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文在寅政権の韓国TV支配、干された保守派識者はYouTubeへ

日韓関係が改善する日はいつか(写真/EPA=時事)

集団ストライキに入るKBSとMBC局員たち(写真/Reuters/AFLO)

 韓国にも文在寅政権が突き進む反日姿勢とは一線を画し、冷静な提言を投げかける識者は一定数いる。だが、韓国内で彼らの主張が知られることはほぼない。

【写真】集団ストライキに入るKBSとMBC局員たち

 そこには、韓国メディアの深刻な問題があると指摘するのが、近著『韓国「反日フェイク」の病理学』がベストセラーになっている日本在住の韓国人ジャーナリスト、崔碩栄(チェ・スギョン)氏だ。

 * * *
 最近の韓国マスコミ、とくにテレビからは政権批判の声がまったく聞かれなくなりました。

 コメンテーターは文大統領の政策をただ持ち上げ、アナウンサーもそれに相槌を打つだけ。とりわけ大きな影響力を持つKBSとMBCという2つの公営放送では、文大統領の「反日親北」思想が垂れ流され、それが過激な反日思想や今回の不買運動にまでにつながっています。

 全ての原因は、権力とテレビ局の歪んだ関係にあると私は考えています。李明博、朴槿恵と9年間にわたった保守政権の間、テレビ局の労組は反政府闘争を繰り広げてきました。

 李大統領就任直後の2008年5月、BSE(牛海綿状脳症)感染の疑いがある米国産牛肉の輸入反対デモが起こりました。ピーク時にはソウル市内で70万人が集まった大規模なもので、次第に李政権退陣を求めるデモへと発展していきました。

 デモのきっかけは、MBCの看板報道番組『PD手帳』が、BSEに感染した牛肉の輸入問題をリポートしたことです。

 李政権はこのことを問題視し、翌年、番組制作に関わっていたプロデューサーやディレクターなど6人を、農林水産食品部長官への名誉毀損の疑いで逮捕し、「調査報道チームの解散」「反発する者への解雇を含む懲罰」など厳しい措置を取りました。

 こうした政権によるテレビ局への介入は、朴槿恵政権時代も続き、李・朴政権の9年間で、MBCでは10人が解雇され、200人以上が懲罰を受けて窓際に追いやられています。

 ところが、朴槿恵が退陣し、2017年5月に文在寅政権が誕生すると、状況が一変しました。

 MBCの新社長には、過去にストライキの先導者と見なされて解雇された同局プロデューサーが就任。ストライキに参加していた局員たちが幹部に抜擢され、参加しなかった前政権寄りの局員たちが、逆に窓際に追いやられたのです。

 なぜこんなことが起きたのか。そこには韓国の公共放送の歪な仕組みが存在します。MBC、KBSともに、局の運営には「放送通信委員会」という大統領直属の組織が介入しており、委員会メンバーの過半数はその時々の政権が任命する。そして、その委員会が社長人事を決定するのです。

 実質的に大統領がKBSとMBCのトップの人事権を握っているわけです。

 前政権時代、テレビ局の過激な反政府闘争を見てきた文大統領は、公営放送の人事を徹底的に政権寄りにした。保守政権時代にストライキを重ね、局内で冷遇されてきた人物をトップに登用したのです。

 一方であからさまに冷遇されているのが、ストライキに参加しなかった局員たちです。看板番組のアナウンサーや記者が、電話もインターネットもない倉庫に机だけ置かれて、そこで仕事も与えられずに待機させられている。そんな実態を元MBC局員がSNSで写真付きで公開し、大きな問題になりました。

◆干された識者はYouTubeへ

 文政権の誕生以降、それまでテレビに出ていた保守系の大学教授や経済学者、コメンテーター、アナウンサーたちはことごとく出番を奪われました。

 朴政権寄りだったMBCの女性アナウンサー、ペ・ヒョンジンさんは、政界転身して野党の自由韓国党に入党し、文政権批判に力を入れていますが、彼女のように再び表舞台に立てる人ばかりではない。

 テレビから消えた人たちが今どうしているのかといえば、多くは動画サイト『YouTube』に主戦場を移しています。

 現在、韓国のYouTubeでは保守派(反文政権)が優勢です。ユーチューバーのチャンネル登録数上位10人のうち、6~7割は保守系言論人で、前政権時代によくテレビに出ていた識者が、自分のYouTubeチャンネルで猛列な文政権批判を繰り広げている。

 例えば朴槿恵政権時代にMBCの討論番組に定期的に出演していた韓国経済新聞前主筆のチョン・キュジェ氏は、現在、YouTubeで政権批判に熱を上げ、1回の動画をアップすれば20万回近い再生回数を誇ります。

 公営放送には左派リベラル系の論客ばかりが登場しますが、韓国国内では保守派も30%ほどの支持率があり、さらに中道派は40%にのぼります。

 これらの人たちの声がテレビから完全に抹殺され、YouTubeでしか発信できない状況は異常としかいいようがありません。

 まっとうな民主主義には、異論反論を含めた「多角的な言論」が必要不可欠です。その意味で言えば、文政権は民主主義を後退させているように思えます。

※週刊ポスト2019年8月30日号

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