りすぎて首の筋や肩を痛めてしまうきっかけにもなりかねません。ですから基本的に「普段やっていないことはやらない」というのが鉄則なのです。

寝室では、就寝とセックス以外はNG

ついやってしまいがちなのが、寝室にプレゼン資料を持ち込んだり、PDFで予行練習する行為で、これも目が冴える要因になります。スマホはブルーライト自体が目に悪いですが、それよりコンテンツに集中してしまうのがよくない。ネットは関連情報をつい深追いしてしまうので、調べ始めたらキリがありません。リンクを追い続けているうちに、脳が覚醒していきます。

基本的に寝室では寝る行為とセックス以外はやっちゃダメです。もし資料を読みたいならリビングで読み、眠くなれば資料を置いて寝室に移動するぐらいの切り替えが必要です。スマホは、横になりながら見てしまわないよう枕元や手元には置かず、少し離れた場所に置くよう心がけたほうがいいでしょう。

では大事なプレゼン前日に「どうすれば緊張せずに眠れるか」です。私はその問いには「2日前の睡眠を削ってください」とアドバイスします。つまり意図的に睡眠不足を起こすわけです。前々日の“睡眠負債”があれば、前日はスッと眠りに落ちることができます。

また、就寝を一日のゴールではなく、一日のスタートと意識すれば「翌日のパフォーマンスを最高にするために寝よう」と前向きに考えられます。睡眠を“今日頑張ったご褒美”ではなく“明日への投資”とイメージするわけです。


PIXTA=写真

通勤電車でのうたた寝が至福のときだというビジネスマンは多いですよね。ただ、中途半端な睡眠の先取りはやめましょう。睡眠は足し算ではなく、集合体で考えます。昼1時間、夕方1時間、夜6時間で合計8時間寝るのと、夜に8時間まとめて寝るのとでは、後者のほうが明らかに質が高い。実は、質のよい睡眠が取れるのは、その日最初に来る眠気からなので、よい眠りを電車内などで先取りしてしまうと、夜の睡眠が浅くなってしまうのです。前菜でお腹が膨らむとメインが美味しくなくなるフランス料理と似ています。昼寝は20分が限度だと考えてください。

「何時間寝れば十分なのか」は、人によって異なります。プレゼンに向けてパフォーマンスを発揮するのを目的とするなら、基本は普段より短い睡眠時間にならないようにすべきです。逆に、過度に長時間の睡眠もよくありません。例えば普段6時間寝ているのに、その日だけ9時間寝るというのは寝過ぎです。普段より大きく減らさない、増やさないというのを目安に考えてください。

夏場だとシャワーだけですます人もいるかもしれませんが、できれば39度ぐらいのぬるめのお湯に10分以上浸かって体を温め、眠気を誘導してください。エアコンは除湿モードで27度ぐらいに設定し、深夜2、3時に切れるようにしておくと快適に眠れます。体に風を直接当てないよう扇風機やサーキュレーターを併用してもいいでしょう。

夫婦別々で寝るには工夫が必要

プレゼン前はゆっくりしたいから夫婦別々で寝る、という場合は、普段から工夫が必要です。妻の寝相が悪い、鼾や歯ぎしりがうるさいのであれば、プレゼン前に言うのではなく、日頃から話し合って「別々に寝る日を設ける」とよいでしょう。いきなり別々に寝ると宣言すれば、思わぬ波風や誤解が生じることがありますから。やはり「普段やっていないことはやらない」ことです。

私がおすすめしているのは、寝る前の“入眠儀式”です。スポーツ選手のルーティン(決まりの所作)と同様ですが、あまり複雑でなく、簡単でゆるい感じのものがいいです。私は毎晩、白湯を飲んで戸締まりを確認することで「さあ寝るぞ」という気持ちになります。

意外に多いのが「起きられない」という悩みです。目覚まし時計の効果を上げるには、スマホや時計をすぐに消せないよう、遠くに置くなど「置き場所」に工夫を凝らすことです。鏡の前なんかはいいですね。人間は自身の姿を見ると脳が活性します。その際、併せて朝起きたてに太陽の光を浴びて、体を目覚めさせてください。

前夜の過ごし方に限らず、睡眠で悩む人は「0か100か」という極端な思考に陥りがち。真面目な人が多いんです。睡眠を「べき論」で考えず、時には「眠れなくなる日もあるさ」くらいの気持ちになれば、楽になれると思います。

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裵 英洙(はい・えいしゅ)
ハイズCEO
医師・医学博士。金沢大学医学部卒業、金沢大学大学院医学研究科修了。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。臨床業務と医療機関の経営支援に注力。

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(ハイズCEO 裵 英洙 構成=篠原克周 撮影=初沢亜利)

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