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ベンチャー企業の地政学:ニューヨーク編

今日の横浜北部は、午後三時くらいに雲行きが突然怪しくなって雨が降った以外はけっこう晴れてさわやかな一日。

さて、またまたインターネットに関する「地理」について面白い記事がありましたのでその要約を。

何度も言いますが、私がこのような記事を気にしてしまうのは、地政学や戦略に大きな影響を持つ、「テクノロジーと人間社会」についてひとつの教訓を示しているような気がするからです。

===

ニューヨークに引き寄せられるITベンチャー企業

●インブルース氏が2009年にQwikiという相互ビデオ通信会社を立ち上げようとした時、彼はニューヨークで投資家を募ることができなかった。

●そのため、彼は仕方なくシリコンバレーに移った。

●ところが今年の2月に、彼は会社ごとニューヨークのSOHO地区に戻ってきた。そしてその目的は、設立当初に描いていた夢を実現するためであった。

●最近のニューヨークにおけるネット業界の動きは活発だ。インブルース氏のように数年前は起業するにも選択肢が限られており、西のシリコンバレーに移ってしまった人々が、最近は選択肢が増えたために戻ってきているのだ。

●この変化の要因は、テクノロジー業界の業務の質が、ネットの基礎的な枠組みを構築するような技術的ものから、消費生産物やアプリを作るようなものへと変化してきたという点にある。

●多くの起業家たちは、ニューヨークの強みであるメディアや広告会社やファッション業界への地理的な近さ(proximity)から利益を得ているのだ。

●そして彼らによれば、ニューヨークのネット業界が活発になるにつれて、シリコンバレーにいるときと同じくらいの便利さが出てきている、というのだ。

●もちろんニューヨークが「テクノロジーの中心部」としての地位を、サンフランシスコ郊外のシリコンバレーから奪うという考えは疑わしい。

●たとえばシリコンバレーに本社を置きつつも、ニューヨークなどに支社をもつ人物によれば、シリコンバレー以外の地域で立ち上げをするというのは資金調達の面から見て不利であるということになる。

●ところがこの状況も変わりつつある。たとえばニューヨークで2007年から2011年までにベンチャーキャピタルの支援を受けて起業したのは500社であり、2007年からこの数は32%もアップしているのだ。

●しかもシリコンバレーを含むニューヨーク以外の地域では、この起業の数は減少傾向にあるのだ。

●前述したインブルース氏はたしかにニューヨークで資金を調達できなかったためにシリコンバレーに移ったのであり、その後に起業資金を得ることができたのは正解だったが、彼はやはりニューヨークに帰ってきた。

●その理由は、大手メディアがここに集まっているからだ

●たとえばニューヨークに戻ってきた直後から、彼は大手のテレビネットワークであるABCと交渉をはじめ、相互提携することで合意している。

●このような点でニューヨークは有利なのだが、逆に弱点は人材にある。

●シリコンバレーにはスタンフォード大やネット関連企業が集中している土地であるために、若くて優秀な人材は豊富なのだが、ニューヨークをはじめとする東海岸では、若い才能は全員が金融関係に流れていってしまうのだ。

●そして彼らはかなりの高給を要求するため、起業したばかりのベンチャー企業にとって雇うのは困難なのだ。

●ハリス氏は自分の会社TutorSpreeを去年シリコンバレーからニューヨークに移したのだが、やはり現地で優秀なエンジニアやプログラマーを雇えるかどうか心配であった。

●しかしこれは杞憂に終わった。なぜなら彼は、ニューヨーク以外で人材を募集し、雇った彼らに対してニューヨークに引っ越すように説得したからだ。

●金融危機も、人材確保という意味では、ニューヨークのテクノロジー系ベンチャー企業にとって有利になった。金融系から優秀な人材が流れてきたからだ。

●ところがハリス氏はこのトレンドも長続きしないと見ている。なぜならテクノロジー系の景気が一段落すれば、また人材が金融系のほうに流れる可能性もあるからだ。

●シリコンバレーには、起業家たちにとって、環境面で非常に有利な点がある。

●それは、周囲の不動産や金融関係者が、起業家とのつきあい方に慣れているという点だ。しかしニューヨークにはその環境がまだない。

●たとえばある女性起業家がファッション系のサイトを立ち上げたとき、ニューヨークでテナントを探していたとき、地元の不動産屋では「過去五年の業務実績を見せてくれ」と言われたのだが、彼女が起業したのは去年の7月なのだ。

●もちろんニューヨークには有利な点がある。それは、全てが地理的にコンパクトにまとまっていることであり、テクノロジー面での競争もまだそれほど激しくないという点だ。

●シリコンバレーでは世界のテクノロジーの最先端にいるという感覚が味わえるのは良いのかもしれない。しかし逆にニューヨークではオフィスを出れば、すぐそばにCNNのビルがあったりするわけで、謙虚にならざるを得ないという。

●シリコンバレーから来た人々の中では、ニューヨークの喧噪に慣れないエンジニアたちもいるという。ある起業家は、最終的には忙しいニューヨークよりも、ゆったりと落ち着いたシリコンバレーに戻るつもりだと言っている。

●「ニューヨークは好きじゃないですね。でもビジネスには最高の場所なんですよ、ホントに

===

「軍事における革命」(RMA)関連の文献や「サイバー戦」に関するものでもたまに見かけますが、テクノロジーによって地理が消滅したという、いわゆる「テクノロジー楽観論」には、ちょっと注意しなければなりません。

とくにビジネスの場合は資金調達や人的交流の面でどうしても土地に縛られてくる面があるというのは、上の記述でも明らか。

前にここに載せたエントリーでもありましたが、結局のところは人材が集まって交流しているか、そして資金調達というロジスティクス系の問題が実は決定的なのかなと。

それと、アメリカのインターネット業界もビジネスの質がメディア系や消費者向けのものに大幅に変わってきているからニューヨークに移ってきている、という指摘は重要なのではないでしょうか。

何度も言いますが、テクノロジーによって「変わる点」と「変わらない点」を見極めるのが一番大切なのかもしれません。

クラウゼヴィッツ式の言い方だと、「戦争の文法は変わるが、ロジックは変わらない」ということかと。東洋の言い方だと「易不易」でしょうかね。

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