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大量殺人犯の心に巣食う10の特性――テロリストと一般人は何が違うか 1

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・大量殺人犯の人格や心理には特有の特徴があるという研究は、対テロ戦争のもと欧米諸国で活発に行われてきた

・こうしたミクロの条件は、貧困や孤立といったマクロの条件と噛み合うことで、テロの要因になると考えられる

・多くの研究で取り上げられる10の特徴のうち、以下ではまず、反社会的人格、ナルシズム、抑圧からの独立心、パラノイア、終末思想を取り上げる

 自爆テロや銃の乱射は世界各地で絶えないが、なぜテロリストは平気で多くの人を殺傷できるのか。

 テロなどの政治的な暴力について、筆者を含めて社会科学に携わる者は、貧困、孤立、抑圧など政治や社会のマクロな視点から考えるのが一般的だ。しかし、こうした社会状況に直面する者が全て、暴力に訴えるわけではない。また、過激思想を抱く者が常に大量殺人に走るわけでもない。

 つまり、大量殺人には個人的な特性というミクロの要因もあることになる。

 こうしたミクロの見方は主に心理学や精神分析学の領域になるが、マクロの見方と衝突するものではなく、補完しあう関係にあると考えられる。同じような社会状況でも個人差があるのと同じく、個人の人格形成には社会からの影響も大きいからだ

 そこで、ミクロなアプローチによる主な論考を読み漁ったところ、それらが非常に興味深い内容だったため、筆者の専門からは外れているがその要旨をメモがわりにまとめたものをこの場で投稿することをお許しいただきたい。

 以下では多くのテロリストの心にみられる特徴を10に絞って紹介していく。

(1)良心を欠いた反社会性

 最近のアメリカでは銃の乱射などが発生すると、犯人はまずサイコパシーかが疑われる。サイコパシーは反社会的な人格の一種で、日本語では精神病質と呼ばれ、他人に冷淡、自己中心的、自己の行動に無責任、平気でウソがつけるなどの特徴をもつ。

 サイコパシーは遺伝による影響が大きいといわれ、ほぼ同じ症状で後天的なものはソシオパシー、社会病質と呼ばれる。

 2017年10月、ネバダ州ラスベガスで58人を射殺(単独犯としてはアメリカ史上最悪)したスティーブン・パドックは富裕なギャンブラーで、メンタルクリニックで受診歴があったが、事件後に自殺したため、FBIは単一の明確な動機を見出せなかった。しかし、パドックの父親(故人)は生前、銀行強盗などを繰り返し、一時はアメリカ政府から10大指名手配犯の一人に指定された人物で、サイコパシーと診断されていた。そのため、パドックにもサイコパシーの疑いは濃い。

【参考記事】ラスベガス銃乱射事件からトランプ政権の銃規制を考える:「実際の大量破壊兵器」の拡散は防げるか

 とはいえ、サイコパシーの持ち主はごく少なく、全てのテロリストに該当するとはいえない。

 そのうえ、テロリストが「反社会的」とは限らない。テロリストには自分の所属する集団の目標や規範に従って行動する者も多いからだ。実際、イスラーム過激派による自爆テロや白人至上主義者による銃撃は、一部の人々から賞賛される。

 つまり、多くの人からみて「反社会的」な行為でも、自分の周りの狭い社会の価値観に適応することはあり得る。だとすると、全てのテロを、ただ「異常者の所業」で片付けることはできない。

(2)弱さを隠した万能感

 むしろ、多くのテロリストに観察される傾向として、自分を特別な人間と思い、他者を軽蔑する万能感や誇大感、つまりナルシズムがある。

 ナルシズムは国際テロ組織アルカイダを創設したオサマ・ビン・ラディンから、2011年7月にノルウェーで77人を射殺(単独犯としては世界最悪)した白人至上主義者アンネシュ・ブレイビクに至るまで、イデオロギーを超えて多くのテロリストに指摘されている。

【参考記事】静かに広がる「右翼テロ」の脅威―イスラーム過激派と何が違うか

 このうち、ブレイビクに関しては、逮捕後に警察で通常の写真を撮られるのを拒否し、事前に写真館でこだわり抜いて撮影していたポートレートを使うように要望したことがその象徴だ。普通の人にはできない大量殺人の実行は、ナルシストにとってこれ以上ない自己顕示かもしれない

 ただし、一般的にナルシズムの根底には「弱い自分」への不安が隠れている。虐待やいじめなど幼少期の経験から対人関係に不安感が強いと、それを相殺するために過剰に自分に自信を持ちやすいといわれる。ブレイビクの場合、4歳頃から母親に性的な事柄を教えられた一方、「死ねばいいのに」といった暴言や、暴行を受けていたという。

 ところが、こうした不安を相殺するための自信は極めてもろいので、些細なことで崩れやすく、その場合には手に負えない激情の高まり、いわゆる自己愛憤怒を呼び、他者への攻撃の引き金になることもある。

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