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京アニ事件を「世界中が悲しんだ」本質的な理由

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どうしようもない現実だからこそ、アニメが必要だ

アニメ映画『天気の子』を観た。大ヒット作『君の名は。』に続く新海誠監督の作品として注目を浴びている映画だ。アニメでしか表現できない美しい虚構の世界が、どす黒い現実に染まりきった僕の心をきれいに洗い流してくれた……ような気がする。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yevhenii Dubinko

いつもこういうビジネス系のサイトや雑誌の記事では、「私」を主語に「ですます調」で書くことが多い。でも、今日は「僕」を主語に「である調」で書きたいと思う。その方がアニメを語るのに向いているからだ。アニメ作品のプロローグによくある独白だと思って読んでもらいたい。

『天気の子』はレイトショーで観た。家に着いた頃にはすでに0時を回っていたと思う。翌朝カーテンを開けて見た空は、いつもと少し違っていた。虚構が僕の現実を変えてしまったのだ。

アニメは現実の世界を変える力を持っている。僕はずっとそう信じてきた。いや、本当に世界を変えてきたのだろう。多くのアニメーターの命を奪ったあの「京都アニメーション放火事件」の直後、世界中から哀悼の意や支援を表明する声が届けられたのはその証拠だ。

このどうしようもない現実の中から、虚構の世界を失いたくない。僕らにはそういう強い思い、熱い気持ちがあるのだろう。アニメはアニメであるからこそ、現実を支える大きな力になっているのだ。

オタクではないからこそ、アニメの力を訴えたい

僕はこれまで何度かアニメを哲学の題材にしてきた。『ジブリアニメで哲学する』(PHP文庫)や『アニメと哲学』(かんき出版)がそれだ。「なぜ哲学者がアニメを?」と、しばしば尋ねられる。ちなみに、僕はいわゆるアニメオタクではない。つまり、特別アニメに詳しいわけではないのだ。

ただ、子どもの頃からいくつかのアニメ作品を観て育ち、今なお話題作があればわざわざ劇場に足を運ぶ。おそらく普通のおじさんよりはちょっと興味がある程度だと思われる。だからこそアニメの力を訴えたいのだ。アニメは決して特別なものではない。また特別な人たちのものでもない。ごく普通に僕らの日常にあるインフラなのだ。冷蔵庫や新聞と同じように。

誰だって冷蔵庫を使うだろう。新聞も読むだろう。そして冷蔵庫や新聞から恩恵を受けているはずだ。冷蔵庫や新聞の専門家でなくったって。アニメをそういう感覚でとらえてほしい。すでにアニメが大好きな人にはこんな話は釈迦に説法だろう。でも、アニメに興味のない人にはぜひそう思ってほしいのだ。だからアニメを題材に哲学している。

なぜ、おそ松さんを題材にしたのか

『アニメと哲学』の中で、あえて誰もが知っているであろう作品ばかりを扱ったのはそうした理由からだ。一部のアニメファンしか知らないマニアックな作品を取り上げても、一般の人にはわからない。韓国ドラマで「冬のソナタ」のチェ・ジウの話をしたら、だいたいの人にはなんとなくわかってもらえる。

ところが、同じ韓国ドラマでも「君の声が聴こえる」のイ・ボヨンの話をしても、ほとんどの人には通じない。韓国ドラマファンなら誰でも知ってるだろうが。「いとしのソヨン」とか最近だと「耳打ち」に主演しているあの美人女優である。

という感じで、アニメを論じるときも、ただのマニアックな話にはしたくなかったのだ。だから僕が扱ったのは、ドラえもんやワンピース、おそ松さんといった定番のアニメばかりだ。いや、『君の名は。』のような新しいアニメも扱っているが、これは社会現象にもなったような作品だから、多くの人たちが観ているはずだろう。

いずれにしても、普通の中高年のおじさんだってなんとなくストーリーがわかるものばかりにしてある。もちろん知らない人が読んでもわかるように、最小限の説明はしているが。

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