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《いまだ断行中》「なぜ私は佐野SAストライキを始めたのか」渦中の“解雇部長”が真相を告発 - 「週刊文春」編集部

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 お盆真っ只中の8月14日、例年多くの観光客で賑わう東北道・佐野サービスエリア(上り線)は閑散としていた。理由は従業員が起こした前代未聞のストライキ。その後、運営会社「ケイセイ・フーズ」はストライキについて自社の見解を記した「事情のご説明」を報道各社に送付。社長の岸敏夫氏(61)が会見するなど、大きな話題となった。

【写真】8月14日、加藤氏らが張り出したストライキの張り紙


人影もまばらになってしまったストライキ中の佐野サービスエリア ©文藝春秋

 佐野サービスエリアは佐野ラーメンが名物で、年間利用者数は約170万人。しかしストライキは長期戦の様相を呈し、いまだに本格的な再開には至っていない。16日朝からフードコートと売店に限り、関連会社の従業員や日雇いスタッフを集めて営業を再開したが、佐野ラーメンが提供されるまで食券購入から50分を要したケースもあったという。

「営業再開後に佐野ラーメンを食べましたが、以前よりもスープが薄味になったと感じました。10人程のスタッフが厨房にいましたが、何をしてよいのかわからず、立っているだけの人もいた。夕方にも関わらず、フードコートは閑散としていましたよ」(立ち寄った客)

ストライキの中心人物“解雇部長”への信頼は厚い

 ストライキの端緒となったのは加藤正樹元総務部長(45)の不当解雇だ。加藤氏がケイセイ・フーズに入社したのは昨年5月。元々は大手総合商社で働いていたが、東日本大震災をきっかけに故郷である宮城に戻り復興活動に従事していた。そんな折、ケイセイ・フーズで働く知人から誘われ、同社に入社したのだ。「加藤さんは入社して間もないが、従業員の信頼は厚い」と語るのは加藤氏と共闘する同社支配人A氏だ。

「加藤さんは着任早々、様々な取り組みをしてきました。例えば北関東限定販売の、葵の家紋がデザインされたコカ・コーラの“徳川ボトル”。以前は冷蔵庫で冷やして売っていたのですが、加藤さんがお土産にちょうどいいからと、大きな売り場を作って、箱単位でも売り出したんです。それが当たり、地域限定ボトルの売り上げで佐野サービスエリアが全国1位を獲った。メーカーさんも驚いていました」(A氏)

 加藤氏はほかにもメディアを活用するなど、サービスエリアのイメージアップに貢献した。しかし一方でケイセイ・フーズの親会社である片柳建設の経営は悪化の一途を辿っていた。

「2019年6月20日に、片柳建設のメインバンクが新規融資凍結処分を下したのです。しばらくはバレなかったのですが、7月20日に行われた労使交渉で、経営陣が融資凍結と返済滞納を認めたことから、その場にいた従業員20名超が知ることとなりました。払うアテもないのに納品を頼むことは心苦しく、従業員の動揺はすぐに取引先に伝わりました」(加藤氏)

会社側のウソを明らかにする音声データ

 ストライキを受けてケイセイ・フーズが報道各社に送付した文書「事情のご説明」には、「新規融資凍結処分」を受けたとの事実はないと記載されている。しかし労使交渉を録音した音声データには、このようなやりとりが記録されている。

《支払いなんですが、本当に言いづらいんですけど、ああいう情報が出ている状況で……》(加藤氏)

《どういう情報が出てるんだ! なんだ情報っていうのは》(岸社長)

《〇〇銀行から融資が止まっていると》(加藤氏)

《〇〇新規融資が止まっているという話ですよね》(監査役Y氏)

《はい》(加藤氏)

《それは事実なので、ただ今、それを正常化するように努力している。私のほうにも〇〇銀行から依頼ありましたので》(監査役Y氏)

《ですよね。私は非常に近しい人(取引業者)に現金で払ってあげられないと、それなら早く手配してもらった上で……》(加藤氏)

《それは(エアコンの)設置が終わってからでいいですか》(岸社長)

 そして2019年7月、ついに佐野サービスエリアが異常事態に陥る。

「売店のバックヤードから商品がどんどんなくなっていったのです。8月初旬には、バックヤードからほとんどの商品が消えてしまっていました。しかもそんな危機的な状況下で、岸社長の子飼いだった当時の総支配人T氏による経費の個人的支出が露見したのです。T氏は会社の経費で700万円以上する高級車や、100万円相当の家電製品などに不適切な支出をしていたことが発覚しました。特に車は社長が『オレの側近が安い車に乗っていると恥ずかしい。高級車ならいいな』と言い出したから買い換えたというのです。従業員たちの不安怒りに変わりました」(加藤氏)

従業員の給料が支払われない最悪の事態へ

「商品が搬入されないとなると、売り上げがたたない。このままでは従業員の給料が支払われないような事態にまで発展してしまう恐れがありました。そこで岸社長に対し、新たな事業計画を練って銀行から新規融資を取り付けてほしいと直談判したのです」(同前)

 加藤氏は“覚書”を作成。従前、ケイセイ・フーズの取引業者への商品代金支払いは翌々月だったが、この緊急事態に、加藤氏は商品の代金を前倒しで支払うことと、従業員へ3カ月後までの給与の支払いを確約することを記し、岸社長にサインを迫ったのだ。

「8月5日には社長も渋々サインをし、安心した業者から商品が再び納入され始めました。従業員もこれで今まで通りお客様に商品を販売できそうだと、胸を撫で下ろしました」(同前)

 しかし、8月9日、岸社長から「資金繰りが苦しいので、取引先に覚書の条件を緩めてもらってこい」と申し入れがあったのだ。

「会社の事情はわかります。しかし取引業者の皆さんにも従業員にも家族がいるんです。来月の収入がないかもしれないという不安のなかで働かせるわけにはいかない。8月13日、社長に『お盆中は繁忙期なので、交渉は無理です』と訴えました。すると社長は『(破るのは)お盆明けの20日でいいな』と、撤回について譲りませんでした」(同前)

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