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ユニクロにあって無印良品にない決定的な要素

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■「ノーブランド」のブランド化に成功した

ここでも述べられているように、無印良品は、もともと西友のプライベートブランドとして1980年に誕生した。素材のよさと限りなくシンプルであることを追求し、80年代の個性を競うDCブランド全盛時代に、そのアンチテーゼとしての地位を確立していく。

あえて「無印(ノーブランド)」を貫くことで、無印良品はブランドになった。通常のブランドが差異化のために、「個性」を足し算することで成り立つのならば、無印良品は「引き算のブランド」だ。何もかもを引き算することで、逆に差異化に成功したのである。

年代のリアルクローズ、シンプルな服の流行とともに、無印良品もユニクロ同様、ポピュラリティを獲得していく。それは、DCブランドの「個性」やインポートブランドの過剰な「記号」に疲れた人々にとって、印のないことが癒やしとなったためであろう。

無印良品も人々の関心が衣から食住へ、ファッションからライフスタイルへと移り変わるにつれて、取り扱う商品を広げてきた。食品、化粧品、雑貨、家電、家具、家。現在では、買えないものがないほど、ライフスタイル全般にわたってあらゆる商品を取り揃(そろ)えている。

着ることから食べること、住むこと、そして暮らすことへ。無印良品の哲学に基づいた「MUJIなくらし」が展開されており、実際のところ私たちは、朝から晩まで無印良品の製品に囲まれて暮らすことができるのだ。


中国・湖北省武漢市にある無印良品の店内=2013年7月19日 - 写真=Imaginechina/時事通信フォト

■くらしをより訴求するため、カフェもオープン

それだけに、無印良品は早くから、単なる店舗を超えた空間をつくり出すことにも力を注いでいる。2001年に旗艦店としてオープンした有楽町店の一角にカフェスペース「Cafe MUJI」を設置し、「素の食」をテーマに身体によい食材を使ったメニューを提供してきた。2007年には、物販販売のない初の飲食単独店舗である「Cafe&Meal MUJI 日比谷」をオープンしている。

無印良品の「Cafe&Meal MUJI」は、「『素の食』はおいしい」をコンセプトに季節の素材をたっぷりと使い、身体にやさしく食べておいしいメニューを取り揃(そろ)えた飲食業態である。そのコンセプトについて、ウェブサイトにはこう書かれている。

もぎたてのトマトをまる齧(かじ)りしたときの、あのみずみずしい甘みや酸味。Cafe&Meal MUJIが大切にしているのは、たとえばそんな「素の食」のおいしさです。

太陽や土、水の恵みがたっぷりと染み込んだ素材そのものの味を生かし、自然のうま味を引き出すために、できる限りシンプルに調理しています。化学調味料は最小限に抑え、保存料はいっさい使用しません。

日本を中心に世界中の産地に直接足を運び、

生産者の方々と交流しながらそのときいちばんの旬の食材を調達しています。一方では、フェアトレードや環境に配慮した農法を積極的に採用し、

その土地ならではの伝統料理をメニューに取り入れることで

歴史ある食文化を次世代につなげる試みも行いつづけています。

このように、健康や環境に配慮したカフェを通して、無印良品の食を提案し続けている。

■ユニクロが「究極の服」になれた理由

また、無印良品はブックカフェブームに先駆けて「本」にも注目し、本のある空間「MUJI BOOKS」を2015年から展開し始めた。厳選された店舗に、衣類、家具、雑貨、食品などと地続きに無印良品が提案する本が置かれている。そこでは、「知の巨人」松岡正剛監修の下、「くらしのさ(冊、読むことの歴史)し(食)す(素材)せ(生活)そ(装い)」というテーマに沿って、本が分類されているのだ。


米澤泉『おしゃれ嫌い 私たちがユニクロを選ぶ本当の理由』(幻冬舎新書)

「さしすせそ」には、くらしを彩る調味料のようにという意味が込められているのだろう。MUJI BOOKSでは、本と生活用品を一つの空間に同居させることで、「本と暮らす」生活を提案しているのである。

このように、無印良品はあらゆる商品、本までを使って「MUJIなくらし」を提案している。つまり、衣食住のすべてを無印良品の哲学に基づいてブランド化することで、「MUJIなくらし」を売っているのである。

それは、2019年4月にオープンした銀座の旗艦店にある「MUJI HOTEL」に集約できるだろう。「MUJI HOTEL」は「MUJIなくらし」を体験できる場であり、世界中からファンが押し寄せる「MUJIなくらし」の聖地となるに違いない。

だが、ユニクロは違う。ユニクロは「ユニクロなくらし」を売っているのではない。

「ていねいなくらし」を売っているのだ。しかも、「服」によって。

「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」のがユニクロのステートメントである。初めに服ありきなのである。そこが、無印良品との最大の違いであり、ユニクロが究極の服になれたゆえんではないだろうか。

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米澤 泉(よねざわ・いずみ)

甲南女子大学人間科学部文化社会学科教授

1970年京都生まれ。同志社大学文学部卒業。大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程単位取得満期退学。専門は女子学(ファッション文化論、化粧文化論など)。『「くらし」の時代』『「女子」の誕生』『コスメの時代』『私に萌える女たち』など著書多数。

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(甲南女子大学人間科学部文化社会学科教授 米澤 泉)

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